と言っても歳三さんじゃないですよ。 …人というより、彼と、彼らの音楽かな。
John Lennon そして The BEATLES
3月の初め、姉から手紙が届いた。封を開けると、某デパートで開催予定の写真展の入場券だった。
Sakoが好きだったから、暇がある時に行っておいで。
姉と少し前に会った時、自分はどうも飽き性で、何でも長続きしない性格だと、少し落ち込んでいた。
すると姉は不思議そうな顔をした。
「そうかなぁ。BEATLES 今でも聞くでしょ? 新選組も好きでしょ?
Sakoは好きなことがいっぱいあっていいなぁ」
と、笑いながら慰めてくれた。
BEATLES は兄がレコード(他にCCRとか)を持っていたのが始まりだけど、
そう言えば、どちらも中学生の頃から好きだった。
姉が好きだったものは何だったけ…。
思い出すのは大相撲ぐらいだ。でも、それは私のような趣味道楽ではない。
貧しいとか、店のお手伝いをしないといけなかったとか、そんな家の諸事情にはお構いなしに、私は好きな部活も続け、趣味にうつつをぬかしていた。
ほとんど無いに等しい小遣いで、本にしろ、映画や、フィルムコンサートにしろ、あれだけ趣味三昧できたのが不思議でしょうがない。
たぶん店先の小銭を勝手に留守番のお駄賃と称してくすねていたんだろう。
勉強が出来て優しかった姉は部活にも入らず、学校から真っ直ぐ帰って来て、母や店の手伝いをし、不出来な妹の面倒をみ、その結果。
姉は好きなことに夢中になれる自分の時間を持てなかったのではないか。
私が高校生の頃には姉はすでに働いていた。
BEATLES 特集のラジオがあるよ。NHKで土方歳三の特集をしてたよ。
姉は、まるで自分が好きであるかのように、嬉しそうに私に教えてくれる。
馬鹿のような無の自分の時間を持てなかった姉に、今更ながら申し訳ない。
50近くにもなって子どものように好きなものに夢中になる。
馬鹿は死ななきゃ直らないんだろ。
…あれ。書く方向が違ってるぞ。
えっと。会場では、BEATLES のコピーバンドがミニライブしていた。
初期の頃のナンバーはやっぱりいいなぁ…とか思ったり。
〆はやっぱり「イマジン」で、アンコールは「抱きしめたい」でした。
写真を見ていて意外に思ったのはジョンのお嫁さんのオノ・ヨーコさんのこと。
正直に言えば、個性の強すぎる顔も、生き方もどちらかといえば好きじゃない。未だにBEATLES からジョンを連れていった女の印象がある。
ところが。一緒に写っている何枚かの写真を見て驚いた。
何だか悪戯っ子の男の子のような、そんな表情を宿している若い頃のヨーコ。
作り物でない自然な笑い。強くて素朴な少女のような女…。
ジョンが彼女を好きになった理由が少し分かったような気がした。
ジョンも銃弾に倒れたんだ…。
友達がニュースを聞いたか、と興奮して電話をしてきたのを覚えている。
展示されたパネルの中には、赤ん坊を優しく抱く、親父のジョンがいた。
まるで映画のワンシーンのように木を挟んで微笑みあう若い恋人同士がいた。
ミュージシャン仲間と笑い、おどけるジョンがいた。
そんな、たくさんの表情を追っていると。
わずかに今に写真を残す彼にも、こんな瞬間があったんだろうか…と思ったり。
姉からチケットを貰わなければ見に行かなかったかもしれない写真展。
耳から、目から、記憶から、いつもの妄想から、色んな事を思った一日でした。
Sako