GARTERGUNS’雑記帳

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フライングクリスマス小話第二話
2003年11月16日(日)

アデュガルです。
14日の雑記の続きです。

―――――

「姿を現さないでくれって……どういう事だよ」
「言った通りの意味だ」
「俺、何かしたか?お前に避けられるような事……」
「そうではない。お前は何もしていない。
 ただ、クリスマスの日、一日だけで良いから、私の前に姿を見せないで欲しいのだ」
「………」
「……約束だからな。私の願いを聞いてくれ」
「あっ、ちょっと……おい!」



「……そんな事が、ちょっと前にあってさ」
「でもあんたら、今は一緒に暮らしてるんやろ?
 そしたら明日は、丸一日ガルデンから離れとくんか?」
「いや、あいつがどうしてそんな事言ったのか知りたいからな。
 こっそり様子を見てみようと思うんだ」
「まるでストーカーやな」
「仕方ないだろ、どれだけ理由聞いても、あいつ言わないし」
「放っといたら良いやん。ガルデンにも事情があるんやろ」
「いーや、放っとけない!!あいつを一人にしたら危ないし」
「そうか?まあ、わてには関係ないからええけど……」
「む、関係ないって言い方は無いだろ」
「だって関係ないやん。痴話喧嘩は犬も食わん言うしなあ。
 それにわては、商売で忙しいんや。
 年始年末は何かとお金が要るし、クリスマスには孤児院の子ぉらに、ちっとは良いもん食べさしてやりたいしなあ」
「あっ……そうか。ごめん、引き止めて」
「いや、そんな恐縮せんでもええがな。わてが商売で急がしいんはいつもの事やろ。
 ……でも、そうやな。わてでも、あんたの役に立てる事はあるで」
「え?な、何だそれ」
「ジャーン!特製『インビジブル・コート』!!これ着たら、あんたの姿は透けて見えんようになる。尾行やらには最適でっせ、お客さん!」
「おおっ!!」
「しかもデザインも中々かっこええやろ。あんた背ぇ高いからよう似合うで」
「……見えなくなるんだったら、デザインも何も関係ないと思うけど」
「細かい事気にしな。さ、どや?今ならクリスマス特価、お安うしときまっせ!!」



「結局買っちまった………。
 ま、良いか。
 これであいつの前に『姿を見せない』で居られるし、……あの孤児院のケーキ代の足しになるんだったら」
「何をにやにやしている?」
「うわっ、が、ガルデン!!」
「……何を驚く事がある」
「い、いや、いきなり声掛けられてびっくりしただけだよ」
「そうか?……まあ良い。
 アデュー、くれぐれも言っておくが、明日は……」
「判ってるって。お前の前に、『姿を見せなきゃ良い』んだろ」
「そうだ」
「約束は守るって。大丈夫だよ」
「そうだな、お前は騎士であるのだから、約束は守って当然だ」
「……ハハハ……。
 ……えーと、ガルデン、飯は?」
「外で食べてきた」
「風呂は?」
「さっき入った」
「じゃ、じゃあ……」
「……おい、何をする気だ」
「いや、明日一日、お前の傍には居られない訳だし、今の内にと思って……」
「離せ、アデュー。明日の朝は早くから出掛けねばならんのだ。
 それにもう眠い。今夜はお前と同衾する気にはなれん」
「そんなつれない事言うなよ」
「くどい!」
「あっ、お、おい!……ちょっと、悪かったって!寝室に引き篭もらなくても……うわ、鍵まで掛けやがった!
 おいガルデン、この寒いのに俺に床で寝ろって言うのかよ!!」
「身から出た錆だ。それにもうすぐ12時、日付が変わる。
 約束は守ってもらうからな」
「そ、そんな……あんまりだぜ、いくら何でも」
「普段あれだけベタベタくっついてきておきながら、まだ不満か?」
「ああ、不満だね。今みたいに一緒に暮らすだけじゃなくて、四六時中一緒に居たい位だ」
「……………」
「おい、無視かよ!おーい、せめて毛布だけでも……!!」




「……あれ、俺……何時の間に寝てたんだろ……。
 うう、床の上で寝たもんだから体の節々が……っくし!」
(……そう言えば俺、このコート着て寝てたんだな……。俺には俺の姿が見えてるんだけど、本当にこれ、透けてるんだろうか)
「………」
(あ、ガルデン……寝室から出てきてるし。何だ、きょろきょろして……毛布なんか持って……)
「………」
(……ひょっとしてガルデン、俺の姿が見えてないのか?)
「……あいつは何処に行ったのだ」
(……お前の足元に寝転がって、絶好のローアングルで見上げてるんだけど……)
「……フン」
(あ、も、毛布置いてってくれよ!そんな拗ねたような顔して寝室に戻らないでさあ……!!)

―――――バタン

「……ああ……」
(……このコートの能力がホンモノだってのは判ったけど……)
「さ、寒い……。
 こんなんだったら素直にコート脱いで、抱きついたら良かったかも……」
(……いやいや、騎士たるもの、約束を違えてはならないしな。
 此処はじっと我慢して……!)
「……それにしても」
(……さっきのきょろきょろしてる時の困ったみたいな顔と、その後の拗ねたみたいな顔、可愛かったなあ……ちょっと唇尖らせて、眉寄せてる所なんか、あの時の表情とそっくり……)
「…………………」



「………あいつは何処に行ったのだ。出て行くなら出て行くで、メモくらい残していけば良いものを……」
(…………)
「……フン、まあ構わんがな。今日一日、あいつが居ないというのは僥倖だ。
 早速出かけなくては……」

―――――ガチャガチャ、ギッ……バタン。ガチャン。

―――――ガチャガチャ、ギッ。

「……財布を忘れるところだった……」

―――――バタン。……ガチャン。

(……俺に言った通り朝早くに起きたあいつは、寝室から出てきて俺の姿が「見えない」事を知ると、開け放しのドアを乱暴に蹴って閉め、それからよろよろと洗面所で顔を洗ったもののタオルが何処にしまってあるのか判らず、仕方なしに濡れた顔をパジャマの袖でごしごし拭いて、ありあわせのもので朝食をとった後、服を着替え、何処か機嫌悪そうに呟いた後、そそくさと家を出て行きました。
俺もあいつの不機嫌そうな顔を思い出してニヤニヤしてないで、早速追いかけようと思います……以上、解説終わり)
「……て言うか俺、誰に解説してんだろ……。まあ良いや、行ってきまーす」

―――――

続く。(何時まで引っ張る気か)




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