Leaflets of the Rikyu Rat
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2005年06月10日(金) 猫一万匹はいりましたー!(かぶってます)(早速はがされかけてます)

 彼と別れてから早くも二ヶ月ほどが経ち、
 恋愛がすっかり姿を潜めると、己は仕方なく自己に対して目を向けることに戻る。
 先週はその傾向が極めて強く出て日記にも反映されようとしていた。(される前に消えたけど。)
 失恋は、内省するには、これ以上無いくらい良い機会だ。

 と、思っていたらひょんなところから出会いがあった。

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 次の点線まで読み飛ばして貰ってまったく構わないのだけど、
 まず先々週の土日の出来事から。
 日記に知り合ったひとと飲むことになる、と書いて以来
 どうなったか書くのをすっかり忘れていたのだけれど、普通に飯を食って遊んでいだ。
 遊びまくった。
 午後十一時から朝の六時まで。
 飯を食ってゲーセンに行ってドライブして飯を食って。
 全て奢ってもらってしまったのだけど、僕の人生の中で一番贅沢をしたと思う。
 食費だけで五万円くらいだった・・・。ご馳走様でした。
 食べながら「こんなの食べていいのだろうか」と冷や汗をかいた。
 相手のひともただのサラリーマンであるし、それ程お金を持ってるというわけでも無いはずなのに。
 
 しかしこう言っては(しっかり奢って貰っておいて)ひたすら申し訳無いのだけど、
 それ程楽しく無かったのが実情だ。
 相手もおそらくそう思っただろうと思う。
 実際、あれ以来連絡が途絶えている。
 まあ、こんなものなのだろうなあ。

 外見が良ければある程度の内面をカバーできる。
 性格が良ければある程度の外見はカバーできる。
 けど、どちらもそれ程でなかったら、どうしようも無い話だ。
 決してそのどちらかが、あるいはどちらもが「悪い」訳ではないのだけれど、
 人付き合いには相性というものがあって、たまたまそれが合わなかったのだろう。

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 それより、驚くべきは最初に少しだけ触れた、出会いの件だ。
 ゲイバーでバイトをし始めて一年と四ヶ月。
 初めて「それっぽい出会い」があった。
 バイトをしつつ「いいひとに会えないかなあ」などと少しだけ期待していたのは事実であるけれど、
 店子(ミセコ:ゲイバーで働く店員の総称)に声をかける客なんて、
 色目当ての軟派で軽い人間が多いのだろうなあと敬遠していた。
 それに、「店で知り合う」ということはすなわち「周知」ということである。
 働きにくくなることこの上無いのだ。

 そのひとを店で見るのは三度目くらいだっただろうか。
 顔はタイプだったけれども上に書いているような理由から取り立てて胸も躍らなかった。
 いつも夜中にやってきた。
 一度目は何を話したかも覚えていない(もしかしたら何も話していないかも)、
 二度目は誰とでも話すようなどうでも良いとりとめもない会話、
 そして三度目が今回だ。
 たまたま彼は僕の目の前に座った。

 少し話をして、前回受けた印象とかなり違うことに驚いた。
 顔が良い人間と言うのは、基本的に少し驕ったところがある。
 外見が良いと、ゲイにおけるコミュニケーションでは「どうにかなる」ことが多いからだ。
 多くのひとから声をかけられ優越に浸り、少しずつ高慢になる傾向がある。

 そのコミュニケーションに於いて、
 前回は短い会話をそつなくこなしていたため
 彼もそんな人間かと思っていた。
 のだけれど、実はかなり違ったのだ。
 あれこれと様々な話をすれば彼は途端に自信を欠いたような口調になり、
 小心な様子を見せ、何故か“しまった”というような顔をする。
 それ程変な話をしているわけでもないのに、「自分を変だと思ってる風」なのだった。
 
 確かに少し普通ではなかった。
 普通なのに、普通ではないと思い焦る様子が普通では無い、という感じだ。
 面白い。(そしてその仕草がかわいい。)

 かなり酒を飲まされて少々酔っていため記憶が定かで無いのだけど、
 先輩に「あんたこういうのタイプじゃない?」と尋ねられ、
 パフォーマンスとお世辞を含め「めっちゃくちゃタイプっすよ」と応えた。
 まあ、実際“めっちゃくちゃタイプ”だったのだけれど。
 で、気付けばその彼のアドレスと電話番号をGETしていた。
 (彼が紙に書いて渡してくれた。)
 
 彼がとんでも無く照れているのが見て取れ、
 うわー、かわいいよ。と心の中で思う。

 「こっちは私に任せてあんたは二人で話してなさ〜い♪」とすっかりくっつけられ、
 僕に聞こえないように先輩はマスターに耳打ちする。
 マスターが「ぐふふふふ!」と含み笑いをする。
 彼が赤くなる。そんな様子を傍観しながら、
 うーん、かわいい。なんて暢気に考えた。
 
 何だか妙にテンションが高くなって、僕ばかり話していたように思う。
 そのせいで彼に関して分かったことは三十歳だということ、
 奈良に住んでるのだということ、求職中らしいということ、
 それくらいだった。

 朝五時半になった頃、彼が会計を済ませ帰ろうとしたら、
 「あんたも荷物持って帰りなさい」と言われる。
 「いや、そんな、後片付けとかまだあるのに」といえば
 「いいから、そのまま二人で帰って、送ってあげなさい」と有無を言わせない勢いで言われる。
 
 十歳も年下の僕に、彼はきちんとした丁寧語を使う。
 「タメ口でいいですよ」と言っても「いや、無理です」と言われる。何がだ。
 「阪急ですよね?送ります」と言われ、何故か送る側なはずなのに送られホームで別れ、帰宅。
 
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 二日に一日くらい、メールで短いやりとりしていた。
 そして今日、梅田に出てきたとのメールが来たので一緒に梅田を見て回ることにした。
 行きたい場所はあるかと言われ、「うーん」と唸る。
 好きな場所はあるかと聞かれたので、「スカイビル」と答えた。
 スカイビル下のベンチに座り、会話。
 暫くして梅田HEPへ行き、飯を食う。会話。
 資格学校のあるセンタービルへ行き、地下の広場で会話。
 いろいろな話をした。

 意外に彼は饒舌で、また僕ばかり話すことになるのだろうかという恐れは杞憂に終わった。
 むしろ、その意外性が嬉しかった。
 そういえば、彼が僕に丁寧語を使うのは「まだ僕が怖いから」らしい。怖がられた。
 「すごくにこにこして僕に合わせてくれてるけど、実はもっとサッパリしてそう」と言われた。
 うわあ、当たってる。猫かぶりを見破られた。
 けど、にこにこしてるのは本当に楽しかったからでもある。
 
 彼は奥手で、やさしい。
 
 不思議な一日だった。
 センタービルの前で別れる。
 彼は階段をのぼり、僕はビルに入りエレベータに乗った。
 
 彼は丁寧なメールを僕にくれ、つられて僕も「ですます調」なメールを返す。
 そんなやりとりが今はとても楽しく、心が躍る。
 付き合うことになるか、とか、そういうのは良く分からないのだけど、
 いいひとと会えたなあ、と思う。
 勿論、もし付き合えたらいいなあとも思う。
 けれどそう簡単にうまく行きもしないだろうし、期待しないで待ってようかと思う。
 多分彼からは付き合おうなんて言ってこないと思うけど、
 (そういうことをそう簡単には言えない人間だと思う。僕の洞察によると。)
 それでも待ってみようと思う。
 前の彼と別れてまだ二ヶ月だし、すぐに次、というのが何となく嫌なのだ。
 そしてまたすぐに別れることになったら虚しい。
 
 もっと彼と話がしたいなあ。
 もっと彼のことを知りたい。

 うーん、すっかりはまってるかもしれない。やばいな。




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