※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は記者会見の報告から。 20年ぶりのシリーズ復活にして第4作の『ランボー/最後 の戦場』の公開を前に脚本、監督、主演のシルヴェスター・ スタローンと共演者2人による来日記者会見が行われた。 その模様はすでに各社報道でも紹介されているものだが、 ここでは少し補足させてもらうことにしたい。それはまず、 シリーズの次回作について、メキシコで現実に起きている女 性の行方不明事件を扱い、すでに500人以上が拉致されたと 見られる女性たちの救出に向かう内容にするという点だ。 ここまではすでに報道されているものだが、実は、会見で はその前にスタローンが邦題につけられた副題について通訳 の人に質問していて、通訳はそれに“final battlefield” と答えているように聞こえた。そこでスタローンは、次回作 の質問が出たときに、「もはやランボーが戦場に向かうこと はないと思う。しかし彼は常に戦うヒーローだから、今後は このような身近な問題でその能力を発揮するのだ」と説明し ていたのだ。 つまりこれは、配給会社が付けた副題にも花を持たせたも ので、なるほどと思わせる上手い回答だった。もちろん続編 の計画は実際にもあるのだろうが、ここではいろいろな状況 も判断しての発言という感じで、スタローンの気配りにも感 心させられた。 因にこの作品の原題は、ただ“Rambo”というだけだが、 これにはちょっと経緯がある。実は1982年の第1作の原題は 原作の小説に沿ったもので“First Blood”とされていた。 そして第2作では“Rambo: First Blood Ⅱ”と題され、第 3作で“Rambo Ⅲ”となった。つまり“Rambo”単体の原題 は今までにはなく、それが第4作にして初めて付けられたの だ。従ってそれなりの拘わりのある原題だったとも思える。 という原題の経緯だが、日本の場合は第1作の時にすでに 『ランボー』の邦題が付けられていたもので、今回の第4作 を直訳では第1作と同じになってしまう。そこで『ランボー /最後の戦場』という邦題になっている訳だが、上記の発言 では、この邦題に対しても、スタローンから直々のお墨付き を貰えたという感じになったものだ。 ただし、これで次回作が出来ても邦題はOKだが、原題の 方は一体どうするのだろう。ちょっと気になるところだ。 * * ところで、『ランボー/最後の戦場』の日本配給はギャガ ・コミュニケーションズが行うが、実はこの会見の直前に、 同社の配給で3月9日付で特別映像を紹介した『センター・ オブ・ジ・アース3D』の公開が延期になったことが報じら れた。そこで会見の前に個人的にギャガの担当者を捉まえ、 そのことを質問してみた。 その回答によると、実は全国的な3D上映を目指して、デ ィジタル館以外でも3D上映できるシステムを検討したが、 結局、2種類の上映形態を実施するのは、フィルムの準備な どでかなり経費が増大することが判明した。それなら今秋以 降ディジタル館の館数が拡大するという情報もあり、特に、 来年3月以降には3D映画の公開も相当に増えるので、その 直前のお正月映画として公開するのがメリットが大きいとい う判断になったそうだ。 僕自身、ディジタル以外の3D上映を併用するのは画質の 点などで危惧もあったので、この判断は正しいと考えるが、 担当者氏は、「公開は必ずしますので、よろしくお願いしま す」とのことなので、それまでじっくり待つことにしたい。 なおディジタル化の進んでいるアメリカでの公開は予定通り 8月末に行われる模様で、その評価も楽しみなところだ。 * * 以下は、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 まずは続報で、2007年3月15日付第131回で一度紹介した ブライアン・セルズニック原作の児童向けファンタジー小説 “The Invention of Hugo Cabret”の映画化に、2002年公開 『アイス・エイジ』を手掛けたクリス・ウェッジ監督の起用 が発表された。 そしてワーナーで進められているその製作に、ジョニー・ デップ主宰のプロダクション=インフィニタム・ニヒルが製 作会社として参加することも発表されている。 原作の物語は、1930年代のパリの鉄道駅を舞台に、父親の 跡を継いで駅舎の時計の修理を担当している少年が、不思議 な事件に巻き込まれるというもの。そこには父親の遺した壊 れたロボットなども登場するというものだ。そしてこの原作 に対しては、今年1月に発表されたアメリカ図書館協会選定 の児童文学賞で、ニューべリー賞の絵本部門に相当するコル デコット賞も贈られた。 因に、この賞では、過去にディズニーが中編アニメ化した “The Little House”や、すでに映画化された“Jumanji” “The Poler Express”、さらにスパイク・ジョーンズ監督 による映画化が来年公開予定になっている“Where the Wild Things Are”なども受賞しているものだ。 その原作を、今回の映画化では『スウィニー・トッド』な どのジョン・ローガンが脚色。以前の報告では、マーティン ・スコセッシの監督が予定されていたものだが、これは前回 も報告した諸般の事情で交替になったようだ。 なお新たに監督に決ったウェッジは、1998年度のオスカー 短編賞を受賞、長編作品では2005年『ロボッツ』の監督も手 掛けているが、いずれもアニメーションだったもので、今回 は初めて実写映画を監督することになる。 現時点でジョニー・デップの出演があるかどうかは不明だ が、主人公の少年役には注目が集まりそうだ。 * * ついでにジョニー・デップ関連の話題で、彼の出世作とも 言える日本未放映のテレビシリーズ“21 Jump Street”を、 劇場版リメイクする計画がコロムビアから発表された。 オリジナルは、1987年から91年まで5シーズンに亙って製 作されたもので、内容は、若い警官が学園に蔓延する青少年 犯罪を防止するために、最初は高校生となって潜入捜査に従 事するというもの。5シーズン続いた後半では、主人公は大 学生になっていたようだ。 その物語を、昨年大ヒットしたコメディ作品“Superbad” のジョナー・ヒルの脚本主演でリメイクする計画で、製作は 『スティルス』などのニール・モリッツが担当している。因 に、ヒルは全米公開中の“Forgetting Sarah Marshall”や “This Side of The Truth”などにも出演しているが、いず れもコメディ作品とのことで、本作もコメディ化される可能 性は高そうだ。 しかしながらコメディ作品は、アメリカで大ヒットしても なかなか日本では公開されず、その辺の状況も何とか打破し て貰いたいものだ。因に今回の製作には、テレビシリーズ当 時の製作者も名を連ねており、これでデップがカメオ出演で もしてくれると、日本公開の可能性も高まるのだが… * * お次は、メル・ギブスンによる2002年の『サイン』以来と なる主演作の計画が発表された。 計画されているのは“Edge of Darkness”という作品で、 内容は、活動家の娘を殺害された警官がその死の謎を追って 行く内に、組織的な汚職事件を解明することになる…という もの。ギブスンは娘を殺された警官役を演じる。 作品は、1985年にBBCで製作されたミニシリーズを原作 とするもので、そのオリジナルも手掛けた『カジノ・ロワイ ヤル』などのマーティン・キャンベルが映画版も監督。脚本 には『デパーテッド』でオスカー受賞のウイリアム・モナハ ンが起用されている。また製作も、『デパーテッド』のグラ ハム・キングが担当するものだ。 因に、ギブスンは原作ミニシリーズの大ファンだったのだ そうで、キングとキャンベルからのオファーには二つ返事で OKしたとのことだ。一方、ギブスンは『サイン』以降は、 『パッション』と『アポカリプト』の監督はしているが、映 画出演は、2003年“The Singing Detective”に準主役級で 出ている他は公式にはなく、またユダヤ人問題での舌禍事件 の後は多くの計画がキャンセルされたようだ。 しかし今回は、キングがそれを押してのオファーをしたと のことで、これを機会に過去の作品の全世界興行収入合計が 50億ドルを超えると言われるギブスンの復活が期待される。 ただし本作に関しては、キングが自費で製作を進めるとして いるもので、撮影開始は8月と発表されているものの、配給 会社等は決っておらず、まだ多少前途は多難なようだ。 * * アメリカの宇宙開発の初期に関った人々を描いた『ライト スタッフ』や、ブルース・ウィリス主演『虚栄のかがり火』 などの原作者トム・ウルフが、2004年に発表した小説“I Am Charlotte Simmons”の映画化を、アントニオ・バンデラス 主演『レッスン!』などのリズ・フリードランダー監督で進 めることが発表された。 原作は、1931年生まれのウルフが現代の大学生たちの繰り 広げる学園生活を描いたもので、この取材ためウルフは実際 に学生寮に長期滞在してその実態を観察したとされている。 このため会話などはかなり斬新なものになっているとのこと だが、実のところこの原作にはかなりの賛否両論があるもの で、その映画化にはいろいろな意味で注目が集まりそうだ。 製作と脚本は、1991年のケヴィン・コスナー主演作『ロビ ン・フッド』などを手掛けたジョン・ワトソンが担当。MT V出身のフリードランダー監督は『レッスン!』では手堅い 演出だったと思うが、さて今回はどのような作品が出来上が るか、楽しみなことだ。 * * ここからは、SF/ファンタシー系の情報を紹介しよう。 まずは“Iron Man”が爆発的なヒットとなったマーヴル・ スタジオから、2011年までの計画が発表されている。 それによると、エドワード・ノートン、リヴ・タイラー、 ティム・ロス、ウィリアム・ハート共演による第2弾“The Incredible Hulk”は、アメリカではユニヴァーサルの配給 で6月13日に公開される。 因に、この2作の日本公開はソニーの配給で行われること になっており、この内“Hulk”の公開は8月1日の予定で、 9月20日公開予定の“Iron Man”より先になる。アメコミの 映画化は、日本では微妙なところにあるが、いずれにしても 知名度の高い『ハルク』を先にするのは正解だろう。 そして本国での第3弾には、2010年4月30日の公開予定で “Iron Man”の続編の製作を進めることが発表された。実際 のところ第1作をまだ見ていない状況では、僕自身の判断は 出来ないが、実はこの続編製作の情報はアメリカでの第1作 公開の前日にすでに流されたもので、マーヴェルの自信のほ ども伺わせたものだ。 ロバート・ダウニーJr.、テレンス・ハワード、ジェフ・ ブリッジス、グイネス・パルトローら出演者の続編契約がど うなっているかは不明だが、もともと巨額の製作費が注ぎ込 まれる作品で、第1作がこのヒットなら問題はなさそうだ。 また2010年6月4日には、マシュー・ヴォーン監督による “Thor”の公開も予定されている。 この作品については、第111回、第115回などでも紹介して いるが、北欧神話に基づくスーパーヒーローが活躍するもの で、脚本は『ポセイドン』などのマーク・プロトセヴィッチ が担当。ストーリーには『ブレイド』などのデイヴィッド・ ゴイヤーが参加したという情報も一時流された。キャスティ ングは未発表だが、前2作並の大物起用が期待できそうだ。 そして2011年には、まず5月6日に“The First Avenger: Captain America”が登場。この作品についても第111回で紹 介しているが、元祖アメコミヒーローとも呼ばれる星条旗の コスチュームを纏ったスーパーヒーローがついにスクリーン に登場する。脚本は『X-メン2』などのザック・ペン。 さらに同年7月の公開予定で、そのCaptain Americaを初 め、Iron Man、Hulk、Thorも勢揃いする“The Avengers”の 計画も、ザック・ペンの原案で進められるようだ。 以上が2011年までの計画だが、実は、第111回の紹介では もう1本“Ant-Man”という計画も報告していた。しかし、 “Shaun of the Dead”などのエドガー・ライトの脚本監督 によりコメディ化して進められるその計画は、まだ公開時期 の発表には至っていないようだ。 一方、今回の発表では2009年の公開予定が抜けているが、 これは脚本家ストライキの影響で製作準備が整わなかったも ので、新興勢力としてはその辺の調整が難しかったようだ。 しかし直接配給を手掛けないのであれば、作品が1年間空い ても問題が生じることはない。 その他、マーヴェルの作品では“Spider-Man”“X-Men” “Fantastic Four”がソニーとフォックスで映画化されてい るものだが、この内“Spider-Man 4”に関しては、現在進行 中であることが明言されており、マーヴェルではかなり強力 に後押しをしているようだ。 * * 続いては1984年『グレムリン』などのジョー・ダンテ監督 の計画で、本格的なホラー映画を2本続けて撮ることが発表 された。 その1本目は“The Hole”と題された作品で、2人の少年 が自宅の地下室で偶然見つけた穴を探る内に、暗い恐怖に遭 遇する…というもの。脚本は、ケイト・ベッキンセール主演 『モーテル』などを手掛けたマーク・スミスが担当し、今夏 の終りごろの撮影予定となっている。 因に『モーテル』は、地下に掘られたトンネルなどの展開 が面白かった作品だが、同じ脚本家が超常現象系の本格的な ホラー作品でどのような手腕を見せてくれるか、ダンテの演 出共々楽しみなことだ。また、本作の製作者マイクル・リト ヴァックはダンテについて、「このジャンルでは伝説のよう な監督。彼はこの作品に絶妙な捻りを加えてくれるだろう」 と期待を寄せている。 そしてもう1本は“Bat Out of Hell”の題名で、危険な 貨物を運んでいた飛行機がハイジャックされたことに始まる 恐怖が描かれる。ドリュー・マクウィーニーとスコット・ス ワンの脚本で、今年の後半に撮影されるものだ。なお本作の 製作者には、『ファイナル・デスティネーション』などのウ ォーレン・ザイドが名を連ねている。 最近の作品は、2003年『ルーニー・チューンズ』、1998年 『スモール・ソルジャー』など、比較的軽い作品が多かった ダンテ監督だが、ここらできちっとしたホラーも見せてもら いたい。なお、この他のダンテ監督の関連情報では、前回も 報告したように、出世作とも言える『ピラニア』の3Dリメ イクが、『ハイテンション』などのアレクサンドル・アジャ 監督の手で進行中のものだ。 * * 今春開催されたニューヨーク・トライベカ映画祭で、グラ ンプリを受賞したスウェーデン映画“Lat den ratte komma in”(英題名:Let the Right One In)を、英語版リメイク 権を、イギリスのハマー・フィルムスと、ロサンゼルスに本 拠を置くスピットファイア・ピクチャーズが共同で獲得した ことが発表された。 物語は、12歳の少年と、その隣の家に住むヴァンパイアの 少女との初恋物語とのことで、一般映画も参加する大規模な 映画祭で、このようなジャンル映画のグランプリ受賞は珍し いものだ。因に、今回の映画祭には世界40カ国から120本の 参加があったとされており、審査は、『アバウト・ア・ボー イ』などの脚本家ピーター・ヘッジスや、『カサノバ』など の俳優オリヴァー・プラットらによって行われた。 という受賞作品のリメイクが行われるものだが、権利を獲 得したハマー・フィルムスというのは、1950年代、60年代に クリストファー・リーの『ドラキュラ』などで一世を風靡し たあのハマーのことで、実は、昨年オランダの投資グループ によって所有の権利が買収されて再建が行われているもの、 もちろんライブラリーからのリメイク権も多数保有している もので、今回の発表ではホラーの老舗が復活の狼煙を上げた ことにもなりそうだ。 * * ワーナーから、“The Ditch”と題されたオリジナル脚本 の権利を獲得したことが発表された。 この脚本は、MTVやドキュメンタリーの製作者サッシャ ・ペンが手掛けたもので、物語の背景は未来。木星の衛星に 設置された最高級のセキュリティを有する監獄を舞台に、看 守の家族が人質に取られ、その日に処刑の予定だったテロリ ストの解放が要求される…というお話だそうだ。 木星の衛星が舞台というと、1981年に公開されたショーン ・コネリー主演『アウトランド』が思い浮かぶが、宇宙西部 劇とも呼ばれたこの作品で、この領域はいわゆる辺境の町と いうイメージで使われていたものだ。それ自体安易な発想の ようにも思えるが、実際のところ小惑星帯の外側で、木星も 含めそれより先は土星、天王星、海王星など大惑星の領域と なると、そのイメージも間違いではないだろう。そんな辺境 を舞台に、今回はどんなドラマが展開されるのだろうか。 因にペンは、2005年にドイツで製作された“Antikorper” (Antibodies)という連続殺人鬼を描いたホラーサスペンス の英語版リメイクの脚色なども手掛けているようだ。 * * 『パイレーツ・オブ・カリビアン』などのゴア・ヴァビン スキー監督の計画で、“Bioshock”と題されたヴィデオゲー ムの映画化を、ユニヴァーサルで進めることが発表された。 オリジナルのゲームは、昨年発表されて200万本を越す売 り上げを記録し、さらに各種の賞も受賞するなど高い評価を 受けた作品だそうだ。その作品の映画化権をユニヴァーサル が獲得したものだが、その契約金額は数100万ドルとも言わ れ、これはマイクロソフト社とユニヴァーサル及びフォック スで結ばれた“Halo”の契約(500万ドル)に次ぐものと言 われている。 物語は、人々が自由な生活を送っている未来の海底都市を 舞台に、偶然の事故からその海底都市に隠された秘密が明ら かにされて行くというもの。ユートピアが崩壊して行くドラ マを描いたかなり物語性の強い作品とのことだ。 そしてその映画化を、ヴァビンスキーの製作監督で進める ものだが、脚本にはジョン・ローガンの起用も話し合われて いるとのことで、かなり大型の作品になりそうだ。少なくと も上記の契約金に見合うには、かなりの規模の作品になるこ とは間違いない。 製作時期などは未発表だが、注目して置きたい作品だ。 * * 最後にMGMの計画で、“Executive VP David M.Murch's Adventure in Zametherea”というオリジナルのコメディ作 品の権利を獲得したことが発表された。 この作品は、1999年に“Freak Talks About Sex”という 作品を発表しているピーター・スピークマンとマイクル・M ・B・ギャルヴィンのコンビが執筆したもので、現代版『オ ズの魔法使い』とも呼ばれている。 内容は、仕事重視で冷酷な証券マンの男性が、疎遠になっ ている10歳の息子を救出するため、子供の頃に訪れた魔法の 国を再訪しなければならなくなるというもの。そのままスト レートのドラマにしても良さそうなお話だが、さらにそれが コメディになっているようだ。 監督は未定だが、製作に『シューテム・アップ』を手掛け たリック・ベネイタールの名前があるのも気になる作品だ。 なおMGMでは、前々回紹介したように元ユニヴァーサル のメアリー・パレントを新代表に招いて、いろいろ活発に動 き始めているようだ。
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