本よりの引用

 ゼノサイド 下巻(オースン・スコット・カード著、田中一江訳、ハヤカワSF)のP.111末尾より。

 「お互いを所有しようとせずに人は人を愛することができないものなのだろうか。あるいは、それは人類の遺伝子の奥底に刻みつけられて、けっして捨てられないのだろうか。縄張り意識というものだ。"おれの"妻。"おれの"友だち。"おれの"恋人。聞いたこともない惑星に住む、半分頭のおかしいOCDの天才少女の必死の努力で遮断されようとしている"おれの"腹立たしくも口うるさいコンピュータ人格。ジェインがいなくなって、どうやって生きていけばいいのだろう。」

 人類が引き起こすあらゆる諍いの原因は、ただ所有欲のみにあるのでしょう。
 すべてがすべてを、ありのままに受け入れ、ありのままに感じることが出来るのなら、この世の争いはすべて綺麗に消え去るんでしょう。それは、あるいは人の文化における終焉となるのかもしれないですが。
 つまり、「熱力学の第二法則」の先にある、すべてが平衡状態となる『閑かな世界』ですね。

 「すべては神の所有物である」なんていう宗教家の戯言が、もしも真実のものだとしたなら、僕らはもっと生きやすく、平穏で、和やかに暮らせるのかもしれません。
 それを信じられるほど、世界は友好的ではないのですけれど。
2005年05月21日(土)

日々 / いけだ