Howdy from Australia
←|目次|→
面接の前の晩、5歳になる姪っ子から「明日テストなんでしょう。ゆ〜み〜、がんばってね。」という激励の電話があった。日本との時差が二時間あるため、電話が鳴ったときすでに床に入っていた私は、暗闇の中受話器を取り、かすれた声で「もう寝てたよ」と言うのがやっと。電話を切った後、姪の言葉にじ〜んときて励まされるどころか、荷物まとめて日本に帰ろっかな…と弱気になってしまった。
準備期間が1週間あったので、その間に自分なりに組織や面接官の出版物などを調べて臨んだ面接だったけれど、質問事項は想像以上に難しかった。
面接の前に15分ほど時間が与えられ、別室でA4用紙一枚分の質問に目を通す。時間になったら面接室に通され、三人の面接官を前に自分の考えを述べる。
「組織にどのように貢献できると思うか」「これまで携わった研究はどのようなものか」といった質問にはまだ何とか答えられるけれど、「医者に健康増進計画の成果を評価する方法を助言しなければならない場合、あなたならどうするか」という質問には頭を抱えてしまい、その場から逃げ去りたい衝動にかられる。
しかし、実際に面接官を前にすると気持ちも落ち着いてきて、そこまで緊張せずに全ての質問に答えることができた。
面接が終った後は達成感を感じるほどで、それほどまでにストレスだったのかなと思う。今となっては、「あの時、こういうことも付け加えておけばよかった」などと色々反省点も出てくるけれど、これはこれでいい経験になったのではないかと思う。もうすでにあきらめの境地!
友達から「夢の仕事に一歩近付いたね」と言われて、いい気分になっていたけれど、実際問題、夢は手の届かないはるか彼方にあるのだということを思い知らされた。
さてと、次はどの仕事に応募しようかな。
日本の無犯罪証明を申請してから二ヶ月と二日が経過した。
年末年始が入るから三ヶ月かかるかもしれない、と前もって言われていたので、どうせまだだろうな・・・と期待もしていなかったのに、電話で問い合わせてみたら、すでに届いていてびっくり!
大慌てでシドニー領事館に行き、無犯罪証明の入った封筒(開封無効)を受け取る。その足で移民コンサルタントの所に行って、その日のうちに提出することができた。
こんなにすんなりと行くなんて。 もしかして、結構前に届いていたのかも?
短い間ではあったけれど、契約最後の日はさすがにしんみりとした気分になった。研究課程を終えたばかりで職業経験も無く、就労可能なビザは持っていても永住権保持者ではなく、面接でも結構四苦八苦してしまったというのに、日本語能力が武器にならない職場で雇ってもらえて本当に運がよかった。新しい環境で仕事にも慣れ、最後の方は同僚意識みたいなものも芽生えたように思う。
毎年8月から1月にかけて大量に契約社員が採用されるので、「戻ってくることがあったら、いつでも大歓迎よ」と言われ、思わず「機会があれば、是非喜んで」なぁ〜んて心にも無いことを答えてしまった。でも、これでオーストラリアで食いはぐれることもない。
休み時間に留守電に残されていた番号に電話をかけ、就職面接の日程を調整する。28日金曜日午後2時半。大本命の肥満研究の職。面接に呼ばれた以上は雇う側も私に少しは興味を持ってくれたということ。同僚に面接の話をしたら、一緒になって喜んでくれて、「you're one step closer to your dream job now! (夢の仕事に一歩近付いたね)」と言われた。頑張らなくては。
しかし、安定した生活とはかけ離れ、常に挑戦する立場に身を置かなくてはならない…というのも結構辛い。
契約終了まであと二日。先週末まであんなに忙しかったのが嘘のように、暇になる。あんまり忙しいのも大変だけれど、やることがないのもまた苦痛だよね〜などと、同僚と冗談交じりに話すほど。
今日はうちの部の上司と同僚の計6名が参加して、会社の前のカフェで昼食会兼打ち上げがあった。チキンバーガーを頼んだら、こんなに食べたら午後は絶対に仕事にならない!というぐらいの量で、お皿からはみ出そうなターキッシュブレッドの上には、丁度良く焼き色のついた鳥の胸肉が2枚と、レタス、トマト、もやし、カイワレなどのサラダがどかっと盛られていた。バーガーとはいえ、手で両端を押さえてがぶりといくには大きすぎ、ナイフとフォークでちまちまいただく。
私の前に座った上司からは、「研究分野は何だったの?」「今後はどうするの?」と色々質問されたが、私が就職活動をしていることを知ると上司も自分の就職にまつわる昔話を始めたりして、なかなかおもしろかった。「自分に自信を持つように」と何度も念を押されたけれど、そんなに自信がなさそうに見えたのかな…。自信過剰よりはいいような気がするけれど、自分を売り込まなくてはならない面接ではやっぱり分が悪いか。
駅で電車を待っている間に、仕事中は切ってある携帯の電源を入れたら、留守電が一件入っていた。何と!研究職の面接の案内だった。どうやら、書類審査は突破したらしい…。
先週は土曜日も出勤し、自分の時間がなかなか取れない。今の会社との契約が終って、朝五時半起きの生活から解放される日を指折り数えて待つ反面、次の仕事が決まっていないので、不安や焦燥感も隠せない。そんな中、研究職に応募した大学から正式に書類を受理したという旨の手紙が届いた。
その手紙によると選考には大体2ヶ月を要するらしい。そんなに悠長に待っていられないのが正直な所。しかも、書類審査を通過したものは学科のスタッフの前で発表させられるらしい。
何だかかなり恐ろしい展開。発表って、つまり準備する時間もなく、いきなり?今まで肥満学会やバイオメディカルサイエンス学科の発表で賞をもらったことがあるが、それは事前に台本を暗記するほど練習し、指導教授と何回もリハーサルを行った結果によるもの。ぶっつけ本番はかなり辛い。というか、無理!英語だって出てこないだろうし、しどろもどろになること間違いなし。(←すでにかなり弱気)
まぁ、面接まで辿りつく前に書類で落とされる可能性も大なので、心配も無用かも?とにかく生きていくために何か仕事を見つけなくては!
お正月はさすがに日本が恋しくなった。一年前の今頃は両親とお墓参りに行き、その後近くの神社に初詣に行って、出産を控えた姉に安産のお守りを買ったんだったと思い出す。お正月とはいえ、今年はおせち料理もお雑煮もなく、特別なことは何一つ無い普段と変わらない三日間だった。
ただ、休みの間に次の職に向けて書類を仕上げることができたのは収穫だった。今回応募したのは、博士課程修了者を対象とした二年契約の研究職の仕事。給与や年金手当ても充実しているし、大学に属し、州政府の政策に影響を与えるような肥満研究に携るというのだから、かなりやりがいのある仕事。求められる資格や経験、技能といったものもかなり高度であるけれど、挑戦してみないと分らない。前回の就職活動同様に、お世話になった三人の指導教授に連絡を入れ、推薦人(身元保証人、照会先)になってもらうようにお願いすると、快い返事がすぐに来たので、とても有難くそして心強く思う。
肥満研究に生涯捧げることが出来たらこれ以上のことはないのだけれど、しょせん狭き門。夢を語るより前に生活を支える術を見つけるのが先。
|