TOM's Diary
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S氏は高層ビルの展望台に居た。 下を見るがあまり怖くない。 なぜなら、すぐ下に雲がかかっていてあまり高さを感じないからだ。 しかし、雲の上にビルの最上階があると言うことは相当な高さだと思う。 なぜこんなところに来たのか思い出せない。 きっとだれかの陰謀に違いないと思ったその瞬間、目の前の窓が開いた。
やはり、だれかがS氏をワナにはめようとしたのだ。 勝手に窓が開くはずもない。
激しい強風がビルの中から外に向かって吹き始めた。外の気圧が相当低いのだろう。 S氏は落下する直前に必死の思いで窓枠にしがみついた。 黒い帽子に黒いサングラス、黒のスーツに黒いワイシャツ、黒いネクタイ、とにかく全身黒づくしの男が二人走りよって来る。 なんとか奴らから逃げなくてはと思うが、逃げ場がない。
S氏は奴らに突き飛ばされた。
気がつくとS氏は宙を舞っていた。 黒づくしの男からの逃れ、自らの自由を得たのだった。 どんどん眼下に見える自分の街が近づいてくる。 S氏は自分が街に降り立つ瞬間を想像した。
S氏は我に返った。 パニックになった。 激しくアスファルトに叩きつけられる自分の姿を想像したからだ。 いったいなぜこんなことになってしまったのだろう? どうして自分は後先考えずに飛び出してしまったのだろう?
S氏は必死で冷静になろうと考えた。 まずは、少しでも空気抵抗を大きくして落下速度を落とそう。 両手足を大きく広げなんとか抵抗を大きくした。 あまり効果はないようだが、気分的には少し落ち着いた。 深呼吸をしたかったが、ものすごい風圧で息もまともにできない。
酸素が足りない状況でなんとかもっとスピードを落とす方法を考えなくては。 S氏は自分がリュックサックを背負っていることに気がついた。 何が入っているか検討も付かなかったが、とりあえず中を覗いてみようとした。 この風圧のなかなかなかうまくいかなかったが、なんとか中身をひっぱりだすと 中から出てきたのは戸板だった。
S氏は台風のときの要領で戸板に乗って滑空を始めた。 台風の時と違って無風であったためコントロールは容易だった。 S氏は上空から自分の家を見つけるとそちらに向かって旋回しながら 降りていった。 S氏は無事に家にたどり着くことが出来た。
しかし、どうしてリュックサックに戸板が入っていたのだろう? S氏はとても不思議であったが、とりあえず戸板を物置に戻しておいた。
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