井口健二のOn the Production
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2008年01月20日(日) 永遠の魂、タクシデルミア、黄金の羅針盤、恋する彼女西へ、トゥヤーの結婚、アメリカン・ホーンティング、結婚しようよ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『永遠の魂』“별빛 속으로”
昨年の東京国際映画祭「アジアの風」部門でも上映された作
品。実はその時にも見ているのだが、物語が複雑で容易に理
解できなかった。そこでもう1度見直して今回紹介する。た
だし、物語は理解できたつもりだが、かえって解釈に迷うと
ころのある作品だった。
物語の主人公は、大学で教鞭を取る中年の教授。ある日、彼
の前に2匹の蝶が現れ、それに誘われるように教室へと向か
う。そこには何人かの学生がいて彼に初恋の話をせがむ。そ
して彼は、20年前のまだ上京したてで内気な大学生だった頃
の話を始める。
ドイツ語科の学生だった彼は、ある日、教室で奇矯な態度を
取る1人の女学生と出会う。年上の彼女に仄かな恋心を持っ
た彼だったが、学内で行動を共にする内、突然彼女は自殺を
遂げてしまう。そしてその日から、彼の周囲に不思議な事が
起こり始める。
死んだはずの彼女が目の前に現れ、彼にアルバイト先を紹介
する。それは先輩男性の妹の家庭教師だったが、先輩は自分
のことは妹に話すなと指示する。そして、長いエントランス
を持ち、居間にはビリヤード台のある屋敷での家庭教師が始
まるが…
1980年代が背景なのだろうか、朝鮮半島はまだかなりの緊張
状態にあるらしく、突然、市内に空襲警報が鳴り響いて対空
砲火が始まったりする。また、毎日夕方には国旗降納の放送
が行われ、その間は全員が直立不動で国旗を見つめなければ
ならないようだ。
そんな中で、屋敷に1人で住む謎めいた少女と、主人公との
不思議な恋物語が始まる。
実は、主人公とその少女は対空砲火の流れ弾で死亡して、そ
の後の49日間を地上で過ごしている間の話だというのだが、
その後にどんでん返しがあって彼らは現世に戻される。その
辺の経緯が不明瞭で、どうやら兄と自殺した女学生の思惑が
あるらしいのだが…
これが単純に2人を引き合わせるだけのことなら、回りくど
いだけの話でしかもその間の妹の所在が変なことになる。結
局、映画を解釈しようとしても、その辺りの辻褄合わせがう
まくできなくなってしまったものだ。
ただ、中年の教授のエピソードを見ると、主人公は人々の死
と生を司る能力を備えているようで、それは、ジャン・コク
トーの『オルフェ』を思い出させるオートバイの登場でも暗
示されている感じがした。
結局、主人公は死と生を司る能力を持っているがそれに気付
いておらず、少女の兄と自殺した女学生がそれを気付かせる
ために工作した物語という解釈が成立しそうだが、それで良
いのだろうか。

出演は、いずれもテレビ出身で、主人公は日本でも人気があ
るというチョン・ギョンホ、それにキム・ミンソン、チャ・
スヨンの女優陣が共演している。また、ミュージシャンのキ
ム・Cが出演して主題歌も提供しているものだ。
因に、監督のファン・ギュドクは韓国映画アカデミーの第1
期生で、現在はそこで教鞭を取る傍ら作品を発表しており、
特に溝口健二監督の『雨月物語』を敬愛しているそうだ。
なお本作は、以前に紹介した『黒い土の少女』『俺たちの明
日』などと共に、「韓国アートフィルムショーケース2008」
の1本として公開される。

『タクシデルミア』“Taxidermia”
2007年の米アカデミー賞外国語映画部門にハンガリー代表と
してエントリーされた作品。因に、脚本はNHK/サンダン
ス映画祭に出品され受賞したもので、本来、受賞作の映画化
には出資と、日本公開を手掛けるNHKが、本作ではそれを
拒否したとのことだ。
題名は「剥製師」という意味だそうで、映画ではその剥製師
にまつわる親子3代の物語が綴られる。その最初は、祖父の
物語で、雪に閉ざされたとある屋敷に一兵卒として駐留する
男の行状が描かれる。
続いては、大食いチャンピオンだった父親の話で、共産主義
のソ連影響下のハンガリーでライヴァルやソ連代表との戦い
が繰り広げられる。最後はその息子の剥製師の話で、巨大化
した父親の剥製を完成させ、そして…と続くものだ。
まあ文章で書くとこんなものだが、実際の映像はかなりグロ
テスクで、しかも破廉恥で、NHKが拒否したのも理解でき
るところだ。しかし、それを乗り越えたところにこの作品の
価値があると言われれば、それもそうとも言える。
試写会では、特に女性からは「気持ちが悪くなった」などの
発言が聞かれたが、僕自身の正直な感想は、やるならもっと
突き詰めて欲しかったところで、その辺はちょっと中途半端
にも感じられた。
物語は、結末として主人公が自分の剥製を作る過程を描き、
生命維持装置を使って行動力を保ちながら身体の末端部分か
ら剥製化して行き、最後は右腕と頭部だけになって…という
作業が描写される。実はこれがなかなかのもので、これは見
ていて納得ができた。
そう言えば、昔のソ連で自分の盲腸に手術をしたという医者
のニュースを見た記憶があるが、監督はそこからのインスパ
イアされたのかな。

それにしてもこの最後の話は、SF映画ファンならニヤリと
するかなり強烈な話ではあった。でもここまでやれるなら、
もっとこの部分を突き詰めて描いて欲しかった感じもすると
ころで、特に、ただ下品なだけの祖父の話などは飛ばして、
最後をちゃんと描いて貰いたかった。勿論、だからといって
NHKが認める作品になる訳ではないが。
なお前半2つの物語は、本作に出演もしているLajos Parti
Gagyという作家の短編小説の原作によるようで、最後の息子
の話だけが監督の創作とのことだ。それで前半もちゃんと描
かなくてはならなかったのかも知れないが、出来ることなら
監督の創作部分だけでの再映画化を期待したいものだ。

『ライラの冒険・黄金の羅針盤』“The Golden Compass”
海外では、His Dark Materialsと呼ばれるフィリップ・プル
マン原作のファンタシー3部作、その第1部の映画化。
その世界は、我々の住む世界とはちょっと違う。そこに生き
る人々には、皆ダイモンと呼ばれる守護動物がいて、精神の
一部を分かち合っている。そして世界は、教権という組織に
支配され、その教権はさらに力を増そうとしていた。
物語の主人公のライラは、お転婆で嘘も平気で吐くような少
女。オックスフォードの大学に務める叔父の庇護の許にいる
が、叔父は研究のために出掛けて滅多に帰ってこない。そん
な叔父から、一つの品物がライラに託される。
「黄金の羅針盤」それは物事の真実を指し示すもので、昔は
沢山あったが、今はほとんどが教権によって回収され、ライ
ラが受け取ったのは、正にその残された最後の1個だった。
そしてそれを巡って教権が動き出す。
一方、ライラの叔父は教権の権力の許となっている主張を覆
す事実を北の地で発見し、その確認のために旅立つ。そして
ライラも、1人の女性の手助けによってその後を追うことに
なるが…
ちょっと中世のような町並や、その中に不思議なメカを搭載
した飛行船が登場するなど、雰囲気には宮崎駿や大友克洋の
アニメを感じさせるものがある。物語も少女が主人公だし、
1995年に発表された原作がそれらの影響を受けた可能性はあ
りそうだ。
そんな訳で、異世界ファンタシーの物語ではあるが、どちら
かというと日本の観客にも親しみやすい作品と言える。
ただし『LOTR』のような壮大なスケールを期待すると、
それほどのものではない訳で、上映時間が2時間弱というこ
ともあるが、多少物足りなさを感じるところもある。しかし
基本お子様向けの作品と考えれば、これで充分なものではあ
るのだろう。
出演は、ライラ役に15,000人のオーディションで選ばれた新
星ダコタ・ブルー・リチャーズ。原作のファンで、演じるの
は自分しかいないと考えて応募したという読者の代表だ。
他に、ダニエル・クレイグ、ニコール・キッドマン、エヴァ
・グリーン、サム・エリオット。また、ダイモンの声を、フ
レディ・ハイモア、クリスティン・スコット・トーマス、キ
ャシー・ベイツ、イアン・マッケランらが担当している。
脚本、監督は、2002年の『アバウト・ア・ボーイ』を手掛け
たウェイツ兄弟の片割れクリス・ウェイツ。海外では37カ国
で初登場第1位の興行を記録したそうだ。

『恋する彼女、西へ』
広島ものという情報だけを得て試写を見に行った。
昨年には『夕凪の町、桜の国』が公開されたし、その前にも
『父と暮らせば』があって、原爆=広島ものは、次はどんな
手立てで来るか…という感じにもなってしまうところだが、
今回は少し自分のテリトリーにも近付いて、多少意見の述べ
たくなる作品だった。
物語の舞台は現代、主人公は30路に差し掛かったキャリアウ
ーマン。元々は建築家を目指していたが、今はホテルチェー
ンの建設を行う会社の営業担当で、社内ではオツボネ様との
陰口もあるが、今回は新人が失敗した地主との交渉再開のた
め広島にやってくる。
そして2005年の夏の暑い日、平和公園の近くにある古い橋の
上で、真新しい帝国海軍の軍服に身を包んだ若い男に遭遇す
る。その時、街には戦後60年を記念して60年前の旧型の路面
電車が復活運行されていた。
SFの題材が、こんなにも簡単に物語に入ってきてしまうと
いうのは、何とも感慨というところだが、原作脚本を手掛け
たのは、今年の大河ドラマ『篤姫』も担当している田淵久美
子で、そういう脚本家がこのような題材を扱うということに
も驚かされた。
しかも、主人公が原爆投下直前の過去に飛ばされて、そこで
右往左往させられるという話は、脚本としては作りやすいと
思われるが、本作では逆に過去から現代にやってくるという
もので、それで話を作るというのは案外難しいものだ。
しかし本作では、それをキャリアウーマンの恋愛という形で
見事に昇華させて、素敵にロマンティックな物語に仕立て上
げている。そしてその物語を、主演の鶴田真由と池内博之が
見事に演じている作品だ。
それがこの作品の目的だし、その点では何の問題もない作品
だろう。しかし、SF映画の観点ではいろいろ注文が生じて
しまうのが残念なところだ。しかもこれが、ちょっとした工
夫でもっと良くできたと思われるのだ。
この作品の問題点は、過去から来た男が、死ぬことが判り切
っている過去に帰る必要があるのかという一点に絞られる。
その理由付けがこの作品では、彼が現代で1人の老人に出会
うことによっているのだが、それが本作では過去の自分だっ
たからと説明される。しかしこれでは過去に戻る理由付けに
はならない。
何故なら過去に戻らなくても自分はここにいるのだし、それ
によって生じるのは、1人の老人が過去の世界で消えたとい
うことでしかないからだ。そしてその老人が消えたことによ
る歴史の改変は微々たるものでしかない。それが『サウンド
・オブ・サンダー』になる可能性はあるが、本人的には戻る
必要はないとするのがSF的な解釈だろう。
では、この物語で過去に戻る必要が生じるのはどのような場
合か。それはこの老人がその男によって救われたとする場合
だ。この時点で彼は、自分が過去に戻っても人々を救えると
は確信していないはずだ。でもここにたった1人かも知れな
いが、少年を救ったという事実がある。それなら自分は過去
に戻らなくてはいけない。
そして、その彼の行為が最後老人によって語られたときに、
この物語はSFとして完結する。自分自身のためより他人の
ため、その方が物語としても感動的なものになると思うのだ
が…

本来この作品はラヴロマンスとして構築されたものだし、そ
の目的は充分に果たされていると思われる。しかしそこにS
F的な題材を持ち込んだのなら、SFとしても完結して欲し
いと思うのが僕の立場だ。
その意味でこのサイトでは、そのちょっとしたヒントを提示
することをこれからもしていくつもりだ。

『トゥヤーの結婚』“圖雅的婚事”
2007年のベルリン映画祭でグランプリの金熊賞を受賞した作
品。内モンゴルを舞台にある女性の特別な結婚が描かれる。
トゥヤーは内モンゴルの草原で夫と2人の幼い子供と一緒に
暮らしていた。ところが、その夫がダイナマイトの事故で下
半身不随になってしまう。
羊の放牧で暮らしを立てる一家には、水の確保が最重要事項
だったが、乾燥化が進むその土地の井戸は10kmも離れ、駱駝
を引いてそこに水を汲みに行くのがトゥヤーの日課になる。
しかしそれは、女性には過酷な労働だった。
そこで夫は離婚を申し立てトゥヤーに健常な男との再婚を促
すが、トゥヤーは離婚は認めるものの、再婚相手には元の夫
と同居し、その面倒を見ることを条件とする。そして美人の
トゥヤーの許にはいろいろな再婚相手が次々に現れるが…
再婚にこのような条件を付けることが、現地においてどのく
らい非常識なことかは判らないが、元の夫との愛情の板挟み
の中でトゥヤーの苦しみが見事に描かれている。一方、再婚
相手の男たちの事情もいろいろな側面で描かれ、それが中国
の現状を顕してもいる。
そんな社会的な側面も持った物語が、内モンゴル自治区の広
大な荒野(少し前までは草原だったはずだ)を背景に展開さ
れる。それにしても、このような荒野を背景にした作品を何
度見ていることか。映画は、砂漠化の恐ろしさも伝えている
ものだ。
脚本監督は、2000年の『月蝕』で注目を浴びたワン・チュア
ンアン。脚本には、チェン・カイコー監督『さらば、わが愛
/覇王別姫』なども手掛けたルー・ウェイも参加している。
撮影は、ベルリン映画祭で『月蝕』を観て以来、監督の作品
に参加しているドイツ人のルッツ・ラテマイヤーが担当。
トゥヤー役は、監督の全作に主演し、各地の映画祭の主演賞
を受賞しているユー・ナン。今後は、ウォシャウスキー兄弟
監督が日本製アニメの『マッハ Go!Go!Go!』を実写映画化す
る『スピード・レーサー』にも出演しているそうだ。
またその他の夫や隣人の役などには、現地の素人の人たちが
起用されているようだ。それにしても、映画の背景となった
この土地に、緑の草原が復活することはないのだろうか。

『アメリカン・ホーンティング』“An American Haunting”
ドナルド・サザーランド、シシー・スペイセク共演、2005年
製作のオカルトスリラー。
1817−1935年にアメリカのテネシー州アダムスに住むベル一
家を襲ったBell Witchと呼ばれる怪奇現象を題材に、現代的
な解釈も加えてホラー作家のブレント・モナハンが1997年に
発表した長編小説の映画化。
映画の物語の発端は現代。とある家に引っ越してきた母子の
娘が怪奇な悪夢にうなされるようになる。それには屋根裏で
見つかった品物が影響しているようだった。そして心配する
母親はその中から古く変色した書状を発見。それには驚愕の
物語が綴られていた。
1817年、それはベル一家の1人娘ベッツィーがポルターガイ
スト現象に襲われたことから始まる。彼女を襲った現象は、
教会の神父たちの徐霊にも関わらず、その激しさを増して行
く。そしてその矛先は父親にも向き始める。
実話とされる物語は、1894年に刊行された出版物もあるほど
の歴史的なもので、その後も数多くの書物が出版されている
ようだ。因に2002年にも“Bell Witch: The Movie”という
映画化があって、その作品は本作の公開後にDVDでリリー
スされたそうだ。
ただまあ、今回の映画化された物語の解釈がどこから出てき
たものかはよく判らないが、年頃の娘を持つ父親としてはか
なり厳しいもので、その点では現代の部分も含めてちょっと
考えさせられてしまった。最近この手の話が多いのも、時代
なのだろうか。

上記の他の出演者は、ベッツィー役に、2003年の『ピーター
・パン』のウェンディ役でデビューし、最近では『パフュー
ム』のヒロイン役の他、製作中のロバート・E・ハワード原
作“Solomon Kane”にも出演しているレイチェル・ハード=
ウッド。
また、『マスター・アンド・コマンダー』や、レニー・ハー
リン版『エクソシスト:ビギニング』では神父役を演じたジ
ェームズ・ダーシーも登場する。
脚本監督は、『ダンジョン&ドラゴン』のコートニー・ソロ
モン。また特殊効果を、『エイリアン』や『スター・ウォー
ズ/帝国の逆襲』のニック・アルダーが手掛けている。

『結婚しようよ』
吉田拓郎の楽曲に載せて、中年の父親の家族に対する思いを
描いた作品。
自分自身のフォーク体験でいうと、一番聴いていたのは、高
石、岡林、フォークル、五つの赤い風船の辺りで、拓郎はあ
まり思い入れもないし、歌も本当の代表作しか知らない。で
も、拓郎を中心としたつま恋などが、日本フォークの全盛期
だったことは理解するし、そういったことでは、この物語の
主人公の父親の心情も理解できるものだ。
物語の主人公は、三宅裕司演じる不動産屋の営業マン。郊外
の駅からは少し離れた住宅地の一戸建てに住み、家族は学生
結婚した妻と、大学4年生と2年生の娘の4人。その家では
主人公の決めたルールで、夕食は一家4人が揃って食べるこ
とになっている。その団欒が主人公にとって一番の幸せを感
じるときだ。
そんな主人公が、ある日、帰宅途中の駅前で吉田拓郎を歌う
路上バンドに遭遇。思わず口ずさんでいる姿を若い男に目撃
されてしまう。その男は阪神大震災で蕎麦屋だった両親を亡
くし、叔父を頼って上京後、現在は一人暮しで蕎麦屋で職人
の修業しているという。そんな若者を、主人公は一家の夕食
に招くのだが…
その一家では、長女はすでに春からの就職も決まり、次女は
バンド活動で華やかな舞台を目指している。そして主人公の
思いとは裏腹に、それぞれ夕食に合わせての帰宅が難しくな
ってきている。一方、主人公には職場の第一線から退くこと
が勧められ、主人公は最後に手掛けた老夫婦の家の修繕に腐
心するようになる。
それでも主人公は、夕食には一家4人が揃うことを願い続け
たが…。これに主人公と妻との出会いの話や次女のバンド活
動の様子などが、吉田拓郎の楽曲に載せて織り込まれる。
脚本監督は、『出口のない海』『夕凪の街、桜の国』などの
佐々部清。1958年生まれの監督が、20代の頃から作りたかっ
た作品だそうだ。ただし、元々の構想は拓郎の楽曲だけを使
用した映画というもの。それが、今の監督の心情に合わせて
このような作品になったようだ。
同じような年頃の娘を持つ父親の心情というか、長く勤めた
職場を離れることになった主人公の心情なども、今の自分と
してはいろいろ感じてしまうところではある。しかも妻との
関係なども、思わず納得してしまう作品だった。
50代の男性が、自分の人生を振り返って観るのに良い作品と
思うし、「夫婦50割」は、制度としては去年夏で終了したが
そのまま継続している映画館も多いようで、そんな夫婦で観
るのにも良い映画にも思えた。
出演は、三宅の他には真野響子、藤澤恵麻、中ノ森BAND
のAYAKOの一家に、金子勇太、田山涼成、入江若葉、松
方弘樹。さらに中ノ森BANDとガガガSPが拓郎の楽曲を
熱唱する。
挿入曲は20曲、全曲が拓郎の作品というものだ。特に中ノ森
BANDで、『やさしい悪魔』と『アン・ドゥ・トロア』が
聴けたのは嬉しかった。


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井口健二