Rollin' Age

2004年10月29日(金)
 薄っぺらなカード

 206枚。

 きちっと整理もせず机の中に放り投げておいた名刺を、 ふと思い立って数えてみたのだった。記者として働き出しておよそ半年。 これまでに手にしたそれら名刺の数は、多いか少ないかというと、むしろ少ないかもしれない。上司には、最低でも1日1人、知らない人に会え、 名刺を交換しろ、と言われている。この先いったいどれだけの名刺がたまり、自分のものが他人の手に渡ることになるのだろうか。今手元にある他人の名刺と同じ数だけ、自分の名刺が他人のもとにあるかと思うと、不思議な気がする。

 名刺がいくら増えようとも、それは仕事の上での付き合いだ。 暇なときに電話をかけられる相手が増えるわけでもない。これまでほとんど縁の無かった関西で暮らし始めたこともあって、週末に一緒に時間を過ごせるような知り合いはきわめて少ないのだけど、今後もあまり増えなさそうだ。だからこそ、名刺のいらない出会いが欲しいと、思う。

 名刺というのは不思議なもので、持っていると誰かに渡したいと思うときがあるし、こんなものなけりゃいいのにと思うときもある。同じ時期に勤め人になった友人などから、名刺をもらったり、名刺をくれと言われることがある。複雑な気分になる。会社の名前と自分の名前がセットになったそのカードは、君と俺との間に、なんも関係ないじゃないか。そう、胸のうちで思う。

 そんなカードを必要としない、出会いと、関係を、欲しているんだ。





 <「文殊ざつぶん処」、2004年10月のテーマ「出会い」に寄稿しました>


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