TOM's Diary
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S氏はいつものように会社に行こうと玄関を開けた。 そのとたん、痛いほど冷たい空気がS氏を包み込む。 それと同時に強烈な朝日がS氏の目をくらませた。
今日もとても良い天気だ、と思いながらS氏は外に出た。 空を見上げると雲ひとつ無い澄んだ青空が広がり、 遠くには普段なかなか見られない山々がくっきりと見えていた。
S氏はリモコンのボタンを押して重たい門を開けて通りにでようとした。 そのとたん黒塗りの高級車が滑り込むようにS氏の前に止まった。 S氏はびっくりして門を閉じるボタンを押して敷地内に戻った。
無意識の行動だったが、S氏は思った。 別に戻る必要はないじゃないか。 たまたま、目の前に止まっただけかもしれないし。 でも、なにか理由があって無意識に敷地内に戻ったのかも知れない。
S氏は念のため、いつもと違うルートで会社に行くことにした。 S氏は物置まで行き、大型の凧を取り出した。 今日のように風が無く、寒い日に凧で通勤するのはとても大変なのだが、 このすばらしい青空を凧で飛ぶのも悪くは無いと思いながらS氏は 空に舞い上がった。
S氏が仕事を終えて会社を出ると、外は雪が降っていた。 S氏は凧に雪が付くと重量が増して揚力が十分に得られなくなるため 凧で帰ることは危険と判断し、いつもどおりに帰ることにした。
家の前に近づくと、朝の黒塗りの高級車がまだ止まっていた。 離れた場所から観察すると、車の周りに怪しい黒服の男が数人、 微動だにせず立っていた。この寒い中ご苦労なことである。
S氏はポッケからリモコンを取り出すと、どこでも自動ドアを 操作し、家の中に入った。
S氏は黒服の男たちのために、門のところにある、ポーチライトを 遠赤外線モードで灯してやり、黒服の男たちを温めてやった。
数分後、黒服の男たちはあまりの暑さに全身火膨れになって バタバタと倒れていった。 しかし、そんなことになっているとは知らないS氏は今日も 人様のために、ひとつ良いことができたことを感謝するのであった。
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