Rollin' Age

2005年08月14日(日)
 珠玉のベタ(中)

 株主総会は拍子抜けするくらい淡々と終わった。一波乱も何もなく、これにて一件落着・・・となった。強いて言うなら、この不祥事に対する社内処分案がまだ明らかになっていなかった。ただ、責任を取って社長が辞任、とでもなれば、かなり大きなニュースになるけれど、そこまでの騒ぎになることはないとの見方もあり、他紙も追いかけていそうに無い。せいぜい、減給か給料の自主返上に落ち着くだろうとみられていた。その場合はあまりニュースとしての価値もなく、それを発表前につかんでもつかまなくても大差ない。

 一連の取材の中で、何もできないどころか足を引っ張るばかり。ただ邪魔な存在でしかいられなかった。俺にはもう、その小さなニュースを取ってくる以外に、挽回する機会はなかった。企業のニュースを追いかける場合、記者は経営陣の自宅にまで押しかけることが多い。経営の決定権を持つ人に直接、そしてこっそりと聞きたいのだ。その会社の社長と会長は、普段関西にいないことは分かっていたので、他の役員から聞き出すよりほかはない。

 上司は、他にも追っかける懸案があり、もうこの事件を深追いはしない様子だった。こういうふうに動きますと伝えたら、やはり俺の目を見ることはなく、「好きにやればいい」とだけ言った。

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 平日の夜、その役員の自宅に行くと、奥さんらしき人がインターホン越しに「主人はいません」と言う。2回目以降は「事務所のほうに行ってください」と言われるようになる。これはもう、ダメかな、と思う。やはり上司には放って置かれた。後で聞いた話だと、酒の席で「あいつは無駄なことをしている」などとも言われていたらしい。無駄でもなんでもやるよりなかった。

 3度目で本人に会えた。「まだ案を練っている段階で・・・」「いつごろ固まるんですか」「・・・まぁ、来週くらいかな」。その後も、朝6時から家の前で待っていたり、土曜の夜7時から午前1時まで帰りを待ったりもした。朝方の、ほんの片言のやり取りなどから、そろそろか、どんな内容なのか、そういった距離感をつかんでいく。6度目の訪問で、「まぁ上がりなさいよ」と言われた。


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