井口健二のOn the Production
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2024年01月14日(日) ペナルティループ、DOGMANドッグマン、身代わり忠臣蔵

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ペナルティループ』
2020年発表のデビュー作『人数の町』が話題になったという
荒木伸二脚本・監督による第2作。前作はCOVID-19の影響で
見逃したが、2作ともにSF要素の強い作品のようだ。
物語のプロローグでは、アーティスティックな仕事をしてい
るらしい主人公の部屋から出て行く女性の姿が描かれ、次い
で同じ部屋で朝6時に起床してからの主人公の1日の行動が
描かれる。
そこで主人公は水耕野菜の工場でライン管理の仕事をしてお
り、そこにやってくる電気関係の業者らしき男性に薬物を盛
り、体調を崩した男性を襲って殺害、さらに男性の遺体を川
まで運んで流し去る。
ところが午前0時になった瞬間、主人公は再び朝6時に自分
の部屋で起床し、ライン管理の仕事からやってきた男性を殺
害、その遺体を川に流す行為が繰り返される。それは時間ル
ープに巻き込まれた主人公の姿のようにも見えるが…。

出演は2023年8月紹介『市子』などの若葉竜也、2023年12月
紹介『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』
などの山下リオ、2019年1月20日付題名紹介『翔んで埼玉』
などの伊勢谷友介。
他にジン・デヨン、2023年8月紹介『キリエのうた』などの
松浦祐也、うらじぬの、2018年3月4日付題名紹介『蝶の眠
り』などの澁谷麻美、川村紗也、夙川アトムらが脇を固めて
いる。
主人公の陥っているのが時間ループではなくてヴァーチャル
世界。しかも犯罪被害者の遺族が復讐のために犯人を繰り返
し殺している世界だということは、かなり早い段階で観客に
説明される。
つまりこれは、犯罪被害者の遺族が「(犯人を)何度殺しても
飽き足らない」と言っていることを、字義通りに実現させて
いる世界なのだ。ただし監督はそこにある種の虚しさを同居
させて、字義通りではない状況に昇華させている。
それはテーマとしては面白いし、特に主人公と犯人との関係
の微妙な変化などは、物語の本質は正にそこを描きたかった
のではないかと思わせるほどものだ。とは言えそれが本作で
描き切れたかどうかには疑問を感じる。
それは主人公のアイデンティティがヴァーチャル世界に反映
されていることは理解されるが、それでは犯人側のアイデン
ティティは何処から来ているものなのか? まさか刑務所に
いる犯罪者が協力しているものではないだろう。
その辺の曖昧さが物語全体を薄っぺらなものにしているよう
にも感じてしまった。実際に犯人ではないものを殺しても遺
族は満足できないだろうし、その辺の辻褄をもっと突き詰め
て考えて欲しかったものだ。
その他にも、部屋を出て行く女性の存在が後からいろいろと
説明はされるのだが、こちらも本質の部分が曖昧なままで、
これももっと突き詰めればそれはそれで面白くなったのでは
ないかとも思わせる。
結局いろいろなポイントでもっと面白くなりそうな題材だけ
に、SFファンとしては少しもったいなくも感じてしまった
ものだ。

公開は3月22日より、東京地区は新宿武蔵野館、池袋シネマ
・ロサ他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

『DOGMANドッグマン』“DogMan”
2020年3月1日付題名紹介『ANNAアナ』などのリュック・ベ
ッソン脚本、監督で、ある意味、ベッソンが原点に戻ったと
も言える社会への復讐劇。
映画のオープニングは警察によって止められた大型車。その
運転席には女装で負傷した主人公が座り、警察が貨物室を開
けるとそこには10数頭の様々な犬種の犬たちが大人しく警官
たちを見返していた。
一方、シングルマザーの精神科医が警察からの真夜中の緊急
依頼を受け、その依頼に応えて拘置所にやって来た彼女は、
女装の主人公と面会することになる。そしてドッグマンと呼
ばれる主人公が来歴を語り始める。
それは飢餓によって闘争心を高めようとする闘犬ブリーダー
=父親の意向に反して犬たちに食べ物を与え、父親の怒りを
買って犬舎に閉じ込められることになった息子の壮絶な人生
だった。
そんな彼はある事情で救出され、長じて犬の保護センターを
開設するが、その活動も行政の無理解によって閉鎖を迫られ
る。そこで彼が執った手段とは…。社会の底辺で、僅かな支
援も閉ざされることになった主人公の復讐が始まる。

出演は2017年9月24日付題名紹介『バリー・シール/アメリ
カをはめた男』などのケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。
ドラマで活躍し、近日紹介予定の『パストライブス/再会』
にも出演のジョージョー・T・ギッブス。
他にクリストファー・デナム、クレーメンス・シック、ジョ
ン・チャールズ・アギュラー、グレース・パルマ、イリス・
ブリー、マリサ・ベレンスン、リンカーン・パウエル、アレ
クサンダー・セッティネリらが脇を固めている。
狼に育てられた少年という話は聞いたことがあるが、犬に育
てられるとはどういうことか。そんな掴みから物語は丁寧に
描かれて行く。そこには意外性などはあまりないが、正しく
ドラマティックに展開される物語だ。
そしてどん底に落とされて行く主人公に対して常に犬たちが
優しく寄り添っている。「(犬は)人間の美徳はすべて持って
いる。でも一つだけ欠点がある。それは人間への忠誠心」。
これは主人公の台詞だが。正にそんな感じの作品だ。
犬好きが犬好きのために作った作品。でもその陰には人間へ
の不信感が色濃く漂っている。そんな感じの作品にも見える
が、そこには万物を通じての多大な優しさが溢れた作品にも
なっている。ベッソンの真骨頂と言える作品だろう。

公開は3月8日より、東京地区は新宿バルト9他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社クロックワークスの招待で試写
を観て投稿するものです。

『身代わり忠臣蔵』
2014年『超高速!参勤交代』などの土橋章宏原作・脚本で、
近年テレビ・映画で活躍の目立つムロツヨシを主演に迎え、
赤穂浪士の討ち入りを背景に奇想天外な歴史フィクションが
展開される。
主人公は江戸の町で怪しげな説法を行っている生臭坊主。実
は高家旗本・吉良家の子息だが、長男のみが家督を継ぐ慣わ
しの許、屋敷を追い出されて出家はしたものの仏門での修行
も中途半端なようだ。
ところが江戸城松の廊下で刃傷発生。切り掛った浅野内匠頭
は切腹となったが、手傷を負った吉良上野介も背中の傷が逃
げ傷と疑われ、このままでは武士の恥としてお家取り潰しと
いう憂き目にもなる。
しかも上野介は申し開きをしないまま他界。この事態に家臣
の斎藤宮内は折よく無心に現れた主人公が上野介と瓜二つな
ことを利用して身代わりに仕立て、難局を切り抜けようと算
段するが…。
幕府重臣への申し開きは首尾よく行ったものの、赤穂浪士た
ちの吉良家討ち入りの機運が高まって行く。そんな折、気晴
らしに出掛けた遊郭で大石内蔵助と親交を結んだ主人公は、
己が絶体絶命の運命を知ってしまう。

共演は、2005年の自らの初主演作『サマータイムマシン・ブ
ルース』以来の再共演という永山瑛太。さらに川口春奈、林
遣都。そして尾上右近、野波麻帆、北村一輝、柄本明、橋本
マナミ、加藤小夏。
また吉良家側で寛一郎、本多力、板垣瑞生。赤穂浪士側では
森崎ウィン、星田英利、廣瀬智紀、濱津隆之、野村康太、入
江甚儀らが脇を固めている。
監督は2008年2月紹介『花影』などの河合勇人。近年は多く
のヒット作を手掛ける監督が手堅い演出を見せている。また
テーマ曲を東京スカパラダイス・オーケストラが手掛けてい
るのも話題になりそうだ。
歌舞伎狂言でもお馴染みの『忠臣蔵』は史実に基づく物語だ
が、本作の物語はそこにちょっと捻りを加えたもの。でもそ
れが却って納得できそうに感じるのは、さすが土橋章宏原作
・脚本と言う感じの作品だ。
しかもそこにハラハラドキドキ、そして巧みな人情味など、
正しくエンターテインメントと言える作品にもなっている。
さらに見事な伏線回収も思わず拍手をしたくなるほどのもの
だった。

公開が2月9日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映株式会社の招待で試写を観
て投稿するものです。


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井口健二