●●● 俺色アストリンゼン
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2008年06月08日(日) |
にいさん、神の神頼みの巻 |
先週の日曜、デートの前ににいさんは、とある遠方の神社にお礼参りに寄ってから現れた。
以前からずっと不思議に思っていたことがある。カメラ好きの人種というのは、何故こぞって「よさこい祭り」を撮りたがるのか。 自分に縁もゆかりもない土地へはるばる出向いて、自分に縁もゆかりもない人間が楽しく群れ踊っているのをばしゃばしゃ撮りまくる、それのいったいどこが楽しいというのだろう。 そしてまさしくにいさんが、その「カメラ好きのよさこい狂」なのだ。 祭りの季節になると、よさこいが開催される場所へなら時間が許すかぎりどこへでも出かける。重い機材を担いで。 先日も会社の休憩時間中、「ちょっとこれ見てくれる?」というので、にいさんのパーソナルフォルダにアクセスしてファイルを開いてみると、それはExcelで自作した「2008年・全国よさこい祭り開催予定表」なのだった。 「えーっと、こことかこことかなら、比較的近いからわやたそも一緒に行けるかなと。」 この上なく盛り上がった様子のにいさんを横目に、私は正直あまり気が乗らない。横浜駅周辺でも毎年やっているのを見かけるが、ああいう踊りはがちゃがちゃしていてどうにも好きになれないのだ。ましてや炎天下であれを見たいとは、悪いが全く思えない。
余談をはさんでしまったが、その「遠方の神社」ににいさんが今年の1月に初めて出向いたのは、お参り目的ではなく、やはりよさこいの撮影が目当てだったという。 行ってみて初めて、そこが縁結びの神様を祀っていることを知ったにいさんは、私のことをおもむろに思い出し、「あの人と漏れを何とかしてはもらえんか」とお願いしたのだ。つきあうずっと前のことだ。 その事実を今になって聞かされ、激しく腑に落ちるものがあった。そうか、そういうことだったのか。 「にいさんはいい人だがつきあうことは死んでもあり得ねェ、だって、タイプじゃないもんよ」と言い切っていた私が、今やすっかりこのザマだ。しかしそんな愛の嵐にとりこまれながらも、どこかで「これはおかしい」と思っている自分がいた。 あまりにもころっといきすぎだ。何か一服盛られてるのではないかと真剣に思ったりもしたものだ。
なるほど「神様」だったのか。ならば合点がいく。
それにしても、こりゃ大した霊験だ。そこは有名な神社でも何でもないらしいのだが、
「100%見込みのなかった彼女が今や俺のとりこに!」
なんて、インチキ臭いブレスレットか何かの感謝のお便り並みに嘘くさい出来事がホントに起きたのだ。 一瞬、この神社の名前をここに書き、有益な情報として悩んでいる人の役に立ちたいなどと殊勝な気持ちになったのだが、よくよく考えてそれはやめておいた方がいいことに気がついた。 神社に力があったことも事実だろう。だが何よりもにいさんというのは「そういう人」だというのが大きいと思う。 心によけいなものがなくてまっすぐそこにいる感じの人なのだ。感謝の気持ちも忘れない。私が神様でもああいう人間のお願いだったら力を貸したいと思うはずだ。 今は「どこどこの神社が凄い!」という情報が流れれば、ウハウハとそこに群れ集ってご利益に依存するだけの、スピリチュアル大好きな人種が多いが、そんな人は結局どこへ行って何をしようが神様に目をかけてはもらえないものだと思う。 何よりおそろしいのは、お願いばかりするその手の輩が増えると、神様も嫌気がさして神殿から逃げ出すらしいのだ。 ちょっと離れたところに避難して、 「あーあーあーまた一方的におねだりですか、おまいら乙」 みたいな感じでいるのだという。 なんだかんだで、でかい神社でも、そうやって人間のおねだりの気によって神気を失っているところは多いらしい。 神頼みを悪いとはいわないが、やはり女性誌などによる「恋愛運には○○神社!」というような無責任なあおりが生み出す、依存心ばかりにょきにょき育って己の実力を顧みない困ったちゃんたちによって神社が荒れるのは、神社好きとしてしのびない。 だからその神社の名前は書かないことにした。何もけちっているわけではないことをご理解いただければと思う。
そして「なぜよさこいを撮ってしまうのか」、にいさんに聞いてみたのだが。 「とにかく興奮する」らしい。それはもうはっきりと性的なものと言ってよく、ちんこがびんびんにたつ瞬間さえあるという。それは何も踊り手の中に可愛い娘がいるとか、太ももを露出してるからとかそういう意味でではなく、踊りの群れにカメラを向けるその行為がひたすらアツいのだという。 カメラ好きでない私にはそう言われてもやはりよくわからない。けれどおそらく今年の夏もよさこい行脚に出かけるにいさんのことを止めようとは思わない。 にいさんの好きにしてほしいと思っている。ただ「一緒には行かないからね」とだけははっきり宣告してあるのだが。
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