2023年08月06日(日) |
オペレーション・フォーチュン、法廷遊戯、私はモーリーン・カーニー、キリエのうた |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『オペレーション・フォーチュン』 “Operation Fortune: Ruse de guerre” 1998年の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレ ルズ』で共に長編映画デビューを飾った監督ガイ・リッチー と、俳優ジェイスン・ステイサムが以来5度目のタッグを組 んだスパイ・アクション作品。 ステイサムが演じるのは英国諜報部MI6御用達のスパイ。 ただし直属ではないようで、案件ごとにコーディネーターの 仲介で任務が依頼されるらしい。 そんな主人公に今回依頼されたのは、「ハンドル」と呼ばれ る最終兵器の奪還。兵器はウクライナの研究施設から強奪さ れたものだがその実態は不明。しかしすでに闇のマーケット では100 億ドルの値が付いているという。そしてその仲介者 は国際的な武器商人とされる。 そこで主人公は、コーディネーターが用意した米国人の女性 ハッカーと主人公に心酔するオールラウンダーの黒人青年を 従え、武器業者の推しのハリウッドスターも巻き込んで、カ ンヌ洋上での慈善パーティからトルコにある武器商人の牙城 へと乗り込むが…。 そこには本来の主人公の片腕だった男が仕切る別動隊の諜報 チームも参戦していた。 共演は、2019年6月30日付題名紹介『チャイルド・プレイ』 などのオーブリー・プラザ、英国出身ヒップホップアーチス トのバグジー・マローン。さらにジョシュ・ハートネット、 ヒュー・グラント、ケイリー・エルウィズ、エディ・マーサ ンらが脇を固めている。 休暇はリゾート地の高級ホテル。任務に向かうときはプライ ヴェートジェットに指定の高級ワイン。その費用は全てクラ イアントの経費で賄う…というかなり我儘な主人公をステイ サムが小気味よく演じ、対する能天気なハリウッドスターを ハートネットが正に体現して見せる。 さらにそこにグラントの怪演が被せられるという、これはか なり贅沢な作品になっている。とは言ってもイギリス映画、 見てくればかりの荒唐無稽なド派手アクションやVFXに頼 るのではなく、正に人間が主体の作品になっているのも見ど ころと言えそうだ。 公開は10月13日より、全国ロードショウとなる。
『法廷遊戯』 弁護士で作家の五十嵐律人がロースクールの学生だった時に 執筆し、2020年の第62回メフィスト賞を審査員の満場一致で 受賞したというデビュー作の映画化。 登場するのは男性2人、女性1人のロースクールの学生、男 性の内の1人は在学中に司法試験に合格するという秀才だっ た。そして学内で行われる無辜ゲームと呼ばれる模擬裁判で は、その秀才を判事として様々な審議が行われていた。 そんなある日、主人公の過去を暴く怪文書が学内に流布され る。それは児童養護施設出身の主人公が少年時代に犯した罪 を告発するものだったが、その犯人を追及する中で、3人が それぞれ脅迫を受けていた事実が明らかになる。 それから数年後、司法試験に合格し弁護士となった主人公は 無辜ゲームを開催するという呼び出しを受ける。そしてその 会場に来た主人公は、秀才が刺殺され、その傍にナイフを持 ち返り血を浴びた女性が立ち尽くす現場を目撃する。 果たして彼女は犯人なのか、彼女の弁護をすることになった 主人公は、過去に犯した自らの罪にも対峙することになり、 さらに事件の様相が二転、三転と覆って行く。その結果明ら かになる事件の真相とは? 出演は King&Princeの永瀬廉、2016年7月紹介『湯を沸かす ほどの熱い愛』などの杉咲花、2013年8月紹介『陽だまりの 彼女』などの北村匠海。他に柄本明、生瀬勝久、筒井道隆、 大森南朋らが脇を固めている。 脚本は2015年テレビドラマ『流星ワゴン』などの松田沙也。 監督は2008年7月紹介『真木栗の穴』などの深川栄洋が担当 した。 いやはや、事件の真相が二転三転、さらに四転五転して行く 展開には驚かされた。しかもそれがほんの一瞬の映像で明ら かにされて行くのだから…。上映時間は97分の作品だが、正 にスクリーンに釘付けになるという感じだった。 そしてそれはある意味、日本の司法制度の問題点を暴き出す ような展開なのだから、これはアイドル主演の作品とは言う ものの、相当の問題作と呼べるかもしれない。さすが現役弁 護士の原作というところなのだろう。 とは言うもののアイドルのファンにも充分納得して観て貰え る作品になっているところも、見事と言えるものだった。 公開は11月10日より、全国ロードショウとなる。
『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』 “La syndicaliste” フランスの国策原子力企業アレヴァの労働組合委員長だった 女性が自宅でレイプされ、しかも捜査中には自作自演として 逆に訴追されるというスキャンダラスな実話を、2023年2月 紹介『EOイーオー』などのイザベル・ユペール主演で映画 化した作品。 映画は郊外の住宅に警察隊が捜査に入るところから始まる。 そこではその家に住む女性が手足を粘着テープで椅子に拘束 され、股間にナイフの柄を突っ込まれているというおぞまし い姿で発見されていた。 そこから話は数年前に遡る。女性の名前はモーリーン・カー ニー、原子力企業アレヴァの労働組合委員長で海外にも展開 する会社の各国を回って、それぞれの国での特に女性の労働 環境の向上に尽力している。 そんな彼女はアレヴァの女性社長とも多くの話し合いの場を 持ち、労使の関係は良好だった。ところがその女性社長が更 迭され、後任には政府との繋がりの深い男性がやってくる。 しかしその陰には大きな陰謀が隠されていた。 そしてその陰謀を告発する手掛かりを入手したとき、彼女に レイプ事件が降りかかる。ここから物語は後半戦となり、警 察から憲兵隊に委ねられた事件は、彼女の自作自演という意 外な展開にもつれ込む。 共演は2018年6月3日題名紹介『グッバイ・ゴダール!』な どのグレゴリー・ガドゥボア、2010年7月紹介『プチ・ニコ ラ』などのフランソワ=グザビエ・ドゥメゾン、2023年1月 紹介『エッフェル塔〜創造者の愛〜』などのピエール・ドゥ ラドンシャン。 さらに2014年1月紹介『ラッシュ/プライドと友情』などの アレクサンドラ・マリア・ララ、2014年6月15日付「フラン ス映画祭2014」で紹介『友よ、さらばと言おう』などのジル ・コーエン、コメディ女優のマリナ・フォイス、2009年12月 紹介『ニューヨーク、アイラブユー』に監督として参加のイ ヴァン・アタルらが脇を固めている。 映画の前半では原子力政策をめぐる国家的陰謀が描かれ、後 半ではその陰謀を暴こうとした主人公が犯罪者に仕立て上げ られる過程が描かれる。そして結末では無罪となるが、そこ で主人公は追及を断念する。 それは追及を続ければ自らや家族の命が危なくなるからであ り、そんな国家規模の陰謀が描かれた作品だ。しかも全てが 実話という。正しく政治の闇が描き尽くされた作品と言えそ うだ。 公開は10月20日より、東京地区は渋谷宮下のBunkamura ル・ シネマ他にて全国順次ロードショウとなる。
『キリエのうた』 2016年1月紹介『リップヴァンウィンクルの花嫁』などの岩 井俊二監督が、今年6月に解散したガールズグループBiSHの 元メムバー=アイナ・ジ・エンドを主演に迎えて、石巻、大 阪、帯広、東京を舞台に描く現代に生きる男女4人のヒュー マンドラマ。 アイナが演じるのは歌っている時にしか声が出せない障碍を 持つ女性歌手キリエ。そんな歌手が路上ライヴを行っていた 時、通りかかった派手な衣装の女性イッコが声を掛ける。そ んな2人は実は過去に交流があったのだが、それぞれ過去を 捨て名前を変えて再出発を目指していた。 こうして意気投合した2人はイッコが暮らす豪華マンション で共同生活を始めるが…。こんな2人の他に姿を消したフィ アンセの行方を捜す若者や、話をしない幼い女の子と交流す る慈愛に満ちた女性教師など様々な人間模様が、やがて一つ の物語に収斂して行く。 共演は、岩井監督の前作『ラストレター』に続いての広瀬す ず。彼女が纏う奇抜な衣装やファッションは見ものだ。それ にSixTONESの松村北斗。そして『リップヴァンウィンクルの 花嫁』に続いての黒木華。 他に村上虹郎、松浦祐也、笠原秀幸、粗品、矢山花、七尾旅 人、ロバート・キャンベル、大塚愛、安藤裕子、鈴木慶一、 水越けいこ、江口洋介、吉瀬美智子、樋口真嗣、奥菜恵、浅 田美代子、石井竜也、豊原功補、松本まりか、北村有起哉ら が脇を固めている。 上記の『法廷遊戯』に負けず劣らずの複雑な人間模様だが、 先の作品がどんでん返しの連続なのに対して、本作はパズル のように話が纏まって行く、そんな心地よさも感じられる作 品だった。そしてさらに社会情勢などもパズルのピースとし て取り込まれている。素晴らしい作品だ。 それに加えて、唯一無二とも称されるアイナ・ジ・エンドの 歌声。本作ではシンガーソングライターの彼女が6曲の楽曲 を提供しているが、その素晴らしさにも魅了される作品だっ た。そして映画の中では他の人の楽曲を歌うシーンにも感動 した。正に音楽映画とも言える作品だ。 公開は10月13日より、全国ロードショウとなる。
|