TOM's Diary
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2005年09月06日(火) 陥没

S氏は思いっきり伸びをした。
時計を見ると、もう、夜遅い時間になっていた。
ついさっき終業時間のベルがなったばかりだったような気がするのだが
仕事に集中しすぎて時間の経過を忘れていたようだ。

S氏のフロアは各自のデスクが胸の高さほどのパーティションで区切ら
れている。クビを伸ばしてパーティション越しにあたりを見回しても
もうだれもいない。自分のデスクの周りだけが明るく、遠くの方で非常
口の緑色のランプがわびしく輝いている以外は静まり返っていた。

伸びをした両手を頭の後ろに組んで、そろそろ帰り支度を始めようと
思った。帰り支度と言っても会社支給の作業服代わりのポロシャツを
私服に着替えるだけである。私服のシャツをかけてあるハンガーの方
に向き直りながら組んだ手を解きほどこうとしたそのとき、S氏は自分
の後頭部が陥没していることに気がついた。

S氏は恐る恐る指先を後頭部の陥没しているところに突っ込んでみた。

穴はどこまでも続いている。
S氏は人差し指を入れられるだけ奥まで突っ込んだ。
指先を動かすが底には触れなかった。
さらに指を突っ込もうとすると手がすっぽりと入った。
奥はまだ深い。
どんどん突っ込んでいくと肩まで入ってしまった。
S氏は自分の姿を想像しながらも、さらに突き進んだ。
S氏はもう片方の腕も押し込み肩を交互に動かしながら突き進んだ。
どうにもこうにも埒があかなくなってしまった。
これ以上、進むことも出来ず、戻ることも出来なくなったのだ。
自分の姿を想像したS氏は、とてもこのままでは帰れないと思い、
ますます、もがき苦しむのだった。

「なにやってるんですか?」

突然、守衛さんの声が聞こえた。
我に返ったS氏はボタンをかけたまま脱ごうとして頭に引っ掛ったポロ
シャツを必死で脱ごうとしていたのだった。

S氏は守衛さんに助けてもらってようやくポロシャツを脱ぎ終えたのだった。


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