京のいけず日記
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2005年05月21日(土) |
通勤文庫 総司残英抄 ちょこっと修正 |
総司残英妙 戸部新十郎著 中公文庫 @686+税 JR通勤再開して約一週間。 満員の車両の中で立ちぱなし。 両足を踏ん張り、コンパクトに脇を締め、 ようやく本を読む元気が出てきました。
最初に選んだ本は手持ちの本。 沖田総司が主人公の連作短編集。
「総司はひとり」(著者は同じく戸部新十郎)とともに もう何度となく読んでいる、愛読本の一冊です。
冗談を言って笑わせたり、飄々とした青年の従来のイメージはあるものの、ここに登場する総司は、妙に優しくもないし、可愛さもない。剣に生き、死と隣り合わせの凄み・侘しさが感じられ魅力的です。
土方にしても各編ほんの数行程度の登場ですが、行間の端々に、著者の土方に対する好意的なものが感じられて嬉しい。
例えば「大望の身」は佐久間象山の息子、三浦啓之助の一件を扱っており、総司と土方が碁を打っているシーンが登場する。
くどくどと書かれていないから、却ってこちらは色々と想像する。 「おい。待て」とか。総司に遊ばれる土方の歳さん…いやん。
きっと、小説でも、ドラマでも、書き過ぎては面白味も半減するのでしょう。
赤松という隊士を逆恨みし、斬りつける象山の伜。
このとき、土方は碁石を握ったまま、じっと眺めていた。 総司は土方のそんなぬるい反応を見たことがない。
総司から見た普段の土方の姿が想像でき、 この時の顔を思い浮かべるだけでもファンには嬉しくなる。
「故愿」の冒頭に登場する土方や、総司を可愛がる井上源三郎など、好人物過ぎるぐらいに描かれており、総司の陰影が際立っている。
広瀬仁紀さんの小説とは、また違う優しさというのかな。 全体に男臭い、地味な優しさや、淋しさを感じます。
同じ著作の「総司はひとり」より、どちらかというと、少ない枚数で、巧みに構成されている連作短編集の方が好み。ちなみに司馬さんも「燃えよ剣」より「新選組血風録」の…土方の方が好きですね。あの餅を焼いてるシーンとか…。
「大望の身」に名前だけ登場している会津藩士、山本覚馬。 盲目の壮士。いつかこの男を主とした小説を読んでみたいなぁ。 実際、土方とも面識があったかもしれません。
戸部さんの時代小説、忍者ものも面白い。 新作がもう読めないのが残念です。
Sako
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