V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
一流の中華料理店で会食。アレルギー体質でエビが駄目なので、XO醤を使った茄子・肉炒めを注文。するとボーイが「XO醤はエビを使っています」と指摘してくれた。これまでエビを避けても中華料理を食べて吐くことが何度かあったが、その原因はこれだったのだ。自前でXO醤を作る一流店ならではのアドバイスに、命を救われた思いだ(業者から買っているだけの店ならわからなかっただろうな。もちろん今回は発病しなかった)。
ITビジネスを手がける社長と会話。曰く「企業はヒト・モノ・カネ」というが、最近はこれにプラスして『情報・時間・セキュリティ』が肝心だ」。情報=チャンス、時間=コストだから当たり前としても、『セキュリティ』とは驚いた。考えてみれば企業は儲かるものと、リスクを回避するものにしか金を払わない。セキュリティを加えるとは正に託宣だ。
大手から出向し弱小企業を勝ち組に育てた辣腕経営者が会長に退いた。僅かな任期の間に間何をすべきかを尋ねられ「社内の言葉に定義をし、残してはどうか」と答えた。『お客様』とは…『利益』『リーダーシップ』とは…当たり前の言葉に対する定義はその人の考え方を如実に写す。同社の成長に最も重要な彼の考え方を後任に繋いでいくにはこれが一番である。
30歳代を中心とした異業種交流会で講師を務める。殆どが大手のビジネスマンだが、一人だけ起業した経営者がいてひと目でわかった。彼に限らず勢いに満ちた創業者はどの集団にいても一目瞭然で、独特の光彩を放つ。その光彩は未来を見つめる眼を持つ人特有の輝きだ。今、鏡と向き合い、自分の顔を眺める。そして自分にその光彩がないのを認め寂しく思う。
自動車メーカーの多くが系列販売店を「営業所」と呼ぶ。某メーカーのマネージャはこれでは…と嘆く。「営業所」は営業マンたちが事務をする場所、と言う意味。お客様が来るのは店なのだから「営業店」と呼ぶべきだと。お客様を患者と呼ぶ病院。債務者と呼ぶ銀行。日ハムの名誉会長然り。時代とのギャップが呼称に現れる。その改変は企業の進歩なのだ。
TDRには多くの日本人以外の観光客も訪れる。人口減少時代は外国人市場も巻き込んで乗り切るべきである。米国は違法移民の増加で景気を回復した。多くの外国人が日本に来るには空港開発が欠かせない。ハブ空港の座を釜山や香港に奪われればそれだけお客様が遠のく。施設内で外国人の言葉を聞くたびにハブ空港化を叫ぶ多くの財界人の気持ちがよくわかった。
ミッキーやミニーは誰かに思いっきり手を振ったり、抱きついたりする。子供はするが大人はしない仕種だ。しかし大人だって本当は誰かの名前を呼んで手を振ったり抱きついたり、抱きつかれたりしたいはず。それができるところにディズニーキャラクターの妙味がある。秀吉は天下人になってもそれを平気でやった。だから「人たらし」だと言われたのだろう。
リゾート内で体調を壊したので救護室へ行く。看護婦による応対の後、2人の救命士が、提携先ですぐ診療が受けられる浦和市内の病院まで、救護車で搬送してくれた。病院には事前に連絡済み。病院に着くと救命士が私の病状を伝え、手続きその他を一切代行してくれた。私はただ名前が呼ばれるのを待っていただけ。充実のサービスは園内だけではない。
ディズニーリゾートは大人にも気持ちよい空間だ。その理由は現世のしがらみである死・SEX・暴力を排除したからだという。この3つに、誰に対しても『公平』である点を加えたい。某社長は「リーダーシップを支えているのは公平であることだ」と教えてくれた。勝者ほど公平であり難きもの。スタッフの己に厳しくあり続ける姿勢に、ゲストは安心して遊ぶことができる。
東京ディズニーシーに遊ぶ。圧倒的なコンテンツとハードの前にただ感服するのみ。これに対抗し得るのは阿波踊りや風の盆、クラブメッドなど土着の自然絡みのものしかないのではないか。人為的なビジネス目的の創造物でこれを上回るのは難しい。敵の戦意を喪失させてこそ勝者と『五輪書』の中で武蔵は言うが、真似しようというパークは今後出て来まい。
某チェーン店の常務に、集客力を高める市場調査を提案する。一般的にチェーン店がよく用いる手法だが、「こんな正攻法じゃ勝てんのです」と一蹴されてしまった。いろいろお聞きすると、勝敗を分ける要因(KFS)は調査案にはない予想外なことだった。そこでそのKFSに的を絞った再提案を約束。特定業界のことをまたひとつ覚えたが、ビジネスは「負けて覚える相撲かな」の連続だ。
問屋はメーカーに対し保証金を積む。その保証金は寝てしまう。そこでH社長は自分の生命保険証券を保証金代わりにすることを考えた。メーカーが保証金に付けてくれる金利よりも高利回りだからだ。更にメーカーが支給するリベートを、より利回りの良いメーカーの株式で受け取ることを考えた。メーカーは前例がないと及び腰だが、この勝負・問屋に軍配が上がりそうで痛快だ。
銀行員の友人より意味深長のメール。「貸出金利=調達金利+信用コスト+経費率+期待利益率 の銀行の論理で、貸出金利を上げようと画策しています。銀行は『お客様に満足してもらい、その対価として収益が得られる』とは考えません。『これだけ儲けないといけないから、この値段で売る』のです」。『貸し剥がし』などと言われる時代。経営者は銀行に頼らない資金調達法を迫られている。
親戚とバーベキュー。ここに登場したのが地元の信金支店長お手製の流しそうめんキット。3mくらいの竹を二つに割り節をくり貫いて流し台を作る。ここにそうめんを流すのだが、そうめんを受け取る箸も、流したそうめんを受け取るざるも、つゆを入れる椀も、ネギ・生姜などの薬味を入れておく容器も皆竹製だった。子供に大人気だったが、日本人特有の一品完璧主義の凄さ感じた。
業績好調の土木会社。半年に一回、自分が建てた建造物の周辺のゴミを拾って歩くボランティアを展開。ゴミを拾いながら、そして痛んだ個所を発見し、修理提案をしてリピート受注に繋げる。同社は環境問題に配慮するために、大学で環境関連問題や花のことを研究してきた者を積極的に採用。現場主義とソフト提案力を磨けば不況業種でも勝ち組になれる。
最近、子供たちが公園で遊んでいない。ブランコやジャングルジムなどの遊具の利用者は未就園児ばかりである。一方、公園では多数の老人を見かける。また各市の中央公園は休みの日は外国人の溜まり場だ。公園に求められる機能がすっかり変わりつつある。遊具より歩行訓練設備の方が有効か。設計・建設する業者は、休みの日の公園の使い方を観察するべきだ。
大卒で入社した会社の業績が好調で、日経に『ブラザー17年目の復活』が連載された。主人公は同期の入社の一人。17年前、ブラザーはワープロ景気に乗って大量採用を敢行。今、その大半が中核となり旧態依然の体質を一層しつつある。痛快なジェネレーション・スキップと同期生の活躍。これがプロジェクトXのようにマスコミに取り上げられるのはOBとしてとても嬉しい。
行き付けのカメラ屋でカメラのボディを買った。定価売りだった。同じ日、ヤマダ電器でビデオのバッテリーを3,000円引きで買う。たったそれだけの値引きで、僕はヤマダ電器を好きになった。逆に定価で売ったカメラ屋は、それ以来バツが悪そうな顔をして僕に接する。数千円でファンを作る種をまく店と、長く負い目を引きずる店。百戦錬磨の一流と未熟者の差であろう。
某大手食品会社の大き目のトイレ。用を足した後に手を洗って出ようとするとドアにノブがない。自動ドアのようだが、前に立っても開かない。そこで壁紙を読むと、紫外線の出る手の乾燥機とドアが連動しており、手を乾かしはじめてから15秒後にドアが自動的に開く仕組みだった。紫外線殺菌した手にドアノブすら触らせない衛生管理。その徹底ぶりに脱帽だ。
文庫本を買いに郊外の古本屋へ。近年名古屋市内には大手書店が多数進出してきたが、どの書店も文庫本は『出版社別』の陳列。複数の出版社から出されている人気作家の「お目当ての一冊」を探すのは一苦労だ。その点郊外の古本屋は、出版社がどこかは関係なく、作家別に文庫が陳列してあり、簡単に選ぶことができる。繁盛の秘訣は安さだけではない。
子会社の営業部長連中が揃いも揃って「独断でやりました」と頭を下げる。彼らは何かをかばっているようだ。生涯自分の子供に「ウソツキの子」というレッテルを貼り続けても、それ以上に守る価値があるものとはいったい何か。隠蔽工作を重ねる組織や逃げる社長にそれほどの価値があるか。彼らには、そんな小さなものよりもっと大きなものを守る愛があるはずだ。
食肉偽装工作の記事を読みながら某常務の言葉を思い出した。誰かが「火事だ!」と叫んだときに、聞いた人は「どこでだ!」を確かめる。その次の人は「どのくらいの規模だ!」を確かめる。そうすれば適切な手が打てる。が、次の人も「火事だ!」と叫びその次の人も「火事だ!」と叫ぶだけ。日本ハムには「それは良いことか?」という単純極まりないチェック機能が欠けていたのだ。
講演会後にある社長から「『勝ち組』『負け組』という言葉がどうもしっくりこない何かそれに代わる言葉はないか?」との質問を受けた。本来は勝者・敗者ではなく「正しい・正しくない」であろう。今の時代は『いかに透明か』が問われている。全部晒しても恥ずかしくないほどお客様のことを考えて行動していますか…?この姿勢こそ業績の優劣を分ける基準なのだ。
会議を合理的に進めるために、O社は会議の議題を『協議』『審議』『報告』事項の3つに分けている。協議事項に関しては4日前までに議事を関連部署に通知し、部門案を持ってこさせる。曖昧な議事については「それは報告事項にあらず、協議事項であり別途関連部門間で協議せよ」と議長が次の議題へ進めてしまう。簡単なルールが日本人特有の無駄を削除している。
某社長と『なだ万』で食事をする。席に着くと、私の鞄を女中が空いている椅子の上に置き、その上に鮮やかで豪華なシートをかぶせた。鞄が視界から消えたが、同時に鞄が大切に扱われている印象を持った。和民の膝付きオーダー取り、ホテルの「ようこそ=水のペットボトル1本どうぞ」。そして鞄目隠し高級シート。「人は驚きを愛する」がこうした驚きを提供できる人は強い。
パリーグの「予告」先発のように企業でも人材を育てるには「予告」が必要だろう。特に上が引退する部長クラスへの引き上げには有効で、「次はお前だよ」「次は彼だが次の次は君かもしれない」ぐらいは囁いておいた方が良い。聞いた方はやる気が出るし、覚悟をする。そして積極的に勉強し、その時の準備に入る。勉強してもらえればオーナーには御の字なのだ。
問屋の社長と会話。在庫が残り僅かなときに、取引実績の少ないA社から全部欲しいとのオーダーが入った。暫くして今度は取引実績の多いB社からオーダーが入った。早い者勝ちならA社だが5年後も注文が貰えそうなのはB社だ。どちらを優先するか。支店長は前者だといい、事業部長は後者だという。それぞれの利益責任範囲が伺える主張で面白い。
「作る」に徹して80年代半ばに中国と合弁工場を立ち上げた縫製業の社長。今では原価の安さを見込んだメーカーや流通からの委託生産の他、自前で国内販路を持った。まかねてからの夢であった日本の伝統技術をアレンジした商品を企画開発中である。「作る」一辺倒の状況を離脱できない企業が多い中、「創る」「売る」まで展開し夢を叶えている姿は、天晴れだ。
大学在籍中にコンテンツ事業を始め、ITとベンチャーのブームに乗って一時はマスコミの寵児となった20代の女社長。しかし己の未熟さから事業拡大に失敗し会社を清算。現在は小学校でカウンセリングとパソコン活用授業の講師を務める。暑中見舞いに記されていた「世の中には無駄なことはないのですね」の言葉に、彼女の平穏な日常が感じ嬉しくなった。
焼津の鮪業者で新商品開発のコンサル。そのヒントを得るために同社社員6名と神奈川県の三崎町を訪ねる。三崎町は「鮪でまちおこし」に取り組んでおり、思いもよらかなった商品を多数発見した。鮪の餃子・饅頭・バーガー・チャーシューなど…ドラッガーは常に「既に起こった未来を探せばよい」と語るが、百聞は一見に如かず。ヒントはある所に行けばある。
層雲峡から旭川までの2時間、タクシーの運転手に旭川地区の歴史を聞いた。屯田兵政策、初めて稲作に成功した人、戦国時代以来続いたアイヌとの争い、軍都・旭川と第二次世界大戦の関連など。その博学ぶりを誉めると「観光案内者として当然のこと…」と運転手は恐縮した。毎年北海道で何日も一緒に回る固定客が何組もついていると言っていたが、それも当然である。
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