加藤のメモ的日記
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2012年11月29日(木) |
前世を記憶するインドの人々 |
マンジュ・シャルマは質素な暮らしを営む、バラモン階級に属する家族の一員であり、ウックル・プラディーシュ州マトウゥラー地区のパサウリという寒村に、両親と二人の兄弟と共に住んでいた。両親はマンジュが生まれる目に、4人の娘を亡くしていた。マンジュは存命中の三児の第二子である。二才の頃マンジュは、自分は自分は(マトゥラー地区にある)チャウムハ村の者だと言い始めた。また、前世の父親と兄の名をあげた。本人によれば、父親は”パーン屋”(インド古来の嗜好品であるバーンを売る店)を開いていたという。そして、前世で死んだ日に起こった出来事を詳細に語ったのである。
その日、マンジュは学校に行った。父親は本人に授業料を渡した後、マトゥラーに出かけた。学校から帰ると、マンジュは井戸端へ向かった。そして、マハーデーブ像にかける水を汲もうとしていた時、バランスを失って井戸に落ち溺死したのである。前世と現世の間で過ごしたとおぼしき彼岸の世界については一言も言わなかった。チャウムハ村の自宅周辺については具体的な発言をいくつか行なったが、両親はそれにはあまり関心を払わなかった。むしろ子供の話であるとして、無視していたのである。
マンジュが自分の前世について話すようになってから、チャウムハ村で質屋をしているバブーラムと呼ばれる男性が、ある日、何かの用事でパサウリ村に来た。マンジュはッブー・ラムの自転車をつかみ、自分の叔父さんだと言った。この男性は当惑し、「知らないねえ。お嬢ちゃん、どこの子供さんなんだい」と言った。それに対してマンジュは、「おじさんはあたしのことを知らなくても、あたしは知ってるの。おじさんはあたしの”チャチャ”(父親の兄弟や友人)でしょ。私の父さんの名前は、ラダリーサランなんだよ」と答えた。それを聞いて驚いた男性が、「どうしてここに来たんだね」と尋ねたところ、マンジュは、マハーデーブ像にかける水を汲もうとしている時、井戸に落ちたと言った。
バブー・ラムはそれを聞いて当惑したマンジュの言っている家族を自分が知っており、その一家には、誤って井戸に転落した娘がいたからである。しかし、マンジュは何も言わなかった。マンジュはその男性に、前世の両親のところに連れて行ってほしいと懇願した。マンジュを宥めるためにバブー・ラムは「はいはい、連れて行ってあげましょうね。でも、今日はダメだよ」と言った。それから自分の村へ帰り、その家族に事の次第を話した。
その話を聞いた家族は、マンジュの村まで出かけた。最初の日は溺死した少女の母親が、次の日は兄が、三日目は父親が、パサウリ州まで出向いたのである。この家族の姿を見ると、マンジュは痛く涙を流した。前世の家族も本人と対面した時、涙を流している。そしていくつかの質問をした結果、この少女が、マハーデーブ像にかける水を汲み上げている時に井戸に落ちた娘のクリシュナに間違いないことを確信したのである。クリシュナは1965年3月6日に死亡し、享年は9歳であった。
クリシュナの両親は、他の者にも会わせたいので、娘をチャウムハ村に連れて行かせてほしいとマンジュの両親に懇願した。マンジュの両親は、その申し出を仕方なく了承したが、本人が不安に思ったりチャウムハ村で泊りたがらない時のことを考え、兄を同行させることを要求した。2,3日してマンジュは、兄とともにクリシュナの家を訪れた。マンジュは何の違和感もなく、同家に宿泊した。むしろ、その家族と一緒にいる方が幸せそうだったのである。チャウムハ村に向かう途中、マンジュはクリシュナの友人を見分けた。また、クリシュナの所持品であった足飾りのようないくつかの物品も見分けることができた。1,2日後、他人の家にいることでマンジュの兄が退屈を感じたため、2人はパサウリ村に送り返された。
1977年に私が訪れた時点でも、マンジュは依然としてクリシュナ家を訪問し続けた。チャウムハ村のクリシュナ一家と一緒にいる方を好み、クリシュナの家族が迎えに来て、自分の両親が許してくれさえすれば、いつでもクリシュナ家に泊まりに逝った。前世の家族は、パニアンというカーストに属していた。本建築の家を持っていたが、経済状態はよくなかった。社会経済階層は、中層の下であった。クリシュナの父親は、クリシュナの死後、定職に就かず、転職を繰り返していた。双方の家族を隔てる距離は5,6キロメートルであった。
面接中マンジュは、前世の出来事について語っている間、意識の変容が起こっている特徴を全く示さなかった。またそれまでにも、そのような兆候を示したことは、やはり全くなかったという。マンジュがESPを持っていることを裏付ける証拠に気づいた情報提供者は一人もいなかった。私との面接の中に、前世で死亡した時の様態を語っていたマンジュは、いくぶん真剣で悲しげな表情を示したことがあった。
両親によれば、マンジュは井戸に行くのを恐がり、自宅で水あひをしたがるという。私にわかる限りでは、マンジュの家族より低いカーストに属していた。(カーストによる差別は、都市部では排除されつつあるが、、農村部では現在でも根強く残っている)マンジュの両親は、クリシュナの死について知ってるという記憶がなかった。またマンジュの父親が道路を通ったり、買い物をしたりしたことを除けば、クリシュナの村とは何の関係もなかった。
1988年12月初旬に再び私は、マンジュと双方の家を訪ねた。1985年6月にマンジュは、中層階級に属するバラモンと結婚しており、婚家の家族とともに、ブリンダーバンに住んでいた。2歳と生後3週間になる健康な二人の娘に恵まれていたが、相変わらずクリシュナの家族と行き来しており、嫁ぎ先の家族もそれには反対しなかった。マンジュは正常な発達をとげ、現世に充分適応していた。前世の記憶についてマンジュが語ったところによると、死亡した時の状況を除けば、子供の頃に覚えていたことはほとんど忘れてしまったという。しかしながら、井戸に落ちたときの記憶は日々の生活の妨げにはならなかったし、もはや井戸端へ行くことにも水を汲み上げることにも恐怖心は感じないとのことであった。
『生まれ変わりの研究』
まるで閣僚製造機 国民の期待はあっという間に冷めていった
「16日衆議院解散」宣言が飛び出した今回の党首討論で一番印象的だったのは、野田でも、言質を取った安倍でもない。結党の立役者であり、現「国民の生活が第一」代表・小沢一郎だった。ボソボソと独り言のように話す小沢からは、3年3ヶ月前の政権交代で、シナリオライター兼演出家として剛腕を振るった面影はなかった。短い政権下で翻弄され、総理大臣の椅子に座ることなく、表舞台を去った名優のようだった。
外交を鳩山由紀夫に任せたことが、小沢の最初のミステイクだった。”宇宙人”の無軌道でKYな振る舞いと発言が、盤石だった傀儡政権をほころばせていった。なかでも周囲を唖然とさせたのは、2009年11月14日に、来日中のオバマ大統領が都内で行なったアジア政策についての演説を欠席したことだった。すでに鳩山は東アジア共同体発言でホワイトハウスの不評を買っていただけに、これはアメリカを軽んじる致命的な行動だった。それが翌2010年5月の米軍普天間基地をめぐる「最低でも県外」という発言が、大迷走へと繋がっていったことはいうまでもない。それにして首相辞任を勧められた鳩山が小沢を道連れ(幹事長辞職)にするとは、小沢も予想できなかったはずだ。小沢は転がる石のように、落下を始めた。
鳩山と小沢がセットで消えたおかげで総理大臣の椅子を射止めた菅直人は、最初に高いハードルを越えることが長期政権につながると思い込んだのだろう。2010年7月の参院選前に突然、消費税10%を打ち出し、自民に大敗した。さらに菅は小沢を悪役に仕立てることで党内運営を図るという賭けに出た。しかし、核を失った民主党の政権基盤は弱体化の一途を辿った。
外国人献金問題が発覚して、菅政権崩壊目前のところで、東日本大震災が発生した。菅のドタバタぶりは目を覆うばかりだったが、結果的に震災が瀕死状態だった菅政権を延命させてしまった。そして、想定外の野田どじょう政権が誕生する。久しぶりに総理大臣の器が登場したと思った。野田は愚直に消費税増税法案を成立させたが、尖閣諸島、竹島問題では、関係諸国に足元をみられ、挙げ句の果てに尖閣国有化宣言で反日感情を徒に高めることになった。この間に小沢はついに民主党を離れる。
聞こえのいいマニュフェストや仕分けなどが象徴するように、中学生の学芸会のような政権だったが、役者不足で、配役下手。民主党はわずか3年3ヶ月の政権で、首相は3人を数え、改造内閣を含めれば8回も組閣をしている。この先民主党政権が成立することになっても、こんな”閣僚製造機”のような政権にならないことを祈るばかりである。
『週刊現代』12.1
生物のからだは無駄なく非常に合理的にできているので、この生殖細胞の無駄には何か意味があるのであろうかと考えたくなる。この無駄は不良な生殖細胞を選別して捨てているのではないかという考えが浮かぶ。どのようなものかはよくわからないが、おそらくここに細胞の選別の機構が備わっているのであろう。生殖細胞は体細胞の半数の染色体を持っている。受精卵は体細胞と同じ数の染色体をもつので、生殖細胞は卵や精子をつくる過程で、減数分裂という特殊な分裂過程を経なけれならない。
減数分裂の過程では、染色体の数が半減するとともに、卵から来た染色体と精子から来た染色体が絡まり合ってDNAを交換することがわかっている。このDNAの交換は傷ついたDNAを排除して健全な生殖細胞を残す働きをしているのではないだろうか。受精のときには、いろいろな障害を乗り越えて卵にたとりついた精子のうち10個ほどが卵の膜を破る。そして、実際に卵の中に入るのはただ1個の精子である。授精にたどりつく精子は5億倍の競争を突破したものであることになる。さらに受精後も流産というかたちで環境に適さない胎児は死んでしまう。
生殖細胞にはこのように何段階もの選別機構があるように思われる。たくさんつくっておいて、DNAに傷がついたり、機能の劣る精子などを排除しているようである。しかし、選別や排除の機構についてはまだほとんど何もわかっていない。このようにたくさんつくっておいて、より環境に適したものを選別していくというのは、細菌などの単細胞生物が通常取っている方法である。細菌などの単細胞生物は二つに分裂して増え、環境に適さないものは死ぬし、環境に適したものは増えていくというやり方で健全な生命世界を保っている。
多細胞生物では、生殖細胞がこの方法で選別されているようであるが、体細胞ではこのようなたくさんつくって良いものだけを残すという方法はとれない。例えば肝臓の細胞を必要な細胞の5億倍もつくるということは到底不可能である。では、人間のように複雑になってしまった生物はどのようにして体細胞の品質を管理しているのであろうか。身体の中には免疫系があり、免疫担当細胞が監視して、癌化した細胞などは殺して食べてしまう。それでも監視を免れた細胞が増えて、60歳を過ぎると4人に1人は癌で死ぬと言われている。
このように多細胞生物の中にも免疫機能やその他の監視機構があるが、生殖細胞のように派手にたくさんつくって捨てるわけにはいかない。そこで、多細胞生物では寿命をもうけて、ある年数生きたものは殺してしまうという方法がとられているのであろう。生物によっては老化を経ないで死ぬものも多いので、老化の行き着く先が死であるとは限らない。しかし、人間を含めた多くの動物は死ぬように運命づけられて生まれてくるのである。多細胞生物の細胞一つひとつも40億年の歴史を持つ生殖細胞からつくられる。私たちは40億年の歴史を背負って生まれてくる。しかも必ず死ぬ運命を担っていることを思うと、私自身の重みと生命世界の残酷さに不思議な感慨を抱くのである。
西暦2000年という年に、この地球上に人間として生きている。その偶然に、私は自然に笑みがこぼれるような喜びを感じている。
私が羊歯(しだ)だったころ降っていた 雨かも知れぬ今日降る雨は
外を眺めていると、急に雨足が強くなった。滝のように降る雨に、私は一瞬、自分がシダだったときに、こんな雨が降っていたとう幻想に引き込まれていった。 科学では許されない非現実的なイマジネイションを含まらせることに文学は寛容だ。私たちの寿命である100年や、1000年と比べて、脊椎動物が出現した5億年前、さらに生命の起源の36億年前は想像を絶する時間である。最初の生命の糸(DNA)は、熱湯の噴き出す海の中で生まれたのではないかと考えられている。その糸は卵と精子に取り込まれ、正確にコピーされて、次の代に伝達される。しかし、遺伝情報は伝達される前に少しずつ変化していく。その中から環境に適したものが生き残って進化が起こる。
動植物の共通の祖先は、今から12億年前に出現したと考えられている。やがて、動物と植物がわかれた。ここで私は植物になる可能性を失って、ひたすら動物の道を歩んできたのである。生物の進化を研究する分野では、生命が誕生してから現在までの期間を、いくつかに区切って表現している。その一つであるカンブリア紀には三葉虫をはじめ、いろいろな形の動物が出現した。カンブリア紀とそれに続くオルドビス紀に、現存するほとんどすべての動物群が出そろった。カンブリア紀は今から6億年前から5億年前までの1億年の期間であり、それに続くオルドビス紀は、4億8000万年前から6000万年前の期間である。ちょうどこの頃に出現した動物は、ミミズなどの環形動物、ハチなどの昆虫、貝などの軟体動物、ウニなどの棘皮動物である。
時 間
歳を取るほど一日が短くなっていくことは、多くの人が感じていることである。80歳を過ぎた父は一日が短すぎて新聞を読む暇がないとよくこぼしていた。私たちも子供のころは時間がゆっくりと過ぎた。一日が長かった。動物の心臓が打つ数と寿命の間には相関関係があって、だいたい心臓が20億回打つとその動物の一生は終わりになる。もし、人間の寿命を100年として、ハツカネズミの寿命を5年とすると、ハツカネズミは、人間の20倍の速さで時間が過ぎることになる。とすると、ハツカネズミは、日の出から日の出までの時間を、人間の20日にあたる長さに感じていることになる。20日を1日と感じるとすると、ハツカネズミは、何と長い一日を過ごしているのであろう。
『生命の暗号』
100年先のことは誰もわからない
今年10月上旬、私はチェルノヴィリを訪れた。チェルノブィリ原発4号機は事故後、放射性物質の拡散を鉄筋コンクリートで建屋を覆うことで防いでいた。だが、この”石棺”の老朽化が進み、このままでは崩壊し、放射能汚染がヨーロッパ全土に広がる可能性がある。そのため、今年4月から巨大ドームを作り、石棺の上に被せるというプロジェクトが始まった。 現在、4号機に隣接した敷地でドームが建設中で、3年後の完成時には、レールで建屋まで運ばれる。しかし、これも耐用年数が100年もつがどうかだ。 チェルノブィリ原発関連では、毎日3500人が廃炉に向けて働いているが、現代の科学では「石棺にドームを被せる」という暫定的な措置しか術はない。 停止した1,2,3号機の使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の工事も進んでいる。施設の担当者は、淡々とした口調でこう語る。 「最終処理場の建設は未定ですが、ここで100年間保管されます。その後、100年後の人々が新しい技術を開発するでしょう」 事故を起こした原子炉が1基だけのチェルノブィリでもこのありさまである。福島第1原発は4基もの原発が、爆発もしくはメルトダウンした。 野田政権は早々と収束宣言を出したが、福島第一原発の1号機は、現在も建屋内の床に瓦礫が散乱し放射線量も高い。廃炉作業は容易ではなく、行程表や費用など実施計画も立っていないのが現状だ。
内部被曝は避けられない
チェルノブイリ原発事故で最も汚染された地域の一つが、このベラルーシのゴメリ州である。この地域の人々は、豊かな森林でキノコや木の実を取り、ヘラジカなどの野生動物を仕留めて生活の糧にしてきた。 今年5月、汚染地域でのキノコなどの採取を禁止する法律ができた。だが、貧困層や年金生活者による禁止区域での採取や、路上販売が日常的に行なわれている。 一方、原発から350㎞以上も離れたブレスト州では、健康被害が深刻化している。ブレスト州立内分泌診療所のアルツール所長はこう語る。「事故前の1976年から1985年までの10年間に発見された甲状腺がんは61人でしたが、事故後4年目の1990年に99人、2008年には456人と急増しています」 ゴメリ州ブダ市のスモルニコワ医師も、「事故前、小児がんはほとんどなかったが、事故後には白血病など様々ながんが増えた。また免疫が弱く、風邪をすぐ引く虚弱な体質の子供も増えた」という。 ゴメリ州北部、チェチェルスク市では、NGOが移動式のホールボディーカウンタで子供たちの内部被曝を調べていた。時々、400ベクレル/kg前後の高い数値の子供が発見されることもあるという。 「数値の高い子供は、親を呼んで食事の指導をします。今までも農地が汚染されているゴメリ州では、内部被曝を避けるのは難しいので日ごろから数値を知ることが大事です」(NGO職員) 一方で福島は。どうなのだろうか?莫大な国家予算が汚染に費やされているが、費用対効果が明確ではなく地域再生というにはあまりにも杜撰な計画のようにみえる。これでは請け負った大手ゼネコンを儲けさせるだけではないだろうか。その予算の一部を移住や被爆者医療などに振り向けるべきとの声はもっともではないか。福島県の県民健康管理調査では、検出器や人員の不足などで、内部被曝を正確に測ることができる尿検査が実施されておらず、子供たちへの甲状線検査も遅れている。 26年目のチェルノブィリから、福島は何を学ぶのか。
『週刊現代』11.24
理不尽すぎる民族の「同志討ち」朝鮮戦争の悪夢
部隊は朝鮮戦争の戦場。南北合わせても100万人以上が犠牲になったというのに、日本じゃその特需景気で沸いて一気に経済成長が始まった。どんだけ歴史って皮肉やねん。この悲惨を極めた民族の同志討ちを描く映画は数々あったけど、今回も陣取り合戦が延々と繰り返される。
1950年の6月、ソ連の傀儡の北軍に攻め入れられた韓国軍。前線兵士たちはあっという間に捕虜になってしまう。その北軍の体調は「お前らが逃げまどっていたのは戦争の理由を知らんからや。こんな闘いは1週間で終わる。大人しく故郷に隠れとれ。終戦になったら祖国再建につとめろ」と。韓国軍の主人公、大学出の若い将校らはすぐ釈放。
部隊は移り、それから2年半後。両軍は未だに泥沼戦を続け、助っ人の中京軍と、ケツ持ちのアメリカ軍が代理で停戦協議中。つまり、南北の境界線をどこの辺りで引いて手打ちにするか決まらないまま、任務に逆らった主人公の中尉は最前線の地獄へ戻される。高地の頂上を奪い奪われの死闘をしている部隊が、裏で北軍と通じている疑いがあるから調査してこいとの命令や。
戦争は国境の奪い合い。狙撃兵はいるわ、中京軍は束できやがるわ、さんざん戦った末、停戦協定が‘53年7月27日朝10時に成立。両軍が歓声を上げていたら、協定の実効は午後10時からというわけ。時間が来るまでまた頂上の取り合いや。こんな理不尽がほんまにあったんや。南北は休戦協定こそ交わしたが、今も戦争中に変わりない。
『週刊現代』11.3
日本維新の会の石原慎太郎代表は20日、東京都内の日本特派員協会で講演し「日本は核兵器に関するシュミレーションぐらいやったらいい。これも一つの抑止力になる。持つ、持たないは先の話だ」と述べ、核兵器保有について研究すべきだとの考えを示した。石原氏はこの発言に先立ち、「核を持っていないと発言権が圧倒的にない。北朝鮮は核開発しているから、米国もハラハラする」と指摘した。核兵器の有無が外交力を左右するという認識を示した。
また、これまで中国を「シナ」といってきた理由を「孫文が作ったもので、悪い言葉ではない。日本人にとって中国とは広島県と岡山県だ」と語った。その上で日中関係について「仲良く、友好に進むのは好ましいが、シナの覇権主義で日本が第2のチベットになることは絶対に好まない」と、けん制した。
鳩山元首相、衆院選に出馬せず
民主党の鳩山由紀夫元首相(65)衆院北海道9区は20日、、衆院選(12月4日工事、16日投開票)に立候補しない意向を後援会幹部に伝えた。鳩山氏は20日夜、東京都内の自宅前で記者団に対し、21日に野田首相に会ったうえで記者会見をすることを表明した。「私は民主党に心から愛着を持っている。自民党を飛び出し、民主党を作って行動してきたことを大事にしたい」と語り、無所属や他党から立候補する考えのないことを示唆した。
鳩山氏は消費税増税法案に反対して、党員資格停止処分を受けたほか、野田首相の進める環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉への参加にも反対を明言している。17日には衆院選出馬に意欲を示す一方で「自分の信念を曲げるつもりはない」とも強調した。民主党執行部は消費増税やTPP推進に反対する候補者は公認しない方針で、鳩山氏の対応が注目されていた。
鳩山氏は当選8回。自民党から新党さきがけを経て、96年に旧民主党を結成。09年衆院選で大勝し、民主党政権の初代首相に就任したが、米軍普天間基地の移設問題で迷走を重ね、10年6月に退陣した。次の衆院選での政界引退も表明したが、撤回した。
鳩山元首相、党内かき回し退場へ 混迷・民主政権の象徴
09年の政権交代の象徴だった鳩山由紀夫元首相が、民主党政権の混迷の3年余りを象徴する形で衆院選不出馬に追い込まれた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で迷走し、わずか9カ月足らずの在任期間で退陣。国会議員を辞めると言っては撤回し、菅直人首相の内閣不信任案決議案に賛成する構えを見せたり、野田首相が政治生命をかけた消費増税法に反対したり、民主党政権が国民の信頼を失った責任者の一人であることは間違いない。
自民党の石破茂幹事長は20日夜、記者団に「首相を辞めるときに議員を辞めると言っていた人が辞めただけだ。ここまで判断を先伸ばした理由が理解できない」と語った。鳩山氏は10年6月2日に首相退陣を表明した際、記者団に「首相の影響力をそのあと行使し過ぎてはいけない。私は次の総選挙に出馬しない」と明言したが、わずか半年後、地元後援会の会合で「次の衆院選でも行動を共にさせていただきたい」と撤回した。
普天間移設問題では、2009年衆院選の際に「最低でも県外」と公約したが果たせず沖縄県民の反発を招いた。2009年11月に来日したオバマ米大統領に「トラスト・ミー」(私を信じてほしい)と言った後、なおも移設先の変更を模索して日米関係も悪化させ、後の政権は日米関係の修復に追われることになった。自民党の幹事長代理は「『最低でも県外』と決めたのは、民主党そのものだ。野田首相が鳩山さんを外交の党最高顧問に据えたことには、大きな責任がある」と民主党の外交失政を批判した。公明党幹部は「日本外交の破綻にきっかけを作った張本人だ。国益上、辞めてよかった」と突き放した。
退陣後は小沢一郎元代表(現「国民の生活が第一」代表)と連携し、消費増税を進める菅、野田に両政権に反旗を翻し、自らが否定したはずの「首相の影響力を行使」して政権を揺さぶり続けた。今回の衆院選で民主党執行部が「鳩山切り」も辞さない構えを見せたことが不出馬につながったとみられ、石破氏は「マニュフェストに賛同できない者を公認しない方針は、政党として評価すべきだ。政策の一致した純化された集団として政界再編の一つの核になることは、それはそれで望ましいのではないか」と皮肉った。
民主党内にも「党をかき回したあげく、離党したくても受け皿がなくなった。無所属で出れば負けるとわかっているからこうするしかなかったんだろう」(中堅幹部)、「首相までした人が晩節を汚したとしか言いようがない」(政務三役経験者)等冷ややかな声が広がった。
『毎日新聞』11.21
移民、女性、貧困層の政策で差がついた
中傷合戦はうんざり
接戦となった選挙戦で再選されたオバマ米大統領。「チェンジ」(変革)の呼びかけに多くの国民が期待した4年前の前回ほど盛り上がりはなかった。選挙戦の特徴は―。
投票日の6日、激戦となった南部ジョージア州フェアファックスで、投票を終えたヒスパニック(中南米)系の男性ジョーは語った。「オバマに投票した。経済問題が一番の関心だ。でも、女性や少数者の権利なと社会問題への姿勢も選択の基準だ」オバマ氏の13日現在の得票は、6200満票。4年前と比べて730万票も減らしている。失業率7.9%、失業者推定1230万人という厳しい状況を反映し、現政権の経済運営への厳しい批判が示された。
政権奪還に向け絶好のチャンスといわれた野党・共和党。ところがロムニー前マサチューセッツ州知事の得票は5900万票。4年前のマケイン上院議員の票より114万票減らした。
最大の争点は
選挙の最大の争点は経済対策だった。オバマ氏は、金融経済危機からの回復策を着実に進めてきたと強調。自動車産業の救済や、無保険者問題の解決に向けた医療保険制度改革を「実績」として訴えた。財政赤字の削減策として、富裕層増税も提案した。
一方のロムニー氏は、「政府に雇用は創出できない」として、民間部門主導の経済成長策を主張。富裕層や大企業を中心として10年間で5兆ドル(約400兆円)規模の減税と、企業活動への規制緩和を宣言した。しかし、軍事費や貧困対策、環境問題など、国民の関心の高い分野の論戦は深まらないままだった。目立ったのが、テレビコマーシャルに巨額の金を投入した中傷合戦。有権者からは”もううんざり”との声が。
国民の多様化
オバマの勝利の背景として指摘されているのが、米国の人口構成の変化である。出口調査によれば、黒人層の93%、ヒスパニック系の71%、アジア系の73%がオバマに投票した。ロムニー氏がリードしたのは、白人男性と高齢者層のみだった。選挙中、共和党陣営からは”メキシコとの国境に通電したフェンスを設けるべきだ”等移民への厳しい発言が相次いだ。黒人など少数者に多い貧困層を”政府に頼って生活する人たち”と見下す言動、”女性が性的暴力で妊娠するもの神の意思”といった発言も飛び出した。
ジョージ・メーソン大学のビル・シュナイダー教授は「経済問題というよりは、多様化する人口構成が結果を決めた。オバマ氏への投票者は、共和党が勝ったら何が起こるかと恐れた」と指摘する。オバマ氏の再選には、共和党の「自滅」という要因もあるといわれる。
共和党の支持層からも、「小さな政府」を掲げて減税と規制緩和ばかりを唱える政策自体の見直しを求める声が出ている。保守派の論客デービッド・ブルック氏はニューヨークタイムズで「共和党の基本的な考え方の枠組みが、もう有権者の共感を呼ばない」という。今回の選挙の結果、大統領は民主党、上院は民主党が過半数、下院は共和党が過半数と、選挙前と同じ構図となった。景気回復を求める国民の期待にどうこたえるか。早速12月にはオバマ氏が公約した富裕層増税をめぐる与野党の攻防が本格化する。
『週刊朝日』
フリーメイソンとは何か?この秘密のベールに包まれている組織を一言でいうならば、世界最大の秘密結社であるということだ。世界各国のグランド・ロッジを中心に多くの支部ロッジを持つ。全世界のフリーメイソン団員は、約700万人から1.000万人。その頂点に立つのが、ヨーロッパのロスチャイルド一家とアメリカのロックフェラー一家だ。フランス革命、アメリカ独立、イタリア統一、明治維新、ロシア革命など、近代の革命や独立運動、そしてソ連崩壊、EU誕生など、そのバックには必ずフリーメイソンがいて、歴史の潮流の鍵を握ってきた。
例えば、アメリカはフリーメイソンによって建国されて国であり、初代大統領ジョージ・ワシントンから現大統領ブッシュまで、その歴代の大統領の多くがメンバーなのである。実力とチャンスの国アメリカ。アメリカン・ドリームといわれながらも、実際のところメーソンでないと大統領にはなれないといわれている。そのアメリカのメーソンのメンバーは約350万人。メーソン国家と呼ばれている割には意外に少ない。だが、世界的財閥をはじめ、政界首脳陣、法曹界、外交官、軍人、学界、宗教界、映画界、マスコミなどのあらゆる分野のトップクラスがメーソンによって占められ、その影響力は絶大なるものがある。
フリーメイソンの真の目的を知るものは、ごく一人の上位メーソンに限られている。そしてその組織は、厳格な最高位33階級の階級制度が敷かれている。一国の大統領や首相がメンバーになったり、またはメーソンのメンバーが大統領や首相になると、名誉位としての33階級が与えられる。だが、あくまでも名誉階級であって、実力とは別のものである。例えばブッシュ大統領は、大統領になるやいなや33階級になったが、その彼ですらもメーソンのトップシークレットプランは知らされておらず、世界に冠たるアメリカ大統領として彼らの意のままに操られている。
世界政府のひな形として建国されたアメリカ
アメリカとフリーメイソンの関係が一目瞭然となる建物が、世界政治の中枢ワシントンに建っている。アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンがフリーメイソンだったことを記念して創立された「ジョージ・ワシントン・メソニック・ナショナル・メモリアル」である。ジョージワシントンは大統領になったとき、アメリカのメーソンの支部長をしていた。大統領になるやいなやすぐに連邦議会の行政機関として、国務、財務、陸軍、司法の4省を設け、最初のアメリカ政府の重要機構を確立した。その国務長官、財務長官、陸軍長官、司法長官、副大統領の全員がフリーメイソンのメンバーだった。
メーソンの主張は、キリスト、ブッダ、マホメットは神の遣い(つかい)であり、そのすべての宗教上に彼らのいうところの神がいる。ただし、メーソンの神は三位一体の神ヤーヴェではない。堕天使ルシファーである。この奥義は秘密であり、ごく一部のメーソンしか知らない。アメリカの1ドル、5ドル、10ル、20ドル、100ドルの紙幣が誇らしげに並び、1ドルのワシントンから100ドルのベンジャミン・フランクリンまで、ドル紙幣に印刷された人物は全員がメーソンだったことを証明している。
また、連邦議会の議事堂に、過去の宇宙飛行士全員の記念写真も飾られ、その写真にはメーソンのシンボルマークである定規とコンパスが刻まれている。今や宇宙飛行士にはメーソンのメンバーでないとなれないといわれるほどで、その勢力はNASA(アメリカ航空宇宙局)にまで浸透しているのである。というより、NASAそのものが完全にメーソンの私物機関となりつつあるのだ。そして国の資金や技術を利用して、彼ら自らの戦略を遂行しようとしている。いまやCIAはメーソンの私物化された諜報機関となっているのだ。アメリカがいかにフリーメイソンの国家であるかということがよくわかる。つまり、アメリカ合衆国は、メーソンによる将来の世界共和国(世界政府)のひな形として建国されたといえるのである。
フリーメイソンの理想は、社会や国家を改良して、普遍的人道的な世界共和国を建設することである。世界共和国の建設。つまり、世界を一つにまとめ、世界統一政府を樹立する。それが彼らの究極の目的となっている。また、メーソンの主張によれば、彼ら石工がソロモンの神殿の建設に携わったといういい伝えから、エルサレムにソロモンの神殿を再建することを目的としている。かってソロモンの神殿が栄華をほしいままにし、神の聖座の中心となっていたように、メーソンは世界宗教の中枢をそこに置き、彼らの”神”によって一つの宗教に統一しようとしているのだ。世界統一政府と世界統一宗教の樹立。これこそがフリーメイソンの最終目的であり、そのためには手段を選ばず、何世紀もかけてその陰謀性を発揮してきたのである。
『悪魔の人類総背番号制666』
新聞社や通信社は、継続的に報じるべき大きな事案が発生すると、社内で表記の統一をはかることがある。厳密なこともあれば穏やかなこともあるが、限られた行数で本質を端的に伝えるためには必須の作業とされている。最近話題となった「例の事案」をめぐっては各紙、こんなふうに表記することが多くなった。
〈IPS細胞から作った心筋細胞を、患者に移植したと森口尚史氏が虚偽発表した問題〉(読売新聞)〈IPS細胞を使った世界初の臨床応用となる移植手術を実施したと、主張している森口氏〉(朝日新聞)だが、これは本質と隔たりがある。正確には、こう表記すべきだろう。〈IPS細胞による移植手術を実施したと主張する人物に、一部メディアが騙された問題〉もっと簡潔にはこうだ。〈IPS細胞の移植手術をめぐる一部メディアの誤報問題〉
はっきりいえば、これは「メディア問題」であり、それ以上でもそれ以下でもない。森口氏という、いかにもうさん臭げな人物が記者から激しく追及され、しどろもどろになりながら嘘が次々にバレて行く無様な姿。それを時には面白おかしく伝えてはいても、一部のメディアが彼に騙され、その大ウソを大々的に垂れ流すような醜態を演じなければ、この事案自体がそもそも現出していなかった。
いや、彼がウソさえつかなければこんなことにならなったじゃないか、と反論されるかもしれない。だが、世の中にはウソツキがいる。森口氏の場合、もはや病の域に入っているとすら思うが、個人にせよ、組織や団体にせよ、この世にはウソやゴマカシが溢れている。そのウソやゴマカシを見抜き、突破していくのがメディアの役割ではないか。その際に頼るものはただ一つ、取材のみ。どう考えても必要な取材が尽くされた気配がない点において、今回は相当に深刻なように思う。周知の通り、今回の騒動を引き起こしたのは10月11日付の読売新聞朝刊だった。この1面トップの”特ダネ”を真に受けた共同通信が追っかけ、配信記事を受けた全国の地方紙にデタラメ記事がデカデカと躍った。扱いの大小はあれ、いくつかの民放も類似の後追い報道を繰り広げている。
だが、ウソはすぐにバレた。ハーバード大学客員講師という肩書も、マサチューセッツ総合病院で行なったという手術も、東大医学部の「IPS細胞バンク研究室」なる組織も、すべては基本的な取材で判明する稚拙なウソばかりだった。しみじみと嘆息する。ネット全盛の今、ネット上には有象無象のジャーナリストもどきが跋扈しているが、新聞を筆頭とする旧メディアの財産はかろうじて維持されている取材網と正確な取材力のはずだろう。それが相当に劣化していることを示すような醜態には、嘆息という言葉しか浮かばない。
もう一つ、別の病根も垣間見える。私自身、メディア業界の片隅で生きるものとしての自戒を込めて言うのだが、この国のメディアは権力や権威に弱い。もっと平べったくいえば、強いものに弱く、弱い者に強い。面倒な相手にはかしこまり、水に落ちた犬は徹底的に叩く。ハーバード大。マサチューセッツ総合病院。東京大学。森口氏というウソツキが駆使したのは、いかにも権威の香り漂う舞台装置だった。典型的な詐欺師の手口だが、それに騙されたメディアの姿にはどこか、権力や権威にめっぽう弱い本質がちらついてはいないか。例えば警察や検察。大企業やスポンサー、大手芸能プロダクション。強者にすがり、おもねり、その言い分をハイハイと鵜呑みにして報じがちなメディアの実態。その片鱗が、バレてしまったのではないか。そんな匂いまで嗅ぎ取ってしまうのは、風邪が過ぎるだろうか。
『週刊現代』11.3
安倍と討論中に突然「16日」
都知事選とダブル
野田首相が14日、党首討論の場で「16日に解散をします」と、電撃表明した。民主党内の強い反発を承知で伝家の宝刀を抜いた。「近いうち解散」から3ヶ月余り。うそつき批判に耐えられず、党内で退陣論が強まりだしたことを受け、自民党の協力を得たうえで、身内に追い込まれる前の「暴走解散」に踏み切る決断をした。明確な争点はほとんどなく、3年間の民主党政権そのものが問われる戦いになる。衆院選は12月4日に公示され、東京都知事選と同じ16日に投開票される。
党首討論での解散宣言。野田首相が前代未聞の戦略に打って出た。自民党の安倍晋三総裁に冒頭、「近いうちの意味を、この討論中に明らかにしたい」と意味ありげに切り出した。公債発行特例法案の今週中成立と衆院の1票の格差是正、定数削減。解散の環境整備としてきた懸案に自民党が協力することを条件に、「私は、今週16日に衆院を解散してもいいと思っている」と述べた。
委員会室には「おお」とどよめきが起き、野次も止まった。民主党籍の拍手はまばら。誰もが虚をつかれた。安倍氏も「解散は約束ですね、よろしいんですね」と念を押したほど。首相は、自民党に異論がある現行の定数削減案も「最悪の場合、次の国会で成案を得る」とハードルを下げ、「そのことをもって16日に解散する。やりましょう」と、退路を断った。解散権は首相の専権事項である。民主党内が早期解散に反対しているのを承知で、伝家の宝刀を抜いた。
8月に、自民党の谷垣前総裁に「近いうち解散」を持ちかけて3ヶ月。10月の安倍氏との会談でも解散時期に触れず、うそつき批判に晒された。官邸関係者によると、首相は毎日毎日嘘つきだといわれることを相当腹に据えかねており、また悩んでもいたという。討論でも、嘘つき返上に躍起になった。「自民党政権では、公定歩合と解散は嘘をついてもいいといわれていたが、私は嘘をつくつもりはない」。小学生の時、成績が下がった成績表を父親に見せたエピソードを持ち出し「親父に怒られるのかと思ったら、野田君は正直にばかがつくと書いてあって、喜んでくれた」と強調した。
NHKの中継も入った公の討論の場で解散を宣言する演出は、事前に極秘に練られ、党首討論前に、16日の解散の意向を興石幹事長にも伝達。早期解散に反対し続けた興石氏も、「専権事項だから首相に委ねるしかない」と、ぐうの音も出なかった。与野党が争う明確な争点はほとんどなく、約3年前の民主党政権が問われる選挙になる。消費税増税などのマニュフェスト違反で、民主党には大逆風。約240の現有議席が50~60になるとの見方もあり、惨敗は必至だ。
民主党内では、早期解散を目指す首相の退陣論が拡大。政府関係者は「刺される前に刺したということ」と話すが、首相は身内に追い込まれた末、解散カードを切る形になった。「選挙戦で相まみえることを楽しみにしている」安倍氏に挑発された首相は、「覚悟のない自民党に政権は渡さない」と言い切ったが、民主党の「終わりの始まり」につながる暴走解散になる。
交付金が出ない小沢氏ダメージ
身内にも寝耳水の発言。13日の常任幹事会で相当不快感を持ったようですね。首相支持派から年内解散への反対論が噴出。さらに、野田降しにまで踏み込んだ発言もあり、腹に据えかねた。その思いが爆発した。いわば嘘つき流れ解散ですね。この発言でみんなそれどころではなくなった。離党予備軍も野田降し派も食い止めることができた。国民に対しても、定数削減に道筋を付けたとの言い訳ができる。追い詰められたのではなく、主導権を取った解散をアピールしたかった。
考える時間を与えない解散は、第3極潰しでもある。総選挙まで時間を与えれば与えるほど、離党者が増え第3極へ駆け込む可能性が高まる。まだ足並みが揃わず、政策のすり合わせも出来ていない状態の第3極に不意打ちを食わせた格好だ。今なら、民主の負けをまだ少なくできると読んだのかもしれない。資金面でも年内なら、立ち上げたばかりの新党に政党交付金が回らない。「国民の生活だ第一」にとってはかなりのダメージのはず。
獲得議席数は自民230前後、公明27~28と自公で過半数の勢い。民主は85、第3極では日本維新の会と太陽の党で合計50台。「国民の生活」はひと桁台になるのでは。政権奪取に成功した安倍自民が、自公を軸に選挙結果をにらみ第3極のいずれかも取り込むことも考えるのでは。政治空白で景気に悪影響も考えられるが、機能しない”死に体政権”より、国民の信を得た新政権で対策をやった方がいい。
準備不足のまま「大いくさ」突入
「日本維新の会」代表としてはじめて国政選挙に挑むことになる橋本大阪市長は、突然の首相の解散宣言に対し、さすがに驚きの色を隠せなかった。第3極の結集が不透明なだけに、準備不足のまま衆院選に突入する可能性が強い。大阪市で取材に応じた橋本氏は「決まりましたが。いよいよですね。準備できるとかできないとか、言い訳が通用する世界ではない。今回は本当の意味での大いくさだ」と、気を引き締めた。「有権者に応援してもらえるような政策や候補者を出す。王道を歩くしかない。真正面からいくしかない」と、正攻法で戦う考えを強調した。
しかし、前日に設立された「太陽の党」との連携協議は、政策内容の違いもあって、難航している。連携協議については、「最後まで諦めずにやる」と述べたが、太陽の党の平沼共同代表からは「もう少し時間が欲しい」と、本音が漏れた。維新と太陽の党は16日に2度目の政策協議を予定しているが、どこまでまとめられるか不透明。石原前東京都知事が目指す「選挙前の大同団結」も難しい状況だが、なし崩しに連携すれば有権者の視線も厳しい。橋下氏は早くも「結集」のあり方をめぐり、岐路に立たされた格好だ。
『日刊スポーツ』11.15
2012年11月10日(土) |
中国が仕掛ける日本への経済封鎖 ② |
売り上げだけではない。部品や原材料などを中国で生産している企業、例えば100円ショップや製薬会社は、製品の根幹部分を調達できなくなってしまう。もっとも大きい損害を被る代表例はユニクロだろう、と前出の経済記者は推測する。「売上高1兆円を目指すユニクロは、公表こそしていないが、ヒートテックやウルトラライトダウンをはじめとする製品のほとんどすべてを中国で生産しています。急速なスピードで世界展開を進めているユニクロですが、もし中国から排除されれば、そもそも『売るものがない』状態になってしまいます。そうなれば今後営業活動を続けることは不可能になります」
中国で反日暴動が起こったとき、店頭に「支持魚釣島是中国固有領土」(尖閣は中国のもの)という紙を張ったり、逆風の吹く中で、あえて9月下旬に上海店をオープンさせたりといった行動に出たのは、ユニクロが中国なしでは成り立たないということの証左なのである。このように、中国に「命綱」を握られている企業は、経済封鎖が行なわれれば、一瞬で「生命停止」となってしまうのだ。やはり、勢いで勝る中国と「経済戦争」を戦えば、日本は完膚なきまでに叩きのめされてしまうのだろうか。
だが、中国経済に精通する専門家の間からは、「中国にとって対日経済制裁は両刃の剣。むしろ中国の方が大きな経済的損害を被るのではないか」との声が聞こえてくる。ビジネス・ブレークスクール大学教授で、中国経済に詳しいエコノミストの田代氏は、「中国には日本企業を追い出すという選択肢はとれないはずだ」としてその理由を次のように説明する。「2011年の中国の輸出額は1兆8986億ドル。これは世界1の数字だが、中身を分析してみると、うち52%の9953億ドルは、中国国内にある外資系企業関連の輸出によるものです。この数字を見れは中国がいかに外資に頼っている国かがよくわかるでしょう。しかも中国でまともに法人税を払っているのは外資系企業です。こうした情況下で日系企業を追い出せば、生産面でも雇用面でも中国側が受けるダメージは非常に大きいはずです」
田代氏は続けて、「中国は日本の技術を欲しているため、そう簡単に”日本切り”等できるはずがない」とも指摘する。「日本企業にとって中国の魅力は、発達した産業インフラと広大な市場。一方の中国は、「世界の工場」とは言われるものの、やはり技術的にはまだまだ未熟なのです。中国が今特に欲しがっているのは、日本の中小企業が持つ技術です。図面を入手しても、その通りの製品をつくるには熟練した職人の技術が必要です。その点では日本の方にアドバンテージがあるのです」
共産党が倒される
中国情勢に詳しいジャーナリストの富阪氏も、中国の対応に世界の視点が注がれている今、経済強硬策を取れば世界が中国を見放すだろう、と指摘する。「今後中国は、中国に進出している日本企業のうち、あまり中国に利益を還元していない企業に対して、税の徴収を強化する、あるいは工場を造る際の設置基準を厳しくするなどの措置を取ることは考えられる。しかし、あまりに締め付けを厳しくすると、欧米諸国が『チャイナリスク』を強く意識するようになり、中国への投資に慎重になってしまいます。それは中国にとって大きなマイナスです」実は、水面下で始まっている「日中経済戦争」において、日本はすでに勝利を収めている、という見方もある。毎月中国を訪れ、各地を取材しているジャーナリストの宮崎氏はこう指摘する。
「中国での日本製品不買運動や訪日観光客減ばかりが報じられているが、訪中する日本人も急速に減っており、北京や上海で流行っていたナイトクラブでも、上客だった日本人が来なくなったので、閉店が相次いでいます。また日本の投資家が、中国株の投資信託を次々と解約しており、9月だけでも300億円近くが解約されたといいます。中国経済の一つの指標となる『上海総合指数』は、今年9月に2000ポイントを下回りました。これは5年前の3分の1以下で、いかに中国経済が疲弊しているかを物語っている。その上日本からの投資が減れば、中国の経済はさらに減速してしまうでしょう」
10月18日に中国国家統計局が発表した7~9月期のGDPは。、前年同期比で7.4%。成長率は7四半期蓮速で低下の一途を辿っている。長期的な景気減速に直面している中国のホンネは、「これ以上マイナス要因を増やしたくない」というところだろう。宮崎氏はさらに、「日系企業が現地で多くの中国人を雇用しているという事実を見逃してはいけない」と指摘する。「日本企業が雇用している中国人は1000万人以上です。下請けなどの間接雇用も含めれば、3000万人から5000万人ともいわれるが、この半分でも失業したら、中国の治安は大混乱に陥るでしょう。その不満は日本に向かうのではなく、中国政府に向かいます。そうなれば中国の政権は倒れることになる。確かにやせ我慢をすれば、経済的な面では日本を排除することが可能かもしれない。しかし、その結果体制が揺らぐようなことに繋がるのなら、結果的には中国が受けるダメージの方が大きいでしょう」(宮崎氏)
国内の不満を収めようと日本企業を痛めつければ、今度は別の不満が噴出する。中国政府は、深刻なジレンマを抱えているのである。もし熾烈な日中経済戦争が起これば、それは「勝者なき戦い」となるだろう。」中国経済の専門紙『中国経済新聞』は10月15日、「対日経済制裁は中国の利益にならない」と題した社説を掲載したが、はたして中国の指導者たちはこうした冷静な声を受け止めることができるのだろうか。
『週刊現代』11.3
2012年11月09日(金) |
中国が仕掛ける日本への経済封鎖 ① |
中国の強みは安い労働力と、広大な市場
中国は指導者の交代で、新たな経済制裁を発動するかもしれない。これは中国ビジネスに携わる日本企業の共通認識だ。数長円にも上る経済的損失に、日本は耐えらえるだろうか。
おかしいのは中国です
「世界のほとんどの国は平和主義であるのに、日本とアメリカは常にトラブルメーカーではないか」「日本に対して今すぐ経済封鎖を実施せよ」中国最大の国際情報紙『環境時報』のうぇぶさいとには、怒れる中国人による反日感情むき出しの意見が次々にかきこまれている。日本が尖閣諸島を国有化してから一ヶ月が経ってもなお、中国人の反日熱は冷めなる気配を一向に見せない。中国外交部の洪らい副報道局長は、そんな中国人民の怒りを煽るかのように「問題を大きくした責任は日本にある」と繰り返し、そして今後中国が”対抗措置”を取る可能性を示唆している。
周知の通り、中国はすでに日本に対する「経済制裁」をいくつも実施している。それは最も軽いところから始まっており、日本の輸出入品に対する貨物検査率の引き上げや、日本製品の不買運動などが公然と行われている。ソフトブレーンの創始者で、現在北京に在住する荘氏がその実態についてこう明かす。「貨物検査率の引き上げによって通関に影響が出始めているため、モノが市場に流通する動きが遅くなっています。これが日系企業に深刻なダメージを与えています。日本からの部品や材料が予定通り入ってこないため、中国の工場では生産のスケジュールが立たなくなっているのです。 さらには、ワーキングビザを発行するスピードが遅くなっている、とも聞きます。ヒト、モノの流れが大変遅くなっているので、今後日系企業の活動に抜き差しならない影響を与えていくと思われます」
不買運動も日系企業の頭痛のタネとなっている。ネットを中心に広まる「不買運動」は、反日暴動が収まった今でも、とどまるところを知らない。現在中国国内では「この日本企業の商品は買ってはいけない」という”不買リスト”が出回っており、ソニー、キャノン、資生堂、武田薬品などの名前があがっているという。「特にアサヒビールやパナソニック、第一三共などの企業のイメージは中国国内では最悪です。8月下旬、これらの企業が『魚釣島に日本人を上陸させる計画の資金援助をしている』『右翼組織に献金している』という報道が中国国内で流れたからです。もちろんこうした報道に根拠はないのですが、一度ネガティブな報道がなされれば、ネットを通じていつまでも拡散することになるので、これらの企業は今後中国で苦戦するでしょう」(在中国日系メーカー社員)
さらには中国中央テレビをはじめとしたメディアで、日系企業の広告や特集番組を流さない、という一種のボイコットも起こっているという。中国は国をあげて日系企業のブランドイメージを低下させようと躍起になっているのだ。中国国内だけではない。日本の観光業のダメージも深刻だ。昨年、日本には100万人以上の中国人観光客が訪れ、約2000億円を日本に落としている。しかし、JPモルガン・チェースの試算では、尖閣問題の影響で2012年に日本を訪れる中国人観光客は昨年比で70%も減少し、日本の観光収入は670億円減少するとなっている。
ユニクロが危ない
仮に中国が日本との経済関係を一切断つと決めた場合、いったい日本経済にはどれだけの影響があるのだろうか。昨年の対中貿易額は、日本の貿易額全体の21%、3450億ドルに達している。さらに中国に進出している日系企業は25.000社を突破している。日本の対中依存度は、著しく高い。個別の「対中依存度」を見ても、日本企業がいかに中国に首根っこを押さえられているかがわかる。例えば日産、ホンダ、パナソニックの中国での売り上げは、全体の10%を超えている。真鍋氏が補足する。
「自動車などの日本製品に対する不買運動が起こっていることは周知のとおりですが、日本企業の中には中国での販売の急激な落ち込みから、生産調整を始めるところもあります。一方の中国は現在供給過剰になっていますし、今後はさらに日本からの輸入を減らす動きが、必然的に起こるでしょう。そうなれば日本の企業は苦戦を迎えることになる」
もしも中国が「対日経済封鎖」を決め、国内から日系企業を完全に締め出し、日本との輸出入をストップしたら…。2011年度の日本の対中輸出額は約1600億ドル。単純に考えても約12兆円が失われてしまうことになる「中国市場の売上比率が高いコマツ、パナソニック、日立、日産などの大手企業、百貨店やコンビニなどは相当な打撃を受けることになるでしょう」(真壁氏)
5世紀から7世紀にかけて、大阪にコリア世界の古層が堆積された。この古層について、今までは漠然としたことしかわかっていなかったが、最近の歴史学は、新しい視点から、この古層の詳しい組成を調べ始めている。朝鮮半島の南端部には、この時代に「加耶」(かや)という国があった。国といっても、北方に隣接した百済や新羅と違って、まとまった国家の体をなしているのではなく、群小の国家が寄り集まって「加耶連合」のようなものを作って、百済や新羅に対抗していた。今の歴史学は、この加耶の人々のたどった命運に注目するのである。
この加耶は任那(にんな)とも呼ばれて、日本と深い関係を持っていた。もともと朝鮮半島と西日本とは、ひとつながりの共通世界を作っていたが、使われている言語にしても、方言程度の違いしかなかったし、宗教もほぼ共通で、半島と列島にまたがって親戚が広がっており、お互いの間を日常的に小さな船で行き来していた。加耶諸国の北にあった百済が、中国文化からの強い影響を受け、新羅に高句麗の力が及び始めていた時代になっても、加耶は日本との強いつながりを保ち続けていた。
最近の研究は、大阪における在日コリア世界の古層を実際にかたちづくっていたのが、生粋の百済人や新羅人ではなく、じつは加耶諸国から「難民」として渡来した人々であったことを、明らかにしつつある。この加耶は、北からの圧迫を受け続けた。一方では百済や新羅から文化的影響も強く受けて、次第に百済化、新羅化の度合いが強まっていった。加耶諸国では次第に、国家としてのまとまりが失われていった。こういう情勢の中で、加耶の人々の日本への移住が始まったのである。彼らは百済や新羅の高級な文化を身につけていたので、列島に渡ってくると、各地の豪族から喜んで迎えられた。この中でもとりわけ大勢力を形成したのが、「ハタ(秦)」と呼ばれたグループで、その数は数万人の規模だった。
秦氏には、採鉱や治金や養蚕・機織などの等の技術に巧みな、「職人」系の人々が多かった。彼らは列島の広い範囲に散っていった。古代の日本列島の開発においては、この人たちが関わらなかったところの方が、むしろ少なかった。大阪湾に辿り着いた秦のグループの大半は、ここには定住せずそのまま淀川を渡って山城盆地に入り、太秦(うずまさ)や深草に大きな村を作った。
7世紀になって、加耶諸国が半島を統一した新羅に呑み込まれて、姿を消してしまうまで、200年余りもの間に、そこからは実におびただしい人々が、日本に移住してきた。彼らは身に付けた高度文化によって百済系とか新羅系とか呼ばれるようになったが、実際のところは、西日本の「日本人」ともともとはほとんど違いのない、加耶諸国から渡ってきた人々なのであった。
ものづくり大阪の土台
大阪に辿り着いて、上町(うえまち)台地に上陸した渡来の人々は、平野と猪飼野(いかいの)を中心に、自分たちの世界を築いていった。彼らは自分たちのことを「百済人」と称した。滅亡した加耶諸国の名を名乗るよりも、その方が通りがよかったからであろう。それにこの人たちの多くは、百済で発達していたさまざまな技術を身につけていたから、農民であると同時に、「技術者」として重宝がられた。寺社建築の知識を持った高級技術者から、呪術装飾品である「玉」をつくる細工人、たたら製鉄と鉄の道具造りに巧みな工人、音楽家や芸人、それに優れた陶器をつくる陶人に至るまで、「百姓」の名に値する多彩な職人が、こうして大阪に住みつくことになった。
後の聖徳太子の時代になると、四天王寺建設のために、「本物の百済人」である高級宮大工が、正式に招聘されてきた。彼らは四天王寺の周辺に職人街や楽人町をつくって住んだ。工事が終わっても帰国しないで、彼らはそのまま大阪人になった。その子孫たちは、四天王寺に雅楽を奉納する音楽家や舞踏家として、現在にまでその技を伝えている。宮大工の子孫は、ギルド(組)をつくって、日本の建設業の先駆けとなった。千年を越える歴史を持つ「日本最古の会社」である建設組合「金剛組」(こんごうぐみ)こそ、このとき招かれた宮大工の系譜に直結している、大老舗である。
「ものづくり大阪」の基礎が、こうして打ち固められた。ヨーロッパの職人結社フリーメイソンの紋章には、コンパスや定規が描かれているが、大阪に定着した職人たちにも、大工の使う「物差し」と伝説の聖徳太子を、自分たちの結合の象徴とした。そのために各地の太子堂には、物差しを持った少年姿の聖徳太子の像が安置されることになった。奈良で悲劇的な運命を辿った聖徳太子とその一族のことは、むしろこの大阪において、後々までも深く崇敬されて続けたが、その背後には大工の使う物差しが、秘密のシンボルとして、不思議な波動を送り続けていたのである。
7世紀以後、これほど大量の「アラキ(新米)」の人々が、朝鮮半島から渡ってくることは、20世紀の前半に至るまでおこっていない。渡来の波がいったん途絶えた後、千年を越える月日の間には、コリア世界との差別をはかりながら、独自性を求めて形成されていった日本の文化との、ハイブリッド化が進んでいった。DNAも混じり合って、コリア世界産の血は、もともとが混血的な「日本人」の、重要な構成要素の一部となって、深く沈澱していった。しかし、古層コリア世界の存在は、たとえ表面からは見えなくなっていても、大阪におけるモノ作りの技術の中に、消すことのできない痕跡を刻んでいる。
『週刊現代』1.28
2012年11月05日(月) |
尖閣は棚上げにしてしまえ |
尖閣諸島は‘72年の日中国交正常化合意のときに田中角栄と周恩来の両首脳の間で「棚上げ」の方針が確認されていた。「当時は冷戦下で、中国にとっても旧ソ連が脅威だったから『棚上げ』が可能だったわけです。ところが天安門事件のあとは、中国にカリスマ性を持った指導者がいなくなり、日中関係をコントロールすることができなくなりました。そこで中国側は反ナショナリズムを政権浮揚の手段として使ったわけです。それが先代・江沢民政権のやり方で対抗したのが小泉元首相の反中外交でした。日中双方でナショナリズムに依存する形になってしまい、現在起きているのは、その延長線上にある当然の帰結なんです」(外交評論家・宮家氏)
決定的な衝突を未然に防ぐためにはどうすればいいのか。宮家氏は「引き続き国際社会の中で責任ある役割を果たすように中国に促し、同時に中国が非平和的な動きをした時の抑止力を高めることが必要です。たとえば、尖閣諸島の周辺で衝突を回避するためのルールを作らなければなりません。南シナ海ではASEAN(東南アジア諸国連合)が法的拘束力を持つ『行動規範』を作ろうとしています。それと似たものを日本は中国と作らなければならない。それは米国も加えた多国間で協議すべき重要な課題だと考えています。政治的な問題ではなく、海上での衝突防止、不必要な対立防止のルールを作ればいい」
ただし、領土問題を一気に片付けようとすると、戦争突入の可能性はどこまでも拡大していく。それを避けるため、これまで日中間では尖閣諸島の領有権を曖昧にしたままにしていた経緯があるが、元外務省国際情報局長の孫先氏は、この「棚上げ方式」を続けるべきだととして、こう強調する。
「これは日本に有利なのです。国際的にアメリカは中立の立場を取っていますが、現実には日本の尖閣諸島の実効支配が認められており、それが長く続けは続くほど日本は有利になる。実効支配が長くなれば、それだけで日本の実績になりますから。とくに反日デモがこれだけ激化すると、早く棚上げの方向に持って行かないと、どんどんエスカレートして軍事衝突が起きる可能性もあります。これは絶対に避けないといけない」『中国化する日本』の著者で愛知県立大学の興那教授も国境線は曖昧にしておくべきだと提言する。
「日本もかっての自民党政権下では、ある意味で中国共産党と同様、政権交代の可能性を度外視できたがゆえにそれほど民意を気にせず、領土問題を曖昧にしてこれたわけです。それが自民党一党支配が終わり、中国も民衆の力が強まって、どちらも政治家が民意に対して脆弱になったことが尖閣問題の背景でしょう」同氏はそう指摘した上で、棚上げ論の有用性についてこう述べる。
「領土問題に一義的な決着をつけようとするのは近代ヨーロッパの発想です。東アジアにはもともと主権国家という体制はなかった。今回の反日デモは日本政府が尖閣諸島の国有化に踏み切ったのが発端だった。国民感情として「当然だ」という意見が多い一方で、それだけで尖閣問題が解決するほど国際関係、特に対中外交は単純ではない。「「日本は相手が中国だと視野がせなくなる」と指摘するのは、前出の加藤教授である。
「日中関係は日本だけでは決まらないということです。世界は日本を中心に動いているわけではありません。では、日中関係がどこで決まるかといえば、それはロシアかもしれないし、インドかもしれない。中国は日本を恐れてはいませんが、核ミサイルを持っているロシアやインドが怖い。かって中国はロシアと武力衝突をしたうえで、領土問題を話し合いで解決した歴史があります。また、インドとはいまだに国境問題を引きずったままです。そういった過去を踏まえて、尖閣問題をモスクワやニューデリーで、そして欧米で大々的にしたたかにプロパガンダを行ない、日本の言い分をアピールしていくことが大事なのではないでしょうか。実際、中国は米国の新聞に莫大な広告量を払って『尖閣諸島は中国の領土だ』という広告を載せたぐらいです」
かって日本は年々軍備を強化する米国に脅威を感じ、先制攻撃による逆転に賭けて太平洋戦争に突き進んでいった苦い過去がある。「日本人は妙に潔癖症で、曖昧な状態は永続しないものと決めつけがち。そこで『どうせやるなら今しかない』という発想になるのも、真珠湾攻撃の心理です。しかし実際には台湾のように、主権国家としての位置付けが曖昧なままでさえ、戦略次第で十分自立を保っていけるのが、国際政治のもう一面の真実です。いたずらに『曖昧さをなくせ!』と叫ぶだけでは、それこそ中国の暴徒と同類です」(前出・興那教授)たとえ愚かな隣国であったとしても、辛抱強く、したたかな交渉を続けるしかないのである。
『週刊現代』10.6
2012年11月03日(土) |
東北除染30兆円の利権の争奪戦 |
誰でも出来る「簡単仕事」 「土を掘り返すだけ」に青天井の予算がつく
「本気でやれば30年かかる」
高濃度の放射性物質に汚染された地域の「除染」は、被災地復興には欠かせないプロジェクトである。だが、実際の作業の内容や、どれくらいの金額が注ぎ込まれているかを理解する国民は少ない。この大事業には、巨大利権が生まれ、大手ゼネコンを中心とした「争奪戦」が勃発している。
〈急募 除染作業員 誰でもできる簡単なお仕事〉インターネットの求人情報には連日、福島などでの除染作業員の募集要項にこんな文字が躍る。仕事の内容は、福島原発20㌔圏内での除染作業だ。待遇は1日2万円、4時間労働で、無料宿泊施設に泊まれて労災も適用される。それにしても実に軽い文句の募集である。そもそも「除染」とはどのような作業をするのか、理解している人は少ない。地元の建設業者が説明する。「民家の場合は、屋根に上がり高圧洗浄機で瓦の上を洗い流す。土壌の洗浄は土の表面を剥がして処分するのが基本。1時間も洗浄機を持てば手が震えるし、掘り返すのは当然ながら重労働ですが、工事としては極めて単純です」要は「水をかける」「か「土を掘り返す」のが主な作業だということ。
しかし、その「単純作業」がカネの成る木に化ける。野田首相は、年頭会見で「除染をしっかりすることが福島の再生につながる」と力説し、費用は「1兆円規模」を方針に掲げた。それを受けて、除染を担当する環境省は11年度第3次補正予算に2459億円、12年度当初予算に4513億円を計上した。さらに13年度負担分を合わせると1兆円を超える。一般人が防護服を着ることなく普通に生活している場所での除染作業でも、作業員には”危険手当”として、普通より割り増しされた給料が支払われているケースがある。原発から近くなればさらに手厚くなり、人事院が定めた作業に当たる公務員に対して支払われる金額に準じて増額される。例えば警戒区域内では1万円、計画的避難区域内は5000円。
八ッ場(やんば)ダム建設を例に挙げるまでもなく、近年の公共事業では「湯水のように時間とカネをかけ、遅々として進まない」ことが批判の的になってきた。しかし、「除染」に限っていえば、「放射能はほんの少しでもコワい」「徹底的に取り除け」という論議が後押しになる。「時間とカネをいくら費やしても批判されない。こんな公共事業は滅多にないわけですよ」と、中堅建設会社幹部は喜びを隠せない。こうしてう予算は青天井となり、費用は暴騰していくのである。
現状の「除染」はカネの無駄?
しかし、「除染は労多くして功少なし」との意見も少なくない。福島氏が昨年10月に行なった大波地区の民家6戸の除染結果を見ると、屋根はたった30%と、半分にすらなっていない。同市の除染活動を視察し、住民たちと除染研究を続けている京都精華大学の山中教授が指摘する。「屋根瓦は表面の塗料や瓦の内部に放射性物質のセシウムが入り込んでいて、高圧水を吹き付けるだけでは取れません。むしろ飛散させてしまい除染というより移染になる。本来なら屋根瓦を剥がすのがベストだが、費用がかかり過ぎる。結局、”やったような気になる”高圧洗浄が今後も主流となるのでしょうが、これでは無駄な予算を垂れ流し続けることになってしまう」
そもそも、「除染」そのものに効果があるのかという指摘もある。昨年11月初め、大学教授や自治体職員らをメンバーとする福島県の調査団が、ウクライナとベラルーシを訪れた。団長を務めた清水・福島大学副学長は、チェルノブィリ原発事故の除染で、農地の表土除去について「実施したがコストがかかり過ぎて、効果がなかった」と報告している。範囲が広大となる除染では、費用対効果が大きなポイントとなるのだ。
政府は長期的に1ミリシーベルト以下との目標を掲げるが、それまでにどれほどの費用がかかるのか誰にもわからない。福島でチェルノヴィリの失敗を繰り返し、「終わってみればゼネコンだけが儲かった」ではまったく浮かばれない。前出の前田教授は、「ゼネコン利権になろうが、効果的に住民が安心して暮らせるレベルまで線量を下げれくれるなら構わない。しかし受注に血道をあげて、効果的な除染に繋がっていない現状では、無駄な時間とカネだけが費やされてしまいます」ある南相馬市民はポツリとつぶやいた。「”今の除染が必要なのか”と口にするだけで、”せっかくカネを貰えるんだからよけいなことを言うな”といわれました。除染は誰のためなのか……」
『週刊ポスト』3.16
2012年11月02日(金) |
尖閣諸島日本領有の正当性 |
日本共産党の志位委員長は9月21日、程永華駐日中国大使と都内の中国大使館で会談し、尖閣諸島(中国名・魚釣島)に対する日本の領有権の正当性を主張するともに、両国間に領土に関する紛争問題が存在するという立場に立って、冷静で理性的な外交交渉を通じて問題の解決をはかることが必要だと述べた。
志位氏は、「日本共産党は、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも、国際法上も正当であるという見解を表明している」として、3点にわたってその要点を説明した。第1は、1895年の日本による領有の宣言は「無主の地」の「先占」(せんせん)という国際法上全く正当な行為であったということである。
第2は、中国側の主張の最大の問題点は、1970年までの75年にわたって日本の領有に対して1度も抗議を行なっていないということである。第3に、中国側は「日清戦争に乗じて奪ったものだ」と主張しているが、下関条約(日清戦争の講和条約)とそれに関する交渉記録を見ても、この主張は成り立たないことである。志位氏は「日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・おう湖諸島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは異なる正当な行為だった」と表明した。
さらに志位氏は、「尖閣問題を解決するためには、日本政府が『領土問題は存在しない』という立場を改め、領土に関わる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決をはかるという立場が大切であることを、『提言』では提起したと述べた。程大使は、「注意深く聞いた。『提言』は。政府と党に報告する」と表明した。「領有権に関しては立場が異なるが、外交交渉による解決をはかるという点では、お互いの考え方は近いと思う」と述べた。さらに、「暴力行為は賛成しない。中国政府は冷静で理性的な行動を呼びかけ、警察は違法行為を取り締まると発表している」と述べた。
『赤旗』9.22
万能薬はソバだった
ソバにはビタミンB1、B2、鉄分、血圧を下げるカリウム、亜鉛の他、ビタミンCの吸収効率をを高め、高血圧の改善や脳溢血の予防に有用なルチンを大量に含んでいる。溶けだした栄養成分を存分に摂取するためにも、ソバ湯もしっかりと飲みたい。
『週刊現代』10.27
2012年11月01日(木) |
ハードウェア至上主義の誤謬 |
電機メーカーや半導体メーカーが総崩れとなった日本では、大リストラが進行中だ。東京商工リサーチによれば、今年の主な上場企業の希望退職者や早期退職者の募集・公募は8月30日現在で50社・1万5000ん超に達するという。個別企業の募集・応募人数は、半導体大手ルネサスエレクトロニススの5000人を筆頭に、NECの2400人、シャープの2000人と続く。それ以外にも、ソニーは国内外で1万人の削減、パナソニックは本社社員7000人のうちの大多数を削減する計画となっている。
結局、日本企業は各社ともカンナで材木を削るように全体的に少しずつ人員を削減してしのごうという姿勢なのだ。しかし、私に言わせれば、今世界で起きているビジネスモデルの”地殻変動”は、一時的なリストラやコストダウンで乗り切れるものではない。周囲を見渡すと、実は今は日本企業だけが苦しいわけではない。一時は韓国企業や中国企業の隆盛が伝えられていたが、実態はどこも厳しくなっているのだ。
例えば、韓国のサムスン電子は、半導体とスマートフォンは利益を出しているが、液晶テレビなど日本勢が苦労している領域はやはり赤字で、決して盤石ではない。中国勢も最近は失速する企業が目立っている。電池から自動車に参入したBYD(比亜油)は、昨年の販売台数が予想を大きく下回り、今年4~6月期も大幅に減益となって資金繰りの悪化が懸念されている。家電メーカーで中国国内トップシェアのハイアールも、アメリカなどの海外展開はうまくいかず、グローバル化できていない。中国国内の消費が翳ってきたら、どこまで耐えられるのか、はなはだ疑問である。
低価格で日本勢や欧米勢からシェアを奪ってきたサンテックパワー(尚徳電力)をはじめとする太陽光発電装置メーカーも、今や赤字に転落して青息吐息だ。しかも、ヨーロッパでは中国製ソーラーパネルに対するダンピング(不当兼売)の調査が行なわれ、苦境に陥っている。つまり、急成長と喧伝されている中国・韓国企業を含めても、デジタル大陸では勝者はごく少数なのだ。だとすれば、電機・半導体メーカーのビジネスモデルそのもののあり方を問い直さなければならない。
「ハードウェア至上主義」の誤謬
バブル崩壊以降、日本企業は「選択と集中」を金科玉条としてきた。薄型テレビのパナソニックも液晶のシャープと、つい最近までそうアピールしていた。しかし、それが今は逆に自分たちの首を絞める結果になっている。日本企業の「選択と集中」は、どこが間違っていたのか。その反省と総括なしには経営戦略を描けないはずだ。しかし、今なお従来の価値観のまま迷走を続ける企業が多い。
解りやすい例がソニーだ。同社は9月中旬、デジタルカメラの新モデルを発表し、本格一眼とミラーレス一眼の交換式デジカメで2012年度に世界シェア15%を目指す、という方針を打ち出した。デジカメを今後のエレクトロニクス事業の中核の一つと位置付け、このところ市場が拡大している一眼デジカメに高付加価値製品を投入してシェア拡大を狙うのだという。だが、今頃そうした事業戦略を発表すること自体、ソニーは今世界で起きているビジネス新大陸の地殻変動を全く理解していないことを如実に示しいていると思う。
つまり、ビジネスのトレンドは根本的に変わり、もはや単体としてのハードウェアが富を生む時代は終わったのである。その象徴は、日本企業が磨いてきたデジカメやポータブルオーディオレコーダーといった単体のハードウェアの技術が、すべてスマホやタブレット端末の画面上のアイコンになってしまったことだ。個々の”デジタルアイランド”が合体し、スマホやタブレット端末という”デジタル大陸”に収斂されたのである。
そういう状況下にあるにもかかわらず、日本企業は未だに”ハードウェア至上主義”で、液晶テレビ、デジカメ、カーナビなどの商品を軸に選択と集中を行なおうとしている。その一方で、ビジネスシステムは研究開発・設計・製造・販売・サービス・営業などの機能別組織を上流から下流まで”一気通貫”で残したままなのだ。その結果、何が起きるか。シャープのように、4300億円を投じて建設した堺工場を遊ばせたくない、操業度が下がると赤字になるという理由で大型液晶パネルを作り続け、莫大な在庫を抱え込む羽目になる。
自前でビジネスシステムの全機能を持っていることを正当化するため、経営のトップがマーケットや顧客を無視した本末転倒の意思決定をしてしまうのだ。そんな日本企業と対照的なのが、デジタル大陸の数少ない”勝者”である鴻海(かいはん)精密工業とTSMCの台湾勢2社だ。両者の成功は、急成長を続けるアップル社からその製造を受託したという”幸運”に多くを負っている。アップルは設計するだけで、あとは半導体チップをTSMCが製造し、鴻海がiphoneやipadなどの組み立てを担当している。結果的に両者とも、アップル製品の世界的なヒットの恩恵を最大限に受けた格好だ。だが、この台湾勢の「選択と集中」にこそ、新たなビジネスモデルのカギがある。
『週刊ポスト』10.19
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