幸せ |
父と母が死ねばいいのに、と初めて思いました。 僕がこうして生きているのは、父と母が望んだだけなので、 その二人が死ねば、こんな世界から離脱は容易だと、思いました。
僕が死んだら、悲しんでくれるでしょう。外の人は。 だって、父と母が望んだ姿だけを見ているのですから。 おどおどして、人がしてほしいことは何かで頭がいっぱいで、臆病者。 人は「やさしい」といいます。 本当は怖いだけです。
父と母が死んだら、僕は真っ先に腹を割きます。 こんな世界に望みも無く生きるのは、辛いです。 誰も信じられません。 誰も。
家の隅に火を放って、一緒に寝ればいいですか? 僕はそんな残酷なことを考えました。 でも、僕は、こんな僕で生きていくくらいなら、死んだ方がましです。 父も母も一緒に。 僕は父も母も大好きです。 大好きです。大好きです。大好きです。 でも、嘘かもしれません。怖いだけかもしれません。 反抗期はありません。一度も。
父は「明るく」というので笑いました。 笑っていたら、彼氏ができました。 でもその笑顔は父の望んだものでした。
母は「普通にしなさい」というので、黙りました。 僕が考えたことはいつも変なことだったので、黙ってうなずきました。
僕という個人は僕から消滅しました。
父が「生きなさい」というからいきました。 何度も首を括ろうとしてやめました。
母が「行きなさい」というからいきました。 みんなと同じように大学まで進みました。
僕がしたかったことなんて、僕が考えたことなんて、 父も母も、気づくことなく。 僕から僕は消滅しました。
また朝になったら笑うんです。 それが父の儀式です。 けんかをしても「家族なんだから」と仲直り。 円満なフリを装うのです。 「矛盾だよ」と注意しても「俺の常識だから絶対だ」といいます。
僕のことを判ったような口聞くのが一番許せません。 僕のことなんて、1ミクロンだってわかってやいません。 父も母も。 僕がほしいものはいつだって取り上げて、 僕に必要だって物だけ過剰に与える。 それで「うちはうまくいっている」って顔をスル。
キモチワルイ。
父が死んだら、僕は内心「やっといなくなった」と安心するんでしょうね。 両方いなければ、僕はやっと死ねます。
僕は、残酷なんです。 僕は世界で一番、僕のことがわからなくて、 自分の中に時限爆弾のようなものが仕掛けられている気分です。
よく磨がれた包丁で、人体を刺しはしないかと気が気じゃありません。 その人体が、自分のものであれば、幸せ。
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2007年09月21日(金)
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