「折角の十五夜だと言うのに、雨で月が見えんな」 「まあまあ、そう拗ねるなよ。月の兎だってそっとしといて欲しい時もあるだろうしさ。 代わりといっちゃ何だけど、ほら、今夜の夜食は月見蕎麦だぜ。 おぼろ昆布で雲もつけてやろうな」 「……(ぐにぐに)」 「うわ、せっかく卵入れてやったのに、一番最初に掻き混ぜて崩しやがった」 「ひとの食べ方に文句をつけるな」 「あああ、単なる卵蕎麦になっちまった…… こんなんだったら、目玉焼きにしてやれば良かったな。 月見ハンバーグみたいに、黄身が綺麗に見えるように片面焼きにしてさ」 「片面焼きは別名sunny-side upというのだろう。 それを考えると『月見』と言うより『太陽』の方が合うのではないか」 「……料理できない癖にそんな事ばっか詳しいんだから参るぜ」 「ふん」 「……まあ、気を取り直して、今夜はゆっくり酒でも飲もうぜ。 ちゃんと団子も月餅も里芋も枝豆も用意したし……」 「……(もぐもぐ)」 「一人で先に食うなよ!!」 「ぼーっとしているお前が悪い」 「へーへー、そうですよ乾杯してから食おうなんて甘っちょろい事考えてた俺が悪いんですよ……全く、こんな細っこい見た目の割りに大飯喰らいで、おまけに手癖も口も悪いんだもんな……」 「ふん、月も出ていないのによく吼える負け犬だ。 折角月見に良く合う酒を取り寄せてやったと言うのに、少々つまみ食いをした程度でがたがた騒ぐな」 「えっ、月見に合う酒?マジで?」 「うむ。それも、お前の懐具合では滅多に飲む事などできぬであろう高級酒だ」 「すげえ、流石ガルデン!『月見など下らん』って言ってた癖に、ニクい事してくれるじゃねえか! で、どんな酒なんだ?」 「これだ」 「………………」 「………………」 「………………なんでコレなんだ?」 「いや……月と言えば兎、兎と言えば人参だと思って……」 「……お前、狙ってやってるのか?それとも本気で何も考えないでやってるのか?」 「何?どういう事だ」 「若い男に……しかも恋人の俺にこんなもん飲ませようとするって事の意味だよ」 「……ぐ」 「秋の夜は長いって言うしな……」 「あ……ぅ」 「今夜はお月さんより良いものをたっぷり拝めそうだな」 ――――― 私信: シュテルに誘惑された……?!「さあ、わたしと御主人様の愛のメモリーを遠慮なく御覧下さい!ほら!早く!!」みたいな感じでしょうか。(変態コートマンか) 感想も有難う御座いますv漫画ほど露骨な主従ラブラブ描写がTV版に無い分、贔屓目と重箱の隅突付きと妄想と思い込みで成り立っている下僕酷命館ですが、これからもどうぞ宜しくお願い致します。 ――――― 今週末には休みになるので、超一番乗りで頂いたメールのお返事と共に、正式なアレ告知ページを作るべく頑張ろうと思います。
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