それは10月、まだ寒波の冬がやってくる前、暖冬と予想されていたにしろ、一応秋だよ。だからまぁ寒いって話デスよ。なんだか知らないけど、わしの家のふたがあいていたんだ。出てもいいよ、と言わんばかりに。だから出た。 あのね、わしの家は3階建てで、その家が高さ40センチはあろうかの台の上に乗っているの。家から自分で出るってことは、約1メートルの高さから落ちるってことなの。すごいでしょ、落ちたの、わし。 それでね、わしらのいる居間の戸が開いていたんだ。開いているんだもん、出るでしょ。だから出た。 ツルツルすべる廊下を歩いてね、なんだか変なところに着いたんだ。ガラーンとしててひゃっこくて、隠れる場所がないところなの。そこは段差があって、入ったはいいけど自力で出られなくなっちゃってね、どうにもしかたないからしばらくずっと長い間そこにいるしかなくなっちゃったの。まぁ…半日? ってゆーかさ、そこお風呂場なんだけど、夕方になってロズがお風呂を入れにきたんだ。ねぇ、そこで気づくよね、ふつう。だってわし、そこかしこにうんちやおしっこしてんだよ。なのにお風呂が沸くまで気づかなかったんだよ! なにそれ?! こっちはひんやりしたタイルの上で半日もいたのに。 でもね、おかしかった。お風呂を見にきたロズと目があってね、すごいびびってた。「え? ジャン? え? 誰?」って、ジャンじゃなきゃ誰なんだよ、って話デスよ。 うん、湯船の近くがあったかくなってたから、それまで居たところから湯船の近くまで移動してたんだ。 秋でよかったって話デスよ。この冬の寒さだったら死んでる。
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