TOM's Diary
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2006年02月21日(火) S氏の株式投資

S氏は株をはじめた。
株をはじめたと言っても、株で大もうけをしようとか言うのではない。
S氏の同僚が株を始め、株価を見ては一喜一憂している姿をみて
みんなが株式投資を始めだしたのだった。S氏は最初あまり興味を
持っていなかったのだが、自分ならもっと儲けられるのになぁと
思って試しに株式投資を始めたのだった。

S氏は株式投資を始めるに当たって、最初の1ヶ月間は実際の株価の
動きを見るだけにして、実際に株式を買うことはしなかった。
その間に、株価の変動がどのような要因で発生するのかを概ね把握した。
次の1ヶ月は、株価の変動要素となる事柄についての調査を始めた。
次の1ヶ月はそれらの要素の変動をコンピュータに取り込み、常時
監視できるようなシステム作りに没頭した。

その結果、S氏のコンピュータシステムは株式投資を始めるに当たって
調査を行った3ヶ月間のデータを打ち込みシュミレーションすると、
値上がりしそうな株を確実に買い、値下がりしそうな株を確実に売り、
シュミレーション上では毎月元本が10倍ずつ増えていき、3ヶ月通産
では10倍×10倍×10倍で1000倍にも膨れ上がった。

S氏はそのシステムを本稼動させることにした。
最初の1ヶ月はS氏はシステムが正常に稼動していることを確認して
いたが、まったく問題なく、予想以上に資金を増やすことに成功していた。
3ヶ月目にはシミュレーションどおり1000倍に資金は増えており
金儲けをするつもりのなかったS氏的には十分満足いく結果であった。

S氏はここでシステムを停止した。
システムを停止するに当たっては、自動的に所有している株式を売却
するようになっていた。

翌日S氏は新聞1面の見出しを見ておどろいた。
「株式市場始まって以来の株価大暴落。何者かが大量売り注文」

S氏はあわてて新聞を隠した。
新聞を隠したところで事実は消えないことに気が付いたS氏は、
すぐに新聞を取り出すと、押入れに隠れた。押入れに隠れても
なんの解決にはならないと判っていながらも、とりあえず
落ち着ける場所に隠れたかった。
見つかったら逮捕されちゃうのかなぁ。
牢屋に入れられちゃうのかなぁ。
そう思うとS氏はますます押し入れの奥に逃げ込んでいった。

数日後S氏はだれも逮捕しに来ないと判ると、恐る恐る、この
システムでいくら儲かったのか確認した。
よ〜く見ると、システムは設定ミスでネットにはつながっておらず、
シミュレーションデータ上で動いていただけであった。
しかも、株価大暴落は、某大手証券会社が入力ミスで大量の売り
注文をだしただけであったことがその日の夕刊に載っていた。

そもそも、たった3ヶ月分のデータでそんな簡単に金儲けができる
訳がなく、また、後で判ったことだが、その後の3ヶ月のデータを
使ってS氏がシミュレーションしたところ、実際にシステムがネット
につながっていれば、S氏はあっと言う間に破産していたはずだった
ことがわかった。

S氏は金輪際、株式投資には手を出さないことを心に決めるのであった。


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