サッカー観戦日記

2011年10月08日(土) 全日本ユース(U−15)奈良大会準決勝 ソレステレージャ−法隆寺 高田−YF

この日は奈良の大会へ向かう。十分な余裕を持って出たつもりが、京都で降りるところを寝過ごして草津まで行ってしまう。おかげで7、8分の遅刻。


全日本ユース準決勝第1位試合は県U−15リーグ1部同士の対戦。その時は引き分けている。ソレステレージャは元々中体連のチームがクラブ化したもので、タイプとしては大阪の千里丘FCと似ている。前身の中体連は観た事があるが、クラブかしてからは初見だ。対する法隆寺はまったくの初見。


全日本ユース(U−15)奈良大会準決勝  
ソレステレージャ−法隆寺FC
10時 奈良県フットボールセンター ピッチ人工芝 晴れ

ソレステレージャ     法隆寺
−−−十番−−七番−−− −−−九番−−五番−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
九番−六番−−四番−十八 四番−十番−−十一−七番
三番−五番−−二番−十二 三番−八番−−二番−六番
−−−−−一番−−−−− −−−−−誰々−−−−−

なかなか見えにくい会場なので、得点者は不正確です。到着直後、法隆寺が先制。さて、すぐ分ったのは、ソレステレージャがサイド攻撃にこだわる、というかすぐサイドに出す、と言うことだ。サッカーでは直線的プレーが第1優先で、それが出来なければ中でパスをつないで崩し、それも出来ないからサイドに出すのであって、中からの攻めを育成年代で放棄すれば、相手に囲まれた状態での正確なコントロールが身につかないと思う。あるいは正確なコントロールが無い故にサイドにすぐ出してしまうのか。いずれにせよ法隆寺は横パスを読み、奪ってはタテに鋭いカウンターを狙っていた。またカウンターの際にコントロールが乱れないだけの技術があった。11分、裏を狙い、ソレステレージャDFがかぶったところを9番が冷静にループ。0−2。直後にも6番が右シュート、はじくがゴールイン。0−3。法隆寺9番は動きは少ないが、ちょっとした走るコースの変更でマークを外すのが上手い。ストライカーの仕事の第1優先は点を取ることというのが分っている選手で、カウンター時にボールを受けに引かず、運ぶ仕事を他の選手に任せている。10番は相手を背負っていても正確にトラップし、前に運ぶ強さもある。体の使い方が上手い。給水タイムが入り、ソレステレージャの選手が「ポゼッションはしている、俺らは。カウンターでやられているだけ」といっていたが、それだとペースを握っているのはソレステレージャだと主張しているように聞こえるが、明らかに法隆寺ペースだと思う。サッカーはいかに効率的に得点を狙うスポーツなのだから。タイム後もペース変わらず、27分、カウンターから浮き球パスを法隆寺9番がフリーで決める。0−4。結局前半は0−4で終了。県リーグでは引き分けたとは思えない実力差があった。

後半も開始すぐ、法隆寺がスルーパスを受けた9番が左シュートを右隅に決めて0−5。どうしてもソレステレージャは9番を捕まえられない。12分、法隆寺、左シュートをGKはじくが、こぼれを誰かが押し込み0−6。この際ソレステレージャGKがファウルを犯し警告になる。5番はポストプレーヤータイプなのかもしれないが、前を向くプレーが多い。11番はシンプルにはたくのが上手い。18分、左パスをまたしても法隆寺9番が決めて0−7。直後にソレステレージャが割り切ったようにタテに早いサッカーになり、決定機を2度作る。プレーが直線的になり、良くなった。このあたりで勝負ありを判断したか、法隆寺がGKを含め、次々に選手交代。主力の10番、11番も下げる。27分、法隆寺、誰かが左足シュートを決めて0−8。28分、法隆寺25番?が裏に抜けてGKと1対1、決め手0−9。直後に19番は正面フリーを決めて0−10。しかしこの時間帯はワンサイドではなく、ソレステレージャもあきらめておらず、形は作っている。そして38分、11番がタテ一本に反応して決めて1−10.39分にも早い攻めで2−10とする。41分にはFW7番に当てて落とし、10番が左足スープで決めて3−10。さらに40分ハーフのロスタイム、14番がペナ内に切れ込み倒されPK。これを自ら決め手4−10と追撃したがそこまで。法隆寺が大勝した。

私はポゼッションサッカー、それもただバックラインで回すだけだとか、横パスばかりのパスは好みではない。相手のギャップに入り込み、相手を引き付けつつ正確にコントロールし、フリーになった味方に角度をつけてどんどんつないでいき前に運ぶサッカーが好きだ、昨年、京都U−18からトップに昇格した山田はこういうプレーに長けていた。ソレステレージャはボールを支配していたが、大きな展開が多く、サイドバックが積極的に上がるのだが、中央が薄くなり、横パスを奪われては失点した。強いこだわりは感じる、奈良は指導者のこだわりが強いと言うことなので、この実績のあるクラブは、シンプルでダイナミックなプレーを目指しているのだろう。ただ技術面が足りなかった。千里丘と共通しているのはハート。精神的な強さだ。10点差から追い上げるのは難しいが、最後まで全力を尽くしていた。

法隆寺はゴールまで最短のプレーを意識していた。「ダイレクトプレー」だ。パスをつなぐことが一時育成年代でもてはやされ、次にドリブラー重視にシフトしていったが、昔も今も、出来るなら、直線的に攻めきりことが最優先なのは変わりが無い。またそれが一番難しい。法隆寺には、それを可能にするだけに正確なミドルパスや技術があった。タレントもいた。勝敗の帰結は順当だったと思う。




さて第2試合はともに今年のクラセン関西大会に州ツ上司他チーム同士の対戦だ。県リーグでは高田が5位、YFが2位。なおYFは正確にはYF NARATESORO。柳本啓成さんが代表を務め、山野孝義さんが監督のチーム。山野さんは解説の仕事もあるし、大阪在住だから毎日は通えないかもしれないが、このクラスの人材が現場に関わり続けるのは重要なこと。ちょっとケースは違うが、私はライセンスを持たないベテラン指導者はいかに活用するかはサッカー界の課題だと思っている。元帝京の古沼先生とか、東福岡を最強にした寺西コーチだとか。YFの「Y」は柳本も「Y」らしい。

さて、クラセンのプログラムから登録が変わっていないと仮定して、選手名を書く。

全日本ユース(U−15)奈良大会準決勝  
ディアブロッサ高田FC−YF NARATESORO
11時45分 奈良県フットボールセンター ピッチ人工芝 晴れ



高田           YF
−−−野原−−久保−−− −−−−−石原−−−−−
−−−−−松室−−−−− 久米−中野−−釼−−平間
−江川−−赤山−−野村− −−−−−吉川−−−−−
谷口−浦野−−辰巳−三好 中田−渕上−−下村−平田
−−−−−岩崎−−−−− −−−−−高塚−−−−−

高田
GK  1 岩崎穏
DF  4 三好優也
    3 辰巳健太
    5 浦野稜也
    6 谷口翔大
MF 13 赤山遼馬
   11 野村翔太
   16 江川航
    8 松室直希  県トレ
    7 野原敦也
FW 10 久保吏久斗 県トレ

YF
GK  1 高塚祐輝
DF  4 平田健人
    3 下村浩太
    6 渕上友貴
    2 中田遼太郎
MF  5 吉川晃生
    9 平間徹二
   14 釼恭輔
   10 中野克哉
    7 久米椋斗
FW 11 石原昴明

高田はポジションチェンジを多用するので、不正確です。2シャドーにも見える。ただ両サイドハーフはワイドじゃない。

こちらは詳細は書かず簡潔に。まず高田は前田(現大分)のいた時代はパスは横にしか禁止でロングキックは一切なし、当然ドリブルで相手を交わすことが求められるサッカーで衝撃を与えた。それが3年生チームは飛ばしのパスを使うようになり、プレミアカップ用の1年生主体のチームでのみ、隣へのパス&ドリブル多用となった。しかしU−13の関西リーグ、ヤマトタケルリーグが開催されるようになって、1年生も普通のサッカーにシフトしていったという。高田は位置づけが難しいクラブだ。滋賀のセゾンだったら、結果を一切無視して育成に専念できるだろう。他のも育成で実績を残すクラブがあるからだ。しかし奈良に於いて高田の存在は大きい。結果を無視するわけにもいかないのだろう。そういうわけで、ドリブルは上手いが、普通のサッカーをやっている。しかも滋賀には野洲高校と言う、セゾンと方向性の似ている高校があり、一貫的な指導が可能だ。これに対し、奈良には育英にせよ、一条にせよ、高田のサッカーからは程遠い。高田はU−18も作ったが、レベル的にはまだまだだ。つまりU−15での育成は難しい。しかも奈良は各指導者のサッカーへのこだわりが強く、北部と中部に間での人材のやり取りも少ないらしい。なかなか奈良県サッカーの発展に困難な条件がそろっている。だから大阪や京都に人材が流出するのだろう。

YFについてだが、柳本さんはフットサル施設の経営をされている。だからサルのエッセンスを取り入れたくらぶではないか、と想像したが、実態はまったく違っていた。不入りーランニングが多く、チーム全体でスペースを作っては、そこへ味方を走らせて、生かすやり方。くせは少ないが、基本に忠実。山野さんのカラーなんだろう。今年の高田はドリブルで一人抜けても、ふたり目を抜くだけのタレントはいない、だからカバーが忠実なYF守備網を破れない。むしろYFが支配していた。ただ高田も相手ドリブルに対する守備はいいチームなので、最後の一線は割らせず、スコアレスが続く。そして後半16分、YFの左クロスに大柄な平間君が飛び込み、ヘッドを決めて先制。高田の10番久保君は傑出した技術こそ無かった闘志が素晴らしい。これが高田で10番をもらえる理由だろう。終盤になっても全力でのフォアチャックを怠らず、YF守備陣に自由なパスを許さなかった。高田はFKの放り込みが多くなり、ベンチからも「長いボール」と指示が飛ぶ。かつての高田だったら考えられない指示だ。しかし決定機は奪えず0−1でタイムアップ。YFの順当勝ちだったと思う。山野さんの指導力は相当なものだった。傑出した個性は無いクラブだが、基本が出来ていて、どこへ行っても戦力なりそうな選手がそろっている。1期生だそうなので、実戦経験も豊富だろう。なかなか楽しみな新興チームが確認できた。

奈良のベスト4を観た感想だが、レベルは高い。大阪や京都の街クラブよりも高いのではないか?ただ高校サッカーのレベルが低いのはもったいないと思った。奈良育英も一条も癖があるし、県全体のレベルを上げると言うことは、多様なクラブが生まれ、それにフィットする高校があるということだ。滋賀は野洲と草津東ではまったく方向性が違う。守山北も綾羽もそうだ。特定のチームに頼った強さは県全体の強さではない。そういう意味で奈良は困難を抱えている、と思った。


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T.K. [MAIL]