あたしと彼のこと
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母から電話があった。
父がおかしいと妹から聞いた、と言うと「もう知っているの?」と驚いて そして「昔から、ああいう人だから」と、簡単に言った。
そんなふうに簡単に済ませていいの?と問うと「じゃもう少し強く言って みるから」と母は言いなおす。最近始まったことじゃないのに強く言った からと言ってどうにかなるの?今までそうしてきて何が変わった? そう聞くと、母は口籠ってしまった。
子供を叱る親みたいな態度の自分。 頼りない母は妹のようだ。変わらないこの関係。子供の頃からずっとそう。
父と母は、共に依存しあってバランスを保っている。なので父をあの状態 にしておくのは、母の生きる意味でもあるようだ。 その問題に母は気付こうとしない。いや、気付かないフリかもしれない。 家族の機能不全はこの夫婦から生まれたものだ。私が母の姉になったのも こういう由縁からのこと。
いろいろと妹の状態を話したあと、私は最後に言った。 お父さんは、自分で怒ったり苛立ったりする本当の理由がわかってなくて もう何年も苦しんでいるよ、お母さんはそれを「ああいう人だから」って 放っておくの?きっとあの人は、これからもずっと苦しみ続けるよ?
うん分かってるんだけどね、という母。いままで何度も聞いたその言葉が またくり返された。なにが分かっているの?分かっているからなんなの? と聞こうとしたけれど、もう話す気力はなくなってしまった。
じゃぁまた連絡するわ、身重の妹をあまり困らせないようにね。 そう言って私は電話を切った。
切ったあと、さっき言った自分の言葉が、沈み込むように頭に響いた。 「自分で怒ったり苛立ったりする本当の理由」「ずっと苦しみ続ける」 まるで自分のことを言っているよう。
本当は、父も母も放っておきたい。知らないフリをして暮らしていけたら どんなに楽なことか。穏やかに生きていけるか。でもそれは出来ない。 そうしてしまうと母も妹さえも見放してしまうようで。出来ない。
コトの現状を彼に伝えた。
こういう事を、家族の事を、彼にたまに話す。 自分がどう思っているのか、どうしたいのか、そういうことを話す。 彼はじっと聞いてくれる、聞き続けてたまにアドバイスしてくれる。 今回は「あんな父に呆れている、妹が気の毒で仕方無い」といったことに 対して「なんだそれは?ほんとに呆れる」と感想のみをいってくれた。
彼に父はいない。いま生きているか死んでいるかもわからない。 子供の頃に離婚したらしい。
こんなふうに、多少づつ父を恨む気持ちがあったもの同士、いまこの場で 一緒になって父というものを呆れているのは、何だか兄妹で頷いている様 な感じだった。
でも、彼のこういうところにも、わたしは魅かれているのかもなぁ そう思ってしまった。
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