雪と都会の廃塵が混ざり合い。 行き交う人々の靴底がそれを運び込む。 駅舎内の床はびじゃびじゃだ。
窓口で緑色のプラスチック製のコインを買う。 それは改札ですぐに回収されてしまう。
同一料金でしか適用できないシステムだが、 磁気シートの処分や高性能な識別機を考えると、 はるかにコストを抑えられる。
木質系の音がするステアケースに乗っかり、 地下へと降りていく。 中継もなく、1台で一気に降りていく。 深く。深く。降りていく。 しかし、なかなかホームが見えてこない。 ステアケースはカタカタと音をたて、 いい加減なスピードで坦々と人々を地下へ運んでいく。
なかなか見えてこない終点に、 もし今、後ろの人に押されたらと、急に恐くなる。 よく転落事故がおきないものだ。
深く深く降りていく。 モスクワのメトロは深い。
人類は上へ下へ場所を広げてきた。 広げ続ける限り、 あらゆる事件、事故の可能性も広がり続けるだろう。 それらがもたらす悲しみは必要枠なのだろうか。
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