井口健二のOn the Production
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2024年02月04日(日) ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ、パスト ライブス/再会、あんのこと、流転の地球2、青春18×2君へと続く道

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
              “Five Nights at Freddy's”
2023年4月紹介『ミーガン/M∃GAN』などのブラムハウ
ス社の製作で、2014年にリリースされた同名ホラーゲームの
クリエーターが直接関って映画化された作品。
主人公は少し年の離れた妹と2人暮らしの男性。実は妹との
間にはもう1人弟がいたが、まだ少年だった彼の目の前から
車で連れ去られるという出来事があり、以来行方不明。彼自
身はそのトラウマにも苛まれている。
そんな彼は求職中。ただし妹との関係で夜勤の仕事は断って
いたが、止む終えず閉鎖されたピザレストランでの夜間警備
の仕事を引き受ける。そこは以前は店内のアトラクションで
も賑わっていた店だったが…。
彼が訪れた店内には往時のままのキモ可愛いキャラクターの
マスコットの人形が立ち並び、それは主人公を待ち構えてい
る風でもあった。そしてそこに妹もやってきてしまった夜、
人形たちが命を吹き返す。

主演は2012年7月紹介『ハンガーゲーム』などのジョッシュ
・ハッチャースン。相手役に2019年『カウントダウン』とい
う作品に主演のエリザベス・レイル、テレビ出身の子役で映
画は初出演のパイパー・ルビオ。
さらに Netflix作品『サマーキャンプ』などのキャット・コ
ナー・スターリング、最近はテレビ出演が多い1991年『フラ
イド・グリーン・トマト』などのメアリー・スチュアート・
マスタースン、2012年1月紹介『ファミリー・ツリー』など
のマシュー・リラードらが脇を固めている。
脚本と監督はブラムハウス社製作のTVドキュメンタリーや
ホラーアンソロジーなどを手掛けてきたというエマ・タミ。
脚本はオリジナルゲームのクリエーターのスコット・カーソ
ンと連名で、カーソンは製作者にも名を連ねている。
そして物語の中心となるアニマトロニクスの制作と操演は、
2003年4月紹介『カントリー・ベアーズ』などのジム・ヘン
ソン・クリーチャーズショップという布陣の作品だ。
僕は原作となるホラーゲームのことは知らなかったが、主人
公が抱えるトラウマなどの設定は実に巧みで、それが映像で
のコケ脅かしなどはしなくてもじわじわと観客を締め付けて
くる。
そしてそこにキモ可愛いキャラクターがアニマトロニクスで
再現され、それが絶妙の効果を上げている。元々ジム・ヘン
ソンのクリーチャーはキモ可愛いの元祖だが、そこにさらに
絶妙な味付けが加わった感じだ。
アメリカでのヒットですでに続編の制作も進んでいるようだ
が、これは楽しみなシリーズになりそうだ。

公開は2月9日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷、新宿
ピカデリー、渋谷 HUMAXシネマ、グランドシネマサンシャイ
ン池袋他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投
稿するものです。
(この作品は2023年12月に東宝東和の試写会で観たものです)

『パスト ライブス/再会』“Past Lives”
韓国ソウル生まれで、12歳の時にカナダに移住したという女
性劇作家が、自らの体験を基に描いた監督デビュー作。その
本作は、今年の賞レースでは1月末時点で 223のノミネート
と76の受賞を勝ち取っているそうだ。
物語の開幕は現代のニューヨーク。そのバーのカウンターに
座ったアジア系の女性がアジア系と西洋系の2人の男性の間
で談笑している。果たしてその3人の関係は…?
そこから話は遡って24年前、韓国ソウルで男女の小学生がじ
ゃれ合うように会話しながら住宅地の坂道を下校している。
2人は学校ではテストの成績で1位、2位を争っているよう
だ。
ところがそんな小学生の少女が両親と共にカナダに移住する
ことになる。そして彼女は「韓国人はノーベル文学賞を取れ
ないから」と言い置いて旅立ってしまう。
それから12年、ニューヨークで劇作家を目指して修行してい
る女性は、映画関係者の父親のFacebookにその娘である自分
を探しているという書き込みを発見する。こうしてネットを
介して再会を果たす2人だったが…。

脚本と監督のセリーヌ・ソンは2020年発表 “Endings”など
の舞台作品で評価されている他、ドラマシリーズのスタッフ
ライターなども手掛けており、すでに映画化の第2作も進行
中だそうだ。
出演はカリフォルニア出身の韓国系移民2世で、Netflix 配
信『ロシアン・ドール』などにも出演のグレタ・リーと、ド
イツ・ケルン出身韓国系のユ・テオ。それに2019年4月紹介
『オーヴァーロード』などのジョン・マガロ。
人生は選択の連続というのはよく言われることだが、今が幸
せと感じられるならそれはただの想像と片付けられる。でも
もしこの主人公たちのような立場になったら、想像を超えた
いろいろな思いが湧き上がってしまうことになりそうだ。
そんな思いがいろいろと湧き上がってくる作品。それは正に
純愛を呼べるのかな。そんな究極の恋愛ドラマとも言えそう
な作品だ。まあ韓国ならではの特殊事情のようなものもある
けど、それを超えるドラマにもなっている。
因に原題は「前世」という意味だが、作品の中では韓国語の
イニョン=縁(えにし)という言葉もキーワードとして登場す
る。でもそこまで言うとちょっと大げさかな、僕としては人
生の選択という程度で物語を捉えたいと思った。

公開は4月5日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。

『あんのこと』
2016年1月紹介『太陽』や2020年1月紹介『AI崩壊』など
の入江悠脚本/監督による2020年のCOVID-19禍を背景とした
実話に基づく社会派ドラマ。
主人公は覚醒剤中毒で、売春を生業としている20歳の女性。
母親と祖母との3人で団地暮らしだが、部屋に男を連れ込む
母親からは「シャブ打つ金があったら家に入れろ、もっと身
体を売って稼いで来い」と暴力を振るわれている。
そんな女性が警察に検挙される。それはホテルで相手をして
いた男が覚醒剤で昏倒したためだったが、その取り調べの席
で彼女は1人の刑事と巡り合う。その刑事は何くれとなく世
話を焼いてくれ、自ら主催する更生会にも誘ってくれた。
こうして少しずつ更生への道を歩み始めた彼女だったが…。
COVID-19禍が社会との繋がりを遮断し、さらに様々な出来事
が更生への道を阻んで行く。そんな彼女が辿り着いた最後の
居場所とは。

出演は2022年12月紹介『少女は卒業しない』などの河合優美
と、共演者に佐藤二朗、稲垣吾郎。さらに河井青葉、広岡由
里子、早見あかり。他に盛隆二、護あさならが脇を固めてい
る。
入江監督の作品は、2010年5月紹介『SRサイタマノラッパ
ー2』からそこそこ観て来ているが、どの作品も登場人物と
の距離感が絶妙な気がしていた。ところが本作ではその距離
感がめちゃくちゃ近い感じがする。
そこには主人公に寄り添おうとする監督の意思が感じられる
し、この作品を描くことへの使命感みたいなものも感じるも
のだ。そのくらいにこの作品を描くことへの重要性も感じて
いたのだろう。
それはオリンピックイヤーの2020年=COVID-19禍という時代
に起きた事件ではあるけれど、EXPO2025を控えた今の時代に
も共通する閉塞感みたいなものが事件を引き起こした、そん
な感じにも捉えられる作品になっていた。
社会に対する言いようのない不満、そんなものも感じられる
作品だ。そして監督は、それを観客に感じさせることに成功
した、そんな風にも言える作品だろう。正に社会に一石を投
じたと言える作品だ。

公開は6月7日より、東京地区は新宿武蔵野館、池袋シネマ
・ロサ、丸の内TOEI他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

『流転の地球−太陽系脱出計画−』“流浪地球2”
2008年発表の長編小説『三体』で2015年アジア人初のヒュー
ゴー賞受賞者となった中華人民共和国のSF作家・劉慈欣が
2000年に発表した短編小説を基に、2019年映画化された作品
の第2弾。
作品は第2弾とは言っても続きではなくて、2019年映画化作
品で描かれた物語へと続く前日譚となっている。従って前作
を観ていなくてもさほど支障はないと言えそうだ。実際に僕
も前作は観ないまま本作を鑑賞した。
物語の発端は2040年代。太陽活動に変調が観測され、それは
やがて太陽が膨張して地球を飲み込むと結論される。そこで
人類脱出計画が発案され、最終的に地球ごと他の恒星系に移
転する計画が実施されることになるが…。
そこには大型宇宙船で脱出するなど複数の対立案が存在し、
その対立はテロを含む反対運動へと発展していった。そんな
中で主人公らは地球移動の邪魔になる月の放逐と、地球を動
かすための地球エンジンの準備を進めていた。
そして10年後、太陽放射線の影響が人の健康を犯し始めたこ
ろ、月が地球へ落下するという危機が迫る。その一方で人の
アイデンティティをディジタル化し、究極の存命を計る禁断
の研究も進められていた。
果たして人類はその英知を結集し、地球の太陽系からの移動
を実現することができるのか。

監督は前作に引き続いてのグオ・ファン。また本作には原作
者の劉慈欣が製作総指揮の肩書で参加している。
出演は、2017年12月17日付題名紹介『戦狼/ウルフ・オブ・
ウォー』などのウー・ジンが前作に引き続いて主演の他、中
華映画の代表とも言えるアンディ・ラウ。さらに重鎮のリー
・シュエチェン。
他にシャー・イー、ニン・リー、前作に続いて登場のワン・
ジー。またシュ・ヤンマンツー、2023年8月紹介『フラッシ
ュオーバー炎の消防隊』などのトン・リーヤー、子役のルオ
シ・ワン、モデルのクララらが脇を固めている。
原作は文庫本で60頁ほどの作品で、ある種の思考実験と言え
るような作品のようだ。そこから前作では上映時間 125分の
アクション満載の作品に仕上げられていたという。そして本
作ではさらに 173分の作品が作られた。
その本作では、中国科学界の最高権威とされる中国科学院の
複数の分野の専門家の監修のもと、原作小説の5倍以上の文
字数とされるコンセプトが作成されたということで、そのコ
ンセプトが存分に生かされた作品になっているようだ。
それにしても地球移動という技術的な問題からディジタル生
命まで、正に多岐に渉るテーマが満載の作品で、これは短編
小説『前哨』の作者アーサー・C・クラークが『2001年宇宙
の旅』に参加したときのような成立の作品とも言えそうだ。
SF映画にとっての新たな金字塔と言えるかもしれない。作
中には『2001年』へのオマージュも多数見受けられた。

公開は3月22日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ツインの招待で試写を観て投稿
するものです。

『青春18×2君へと続く道』
2014年にSNSで公表されたブログを基に、2023年3月紹介
『Village/ヴィレッジ』などの藤井直人監督が紡いだ青春ス
トーリー。
主人公は台北で起業した男性。そんな男性がある事情で東京
に出張することになり、その旅程の最後でふと日本の原風景
を巡る旅に出掛ける。それは彼の青春の思い出を辿る旅でも
あった。
それは18年前、18歳の高校生だった主人公は台南の田舎町で
元日本人が経営するカラオケ店にアルバイトで働いていた。
その店に突然バックパッカーの日本人女性が現れる。その女
性は行先を決めない旅の途中で、財布を無くしたからしばら
く働かせて欲しいということだった。
そんな女性を店主は快く受け入れ、アニメ好きで少し日本語
の判る主人公に教育係を申し付ける。こうして住み込みで働
き始めた女性と主人公との交流が始まるが…、6歳年上の彼
女は当初は主人公をあまり気に掛けないようだった。
それでも田舎町では珍しい異国人の彼女は地元の人気者にな
り、そんな彼女に主人公は徐々に距離を詰めて行く。しかし
ある日突然彼女は帰国してしまう。そして帰国した彼女から
は1枚の冬景色の絵葉書が届いただけだった。
そんな物語が、18年後に日本を旅する主人公の行動と共に描
かれて行く。

出演は、台湾で多くのドラマに出演して「新・国民的彼氏」
とも呼ばれている許光漢(シュー・グァンハン)、その相手役
に2017年9月17日付題名紹介『ユリゴコロ』などに出演の清
原果耶。
そして主人公が日本で出会う人たちに、台湾生まれで2014年
日本公開『GF*BF』などに主演のジョセフ・チャン、さらに
「なにわ男子」道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳らが登場
する。
なおカラオケ店の従業員役で登場する台湾側の出演者たちも
いい味を出していたが、今回は内覧試写で観たためにプレス
資料が揃っておらず、詳細は不明。後日判ったら追加するか
もしれない。
青春映画としてはかなりドラマティックな展開の作品だが、
実は基になったブログ「《青春.18 x 2》日本慢車流浪記」
は今も公開されていて、それを読んでみると映画がほとんど
原作通りであることに驚かされた。
もちろん掴みの部分や、日台の交流を描くシーンなどには多
少の脚色もあるが、大筋ではほぼ原作通りのドラマティック
な物語が展開されていたものだ。結末も含めて素晴らしい体
験だったと言える物語に拍手を贈りたい。
今週は先に24年間を挟んだ恋愛ドラマも紹介したが、本作は
18年、奇しくも長い時間を挟んだ恋愛ドラマに心を揺さぶら
れる1週間だった。どちらも実話を基にした心に沁みる名作
と呼べる作品だ。

公開は5月3日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。


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井口健二