GARTERGUNS’雑記帳

TALK-G【MAILHOME

お仕舞いの日
2003年12月31日(水)

大晦日ですね!!
蕎麦は食いましたか?紅白は見ましたか?!
個人的には布施明の「君は薔薇より美しい」がブッ千切りで一番だったと思うTALK-Gですこんばんは。

―――――


「ガルデン、お蕎麦まだー?」
「ああ、今そちらに持っていく」
「わーい!もうお腹ぺこぺこ!」
「何だ、そんなに腹が減っていたのなら、先に何か軽くつまんでおいたら良かったのに」
「えー、そんな事したらお蕎麦が美味しく食べられなくなっちゃうじゃない。あたしあんまり沢山御飯食べられないし」
「………………」
「……なんで黙ってるのよ」
「い、いや……。
 ………ほら、早く席に着け」
「はーい。
 ……わあ、美味しそう!!海老天もおっきいvv
 これが、お店で買ってきたものじゃないって言うのが信じられないわ」
「天麩羅もつゆも正真正銘の自家製だ」
「お蕎麦はシュテルが打ったんでしょ?」
「ああ。しかしあいつも一体どうして、蕎麦作りなんかに嵌ってしまったのか」
「良いじゃない。シュテルのお蕎麦、美味しいから好きよ。
 毎日でも食べられるくらい」
「……その台詞を、本人の前で言うなよ」
「え?どうして?」」
「……伯父貴が似たような事を言って、本当に一週間毎食蕎麦尽くしにされた」
「い、一週間毎食……」
「一度こうと決めたら、周りが見えなくなるのがあいつの欠点だな」
「(……その性格形成は、ガルデンや伯父様にも原因があるんじゃないかしら……)」
「どうした、パティ?」
「う、ううん、何でもないわよ。
 さ、折角のお蕎麦だし、伸びちゃわないうちに食べましょ!」
「ああ、そうだな。
 ……それでは、頂きます」
「いただきまーす!」






「アデュー、これは何だ?」
「ああ、年越し蕎麦って言ってさ。下の部屋の奴がお裾分けしてくれたんだ」
「トシコシソバ……」
「縁起物らしいぜ。大晦日にこれを食うと、細く長く達者に暮らせるんだとさ」
「……こんな科学の発達した時代に、随分と迷信深い習慣が残っているのだな」
「毎日毎日電波受信してるお前には、年越し蕎麦も迷信だとか何だとか言われたくないと思うぜ」
「失礼な。言っているだろう、私は電波受信などしていない。
 雷を呼び、その力を纏う事は出来たが……。
 それもこの世界にミストルーンが満ちていた時代の事で、随分昔の話になる。そもそもあの時代は、大気に魔力だけでなく、精霊力も満ちていて……」
「わかった、判ったから。その話はまた後で聞くから。な?
 伸びないうちに蕎麦食おうぜ。
 ほら、お前の箸」
「ん……」
「それじゃ、頂きまーす」
「おかわり」
「早っ?!お、お前、どんな食い方してんだ!
 ちゃんと噛んで食えよ!!」
「ソバは噛んで食うものではない、喉で食うものだ、と嘗ての知り合いが言っていた」
「いや、そういう問題じゃないだろ。つうかお前、何気に蕎麦の通なんだな。年越し蕎麦も知らない癖に」
「ふん、私を一体幾つだと思っている。流行り廃りの激しい『習慣』は兎も角、長い時代の間に完成された『作法』については吝かではない。
 ……おかわり!」
「あーあー、判ったって。蕎麦はもう無いから、何か適当に作ってやるよ。
 ……あ、先に言っとくけど、食い終わったら風呂に入って早く寝ろよ。
 いつもみたいに夜更かしして、映画とか見てるなよ」
「……何故だ?」
「何故って……」
「今夜は見たい映画が有ったのに」
「……あのなあ、ガルデン。昨日言っただろ?明日はバイト先の人と初詣に行かなきゃいけないから、お前も一緒に来い、って……」
「初詣……。
 ……そんな、騒がしい中に入るのは嫌だ」
「そんな事言わずにさ。行くだけ行ってみようぜ、面白いから」
「嫌なものは嫌だ……お前独りで行けば良い、私は此処に居る」
「ガルデン……俺は、新年早々、お前を独りにしたくないんだよ」
「――――――――――」
「一緒に居ようぜ、休みの…それも一年の最初くらい。
 どうしても嫌だって言うんなら、途中で抜け出しても良いからさ」
「…………」
「……ガルデン?何処行くんだよ」
「……風呂に入ってくる」
「じゃあ……」
「勘違いするな。
 ……私は、お前の傍に居ると『約束』した。それを違えたくないだけだ」

バタン

「………可愛い事言ってくれるぜ」






「シュテルー」
「はい、ガルデン様」
「おふろ、出てもいいか?」
「?
 どうかなさったのですか?急にそんな事を仰るとは……。
 今夜は寒う御座います、もっと温まらなくては風邪を引いてしまわれますよ」
「だって、あのおもちゃを持ってくるの、わすれたのだ……」
「……ああ、あの、小さなブリキの船の……。
 承知致しました、己が持ってまいりましょう」
「行ってくれるか?」
「無論です。すぐに取って参りましょう。
 ですからガルデン様、その間、しっかりと温まっていて下さいませ」
「ん」

ザバー

「……シュテルが出て行ったら、おふろのお湯がきゅうに少なくなったのだ……
 たしておかなきゃ」



「……ガルデン様、御所望の玩具はこの赤い船で宜しかったでしょうか」
「あっ、うん!それだ!!」
「遊びに夢中になって、のぼせない様にお気をつけて下さいませ」
「うん!ありがとう、シュテル。
 ……シュテルも、そんな所に立っていないで、もういちど温まるのだ。かぜを引いてしまうぞ」
「いえ、己は………」
「いいから、ほら」
「そ、それでは失礼して……」

ザバー

「………やっぱり出てけ!せっかくお湯をたしたのに、ぜんぶこぼれてしまったではないか!!」
「そ、そんな御無体な!!」
「あ、でも、いま出ていったら、またお湯が少なくなってしまうのだ……
 ……しかたない、わたしが上がるまでおふろに入っていろ!」
「は、はい、申し訳御座いません」



「……シュテル」
「はい……」
「いま、なにか聞こえなかったか?」
「『なにか』?……ああ、これは、除夜の鐘です、ガルデン様」
「じょやのかね?」
「ある宗派のものが、自らの寺院に有る鐘をついているのです。
 様々な願いや祈りを込め、去る年を惜しみ、行く年を迎える為に、108回鐘をつくそうですが」
「108かい!ずいぶん多いのだな。……あ、みっつめ」
「一番近い寺院からも、普通の者には、到底聞こえる事の無い距離がある筈ですが……
 ガルデン様は、お耳も宜しいのですね」
「ふふん、いいだろう。……よっつめ。……わたしはいろいろとトクベツなのだ。
 この耳だって、とおくの音も、おまえの声も、よく聞こえるトクベツセイなのだからな」
「……有り難い事です」
「五つめ。……じゃあシュテル、いつもは100かぞえてからおふろを出るけれど、今日はこのかねがなりおわったら、出ることにするぞ」
「……のぼせて」
「むっつめ」
「……しまいませんか」
「のぼせるものか。のぼせそうになったら、シュテルのフルムのま法でひやしてもらう」
「……責任重大で御座いますね」
「七つめ。……いやか?」
「いいえ。……判りました、ガルデン様。このシュテルにお任せ下さい」
「ん」



「(―――――ああ、このまま)」
「きゅうじゅうろく」
「(……鐘が鳴り止まなければ良いのに……)」
「きゅうじゅうなな……なんだ、シュテル、おまえのほうがのぼせているみたいだぞ」






「……今年も、もう終わりで御座いますね……ガルデン様」
「そうだな、イドロよ。
 何かと忙しないが、実りある一年であったよ」
「来年も、貴方様にとって、良い一年であります様に」
「ほう、祈りか。誰に祈る?」
「神でも仏でもなく、貴方様に」
「ふふ、この罰当たりめが」
「罪科を背負ったのはお互い様、で御座いましょう」
「全くだ。……ああ、最後の鐘が終わったな」
「ええ、その様ですね。
 ……明けましておめでとう御座います、ガルデン様」
「ああ。……お年玉でもやろうか?」
「まあ、何を仰るんですか。私は貴方様より年上で御座いますのに」
「そうやって膨れるところは、年頃の娘と変わらんな」
「からかわないで下さいませ」
「そんなに怒るな」
「怒ってなどいません」
「本当か?目元に皺がよっているぞ」
「えっっ」
「……冗談だ」
「〜〜〜〜〜」
「そう睨むな。……ほら、貰える物は素直に貰っておけ」
「……有難う御座います」
「ああ。……さて、それでは初詣にでも行くか」
「神も仏も信じていらっしゃらないのに?」
「だからこそさ。この国の節操の無い宗教観と、それに被さる祭り好きの昂揚感が、私は嫌いではないのでな。
 ほら、支度をしろ。外は雪だ、しっかりと防寒していけ」
「は、はい」
「それと、帰りに小物屋に寄るぞ。
 ぽち袋を買わねばならん」
「あの、和装の小物屋ですか?」
「ああ。あすこの店には、一つ一つ手で作ったぽち袋が売ってある。和紙や千代紙を巧く使っていてな。若い娘が可愛いと喜びそうなつくりさ」
「何故、そんなものを……?
 ガルデン様が御祝儀やお車代等を入れる為にいつもお持ちになっているのは、余り飾り気の無いものでしたのに。
 私に先程下さった『お年玉』も……」
「なに、松の内の終わりに、甥が恋人……いや、娘……それとも妻だったかな?まあとにかく、若い女を連れて訪ねてくるのでな。
 聞けばその娘は未だ学生だと言うし、以前見かけたその姿も如何にも幼かった。
 そんな子に飾り気の無い無愛想なぽち袋では、少々都合が悪かろう」
「ああ、成程………」
「……お前にも一つ、新しい簪(かんざし)が要るし」
「え?」
「いや……。
 ……さあ、そろそろ行くか。表に車も来た様だ」
「は、はい」
「襟巻きを忘れるなよ」
「はい」
「ああ、それとな」
「はい、何でしょうか」
「―――今年も、宜しく頼む」
「―――――
 ………ええ、あなた」





―――――

纏めるに、シュテル大躍進の年だった、と……(私の中で)



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