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re-invention



 古今東西の教科書に浸る

静大の両角先生に紹介していただいた,東京江東区にある
教科書研究センター附属図書館に一日こもる。
数学だけに限ると,思っていたよりコンパクトだが,
戦前のものから,各社別に教科書がずらりと並ぶ。
両角先生から,
「昭和30年代の必修・選択に分かれたものを見るべき」
というアドバイスを戴かなければ,何を見ていいのやらという
感じだったと思う。

教科書は,時代の影響をそのまま受けているのを感じる。

戦後間もないころの教科書は,
一緒に新しい日本を創っていこうという気概に満ちている。
単元学習によるものは,なるほど批判されるだけのことはあるが,
「家計」の章などは,海外のものはもちろん,
現在の高校の教科書に載っているようなもの。
また巻頭言や,章の扉の言葉は,
中学生を子ども扱いしていない,考えられた言葉が多い。
大人になってから再放送で見た
「ウルトラマンセブン」の最後の一言にも似ていると思った。
また,自分が生まれるより前のこの当時の図で,
今の教科書にもいくつか残っているのを見つけ,驚く。

その後の高度成長時代の夜明けのころのものには,
勢いがある。これからは科学の時代だと謳っているようだ。

1年生の内容で,
「比と割合」の次に「比例・反比例」を学ぶ流れはおもしろい。
速さや濃度の公式を意味もわからず覚えるのではなく,
こうやって並べることで,全部同じものだと思わせるのは,
水道方式で強調し,自分も気に入っている
「一あたりの量×いくつ分=全体量」の発想と同じだ。
そこから比例・反比例を学ぶようにすると,
何を定数・変数にするのかによって,比例にも反比例にもなる
事が見えてくるようでおもしろい。
(今では,なぜ反比例を扱うのかがよくわからなくなっている。)

必修・選択という記述のある3年生の教科書は,
見るべきものが確かにあった。
おそらく8年ぐらい使われていたのではないかと思うが,
(見本本のため,発行年月日がないものが大半であるため)
必修が週3時間,選択が週2時間とのことで,
これだけのボリュームを詰め込めたのだろう。
特に驚いたのは,ほとんど各社とも
最終章に「点の運動と作図」という章があり,
点の軌跡を本格的に扱っているものだった。
奈良の吉田先生に,自分が初めて作図ツールの世界を
手ほどきしていただいた時の内容もたくさんあった。
(それに今頃気がつくのは,恥ずかしい??)
このように,章を横断した内容を,別な視点で統合的に学ぶことを,
今再び選択授業の中で扱えばいいと,強く感じた。
参考に東京書籍と学校図書のものをコピーしてくる。
(1ページ40円は高いか安いか)

光村など,数学では聞いたことがない会社も,
実は数学の教科書を出していたことを知る。
「つわものどもの夢の後」のような場でもあることを感じた。

9時半の開館時刻からあっという間に時間が過ぎ,
13時を回っていた。
食事をしてから,当然午後も,ここに戻る。

海外のものをいくつか見たが,カラフルで大判で慣れないためか,
目がちらちらする。韓国のものが日本に一番近いように思った。
また韓国では,テクノロジーを積極的に活用され始めているとのこと
だったので,いくつか見たが,よくわからなかった。
事前にNaocoの中澤さんに聞いておくべきだったと反省。
欧米のものは,調べている方がいて十分には見れなかった。
カナダ・パーマーセカンダリーで自分が見たものを
再度見ようと思ったが置いてなく,残念。

また自分が考えている図形と関数を統合的に学ぶものは,
見方が甘かったかもしれないが,
海外の教科書の中でも見つけることはできなかった。
海外教科書でのテクノロジー活用は,
「今ある学習を,テクノロジーを使うと簡単・便利ですよ」
というもののようだ。

自分は,作図ツールを前提として,
新たな学びの視点を創造できるといい。
こうやって調べていくと,自分の位置が少しずつ見えてくる。
こんな時間を戴いたことに感謝。

閉館間際は,高校の教科書と,現在の各社の指導書,
さらには道徳の副読本を斜め読み。
(各社の指導書は現行本とその前の本のみで,
 それ以前の古いものを置いてないのはなぜだろう?)

教科書はそう高価ではないので,学校でも買ってもらえるが,
指導書はなかなか手に入らない。
(自分で買えばいいのだろうが・・・)
啓林館の指導書の通論(学年のものとは別冊)は,
数学教育の歴史と今がコンパクトにまとまったいい内容だ。
これから教師を目指す大学生はもちろん,
自分のような自己流で授業をしてきた人にはお奨めの一冊。
東京書籍は,学年とは別に選択・課題学習用の指導書が出ていた。
これも,手元にあると幅が広がりそうだ。
市の教育センターにこれらは置いてあるのか?調べてみよう。

充実したが,思っていた以上に疲れた一日。
横浜のホテルに戻り食事をし,早々に就寝。


2004年02月17日(火)
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