Leaflets of the Rikyu Rat
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2005年06月24日(金) 明日のことは誰にも分からない。明後日なんてもっと分からない。


 僕と彼の関係はとても微妙だ。
 週に四回、五回と会っているし、傍から見れば恋人のように見えるだろう。
 けれど、実際は恋人とか友達とか、そんなカテゴライズできる関係でも無い。
 今の関係が何時までも続くのか、あるいは進展するのか、それともすぐに終わってしまうのか、それすらも分からない。
 僕は明瞭な関係を理想としてはいるけれど、混沌としていればしていたで、その混沌の中で生きて行くこともできるのだと感じた。

 彼は酷く奥手で小心ではあったけれど、その実は一言で言えば「やりまくり」なお兄さんだった。
 暇だからハッテン場へ行くのだと言う。
 “百人斬り”なんて遥か昔に達成してしまったらしい。
 流石モテ筋な顔、髪型、体型、年齢。
 体だけの関係なんて簡単なものだと言う。
 しかし心を開くのには長い長い時間を要するようであった。

 体型だけは完璧な体育会系である割に、性格は極端に文系的だった。
 確かに、なかなか独特な価値観が頭の中を渦巻いていた。
 僕はそれを誘導的に聞き出し、彼の世界を言語の世界に構築する。
 僕も極端に理屈っぽくなりながら、彼の世界を吟味し、己と比較する。

 おそらく彼は僕に対して性的な魅力をそれほど感じていないだろう、ということは容易に読み取れた。
 僕はそういうことは、人と付き合う上でとても大切だと思っているから、
 彼といることにいまいち自信が持てずにいるのである。
 しかし彼は僕と会って話をしたいのだと言う。
 安心して話ができるのだと言う。
 
 それで僕は、恋人としてではなく、
 恋人では無い何か、まあ敢えて言えば一人の人間として彼との時間を過ごすことにした。
 だから僕は「恋人」に対して求めるものを彼には求めないし、わがままも言わない。
 ある時は距離を置き、ある時は接近する。

 そう、彼には友達がいないのだと言う。
 携帯のメモリには二件(母親と、バイト先)しか入っていないのだ。
 僕のアドレスは記憶しているし、普段は「返信」しているだけなので登録する必要も無いとのことだ。
 友達は特に欲しくないらしい。
 恋人に親友性を求めるのだと言う。
 もし恋人ができたら、そのひとさえいればいいのだと言う。
 
 それは恋愛において相互補完性を追及する僕にとってはとても素敵な考えのように聞こえた。
 と同時に、(まさか携帯のメモリが二件だとか、)本当にそんな人間がいるのだと驚きもした。
 
 彼は時間だけはあるのだと言う。(求職中であるからだ。)
 そんな彼と過ごしていると、なかなか楽しいのであっという間に時間は過ぎるのであるが、
 あっという間であるにも関わらず、妙にゆったりとした時間を過ごすことができる。 
 そんな彼のゆったりとした時間の流れに我が身を任せていると、
 自分がどこに流れ着くのか全くもって予想が付かなくなる。

 今の僕と彼の関係はそのような感じだ。
 明日のことが誰にも分からないように、僕は彼とこれから先どうなっていくのかまったく分からない。
 なるようになるのではないかと思う。
 良い方向に向かって行けばいいなあとは思う。

 気付けば二十一になっていた。




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