2015年05月03日(日) |
地域の平均所得が増えると無歯顎は減少する |
日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトによると・・・
個人所得だけでなく地域平均所得と無歯顎との関連があると発表した。 この調査は、埼玉県立大学などとの共同研究によるもので、65歳以上の高齢者、79,563名を対象とした。
近年、口の健康を含む全身の健康における、個人および地域間の格差が注目されている。 所得の低い人々では高い人々に比べ口腔の健康が悪いというような個人の特性との関連と同時に、地域環境からの影響も受けている可能性が指摘されている。
研究グループは、個人と地域の所得、および無歯顎に着目し、個人所得が同じレベルの人でも、裕福な地域に住む人では貧しい地域に住む人よりも口の健康状態が良いのかを検証した。
『所得の高い地域に住むほど、無歯顎になるリスクが低下』
この調査は、2010〜2012年にかけて、全国12都道府県31市町村の65歳以上の高齢者169,215名を対象に実施。 郵送調査にて行われ、回収率は全体の66.3%だったという。 その中から、歯の本数や所得に関する情報が得られた対象者79,563名のデータを使用し、無歯顎の有無と個人及び地域所得との関連を同時に検討するマルチレベル分析という統計手法を用いて検証した。
結果として、性別、年齢、婚姻状態、教育歴、及び歯科医院密度を調整した上で、個人所得と地域所得のどちらも高いほど、無歯顎になるリスクが減少する傾向が見られたという。 具体的には、個人所得および地域平均所得が100万円高くなると、無歯顎になるリスクが個人所得では1割、地域所得では6割減った。 また、所得と無歯顎との関連についての男女差は、女性が男性に比べて、より地域所得が高い地域に住むほど、無歯顎になるリスクが統計学的有意に小さくなることが示された。
このことから、個人の所得が同じレベルの人でも地域所得が高い地域に暮らす人では無歯顎のリスクが低く、特に女性では、地域所得の影響をより強く受けていることが明らかとなったという。 研究グループは今後、無歯顎を防ぐためには個人へのアプローチだけでなく、地域経済水準の向上や地域に暮らすすべての人に対する公衆衛生的なアプローチによって、健康な地域づくりを進める必要性が示唆されたとしている。
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