※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はニュースが多量なので、早速始めることにしよう。 まずは、昨年度の全米興行で2億4261万ドルを稼ぎ出し、 第5位の成績を記録したジム・キャリー主演の神様コメディ 『ブルース・オールマイティ』の続編が計画されている。 前作で、キャリー扮する主人公は、神の休暇中の代役で振 り回されたが、今度は神の啓示によって第2のノアの箱船を 作らされることになるようで、映画化される脚本の題名は、 “The Passion of the Ark”。この脚本、ボビー・フロスハ イムとジョシュ・ストルバーグという新人脚本家チームが執 筆したものだが、実は発表された時点では、前作とは無関係 のものだった。 ところが、前作を監督したトム・シャドヤックが、この脚 本が続編として使えることを思いつき、直ちに前作を製作し たユニヴァーサル/スパイグラスにその意向を伝え、4月に 行われたオークションに臨むことになった。しかし彼らは権 利の獲得に失敗、権利はソニーに持って行かれてしまった。 なおソニーは、この権利を最低150万ドルから最高250万ドル の契約金で獲得したものだが、これは映画化実績のない脚本 家では史上最高額だったということだ。 とはいえ諦め切れないシャドヤックは、自らソニーに赴き 共同製作を直接申し入れたということで、この申し入れをソ ニーは一も二もなく了承。これにより続編は、ソニー/ユニ ヴァーサル/スパイグラスの3社の共同製作で実現されるこ とになった。また、前作にも参加した脚本家のスティーヴ・ オーデカークが、続編にマッチするように脚本をリライトす ることも決まっているようだ。 因に、最初は異なる脚本から続編が作り出されたケースで は、ジョナサン・ヘスレイ原作の“Simon Says”という脚本 から、1995年に『ダイ・ハード3』が作られた例があるが、 そのために他社まで巻き込むというのは珍しいことだろう。 ということで、この続編は前作と同じ監督の下で進められ ることになったが、問題は、キャリーが中々続編には出たが らない性分だということで、今までにも、『マスク』『Mr. ダマー』の続編は断られている。しかし今回は、『エース・ ベンチュラ』の続編も実現した盟友シャドヤック監督作品と いうことでどうなるか。なお、オーデカークのリライトは、 主演の変更も考慮した2面作戦で進められるようだ。 * * お次は、新規巻き直しの計画で、すでに撮影が開始された “Batman Bigins”に続いて、待望の21世紀版“Superman” の製作準備が本格化してきた。 そこで今回新たに公表された情報は、VFXを『マトリッ クス』を手掛けたESCが担当。またアニマトロニックとス ペシャルメイクのベテラン=スタン・ウィンストンの参加も 発表されている。さらに製作総指揮には、『スタースキー& ハッチ』などのギルバート・アドラーの起用が報告されてい るが、実はこの3者、先にキアヌ・リーヴス主演のDCコミ ックスの映画化“Constatine”でも一緒に仕事をしたところ で、その流れで新作への参加もスムースに決まったようだ。 そしてワーナーは、J.J.アダムスの脚本、McGの監 督による新作の撮影を、年内にも開始したいということなの だが、実は肝心の主演者がまだ発表されていない。この主役 については、一時はブレンダン・フレイザーがかなり有力だ ったものだが、彼自身本作への出演は希望しているものの、 それは主人公ではないとのことで、結局、主演はまだ決まっ ていないということのようだ。 ところで本作は、“Batman Bigins”と同じく物語の起源 に戻ることが予定されているが、そこで登場するスーパーマ ン=カル・エルの父親ジョー・エル役を、ジョニー・デップ が希望しているという情報がある。デップの本作への出演に 関しては、当初は敵役のレックス・ルーサーがオファーされ ているという情報もあったものだが、本人の希望は父親の方 だということだ。 因に、前シリーズでジョー・エル役はマーロン・ブランド が演じたものだが、デップは1995年の『ドンファン』で共演 したブランドを大変尊敬しているのだそうで、今回のデップ の希望にはそういう意味合いもあるようだ。当時のブランド に比べると、現在のデップではちょっと若いようにも感じる が、よく考えると、ジョー・エルはカル・エルが赤ん坊の頃 に送り出すのだから、この方が正しいような気もする。それ より、周囲と対立して災害の危険性を訴える姿が楽しみだ。 * * 続いてはリメイクの情報を2つ。 まずは、1980年にケン・ラッセル監督によって映画化され たSF作品“Altered States”(アルタード・ステーツ)の リメイクが計画され、その脚色に、パラマウントで進められ ている『ターン』のハリウッドリメイクなども手掛けている ファーンレイ・フィリップスの起用が発表されている。 オリジナルは、1976年の『ネットワーク』などで3度のオ スカー脚本賞に輝く脚本家パディ・チェイエフスキーの原作 小説を映画化したもので、当時流行の最先端だった瞑想タン クを応用して、人類の進化の過程を探ろうとした若き科学者 の禁断の実験を、ディック・スミスのスペシャルメイクや、 最先端のVFXを多用して描いている。 そして映画は、公開後にはカルト的な評価を得て、特にテ ーマとなった瞑想タンクを描いた作品では、最高傑作とも言 われているものだが…。実は、映画の製作時には、原作者自 ら行った脚色と監督のヴィジョンが対立、最終的にチェイエ フスキーが脚本のクレジットを下ろしてしまったという曰く 付きの作品。またその後は、テレビなどへの登場も少なく、 アメリカでは幻の作品になっているということだ。 その作品のリメイクだが、今回製作を担当するワーナーの グレッグ・シャピロは、「オリジナルの映画化は、そのアイ デアが多くの人に愛されたものだが、映画は原作を正しく伝 えたものではない。今回の脚色を依頼したファーンレイは、 サイコロジカルホラーの感覚にも優れ、ゴシックホラーの味 を付け加えることもできて、オリジナルの映画化で失われた これらの要素を復活させることができる」としており、今回 は原作に則した映画化が行われることになりそうだ。 因にオリジナルは、本作が映画初主演だったウィリアム・ ハートを一躍有名にし、また彼の幼い娘役で、ドリュー・バ リモアが映画初出演した作品としても記録されている。 * * もう1本は、先日“Dawn of the Dead”(ゾンビ)のリメ イクが公開されたばかりのジョージ・A・ロメロの作品で、 “Night of the Living Dead”と“Dawn of the Dead”の間 の1972年に製作された“The Crazies”のリメイク計画が発 表されている。 オリジナルのお話は、ペンシルヴァニアの小さな町に突然 軍隊が派遣され、町が封鎖されるところから始まる。しかし この軍事行動について住民には何の事情説明もなく、やがて 不安に駆られた住民の一部は、軍隊に反抗して町を脱出しよ うとするのだが…。映画はこの展開を、住民側と軍から派遣 された調整官のような男を主人公にして描いたものだったと 記憶している。 なお、このオリジナルは、日本では劇場公開はされなかっ たが、『ゾンビ』の公開後にテレビで紹介されもので、その 現実的というか、かなりドライな描き方が、ロメロの本質を 良く表わしていたという印象を持ったものだ。 そして今回、この作品のリメイクを計画しているのは、パ ラマウントとの優先契約を結んでいるペン・ステーションと いうプロダクションで、計画ではアップデイトした作品にす るとだけ紹介されていたが、オリジナルも充分現代に通用す る話だったと記憶しているので、出来るだけオリジナルを活 かした脚本にしてもらいたいものだ。 因に、ペン・ステーションは、昨年秋にパラマウントとの 優先契約を結んだものだが、今回の発表されたリメイクの他 にも、今年1月1日付の第54回と2月15日付の第57回でも紹 介したマイクル・マーシャル・スミス原作のSF“Spares” の映画化や、ヴィクトリア・レイクマン脚本のロアルド・ダ ール風ファンタシー“The Girl Who Could Fly”の映画化も 進めており、別段ジャンル専門という訳ではないようだが、 ちょっと期待したいプロダクションだ。 * * またまたトリロジーの映画化計画で、イアン・オギルヴィ 原作の3巻シリーズの第1巻“Measle and the Wrathmonk” を、“The Polar Express”で採用されたCGアニメーショ ン製作の新手法performance captureの第2弾として製作す る計画が、ワーナー/イメージムヴァースから発表された。 この原作は、本国イギリスでは今年の6月、アメリカでも 8月に出版が予定されているもので、お話は、両親が行方不 明になった少年が、ちょっと変な叔父さんと一緒に暮らすこ とになるが、この叔父さんというのが実は魔法使いで、少年 はそれに気付く前に縮小され、おもちゃの汽車が走るジオラ マの世界に送り込まれてしまうというもの。かなりファンタ スティックな展開が予想できる内容で、CGアニメーション にもピッタリな題材と言えそうだ。 そしてこの物語を、performance captureで描くというこ とだが、この手法は、旧来のmotion captureを発展させたも ので、特に俳優の演技をそのままCGアニメーションに転換 することで、3DのCGアニメーションの製作を従来より短 時間で行うことができるというもの。また、前回報告したよ うに、“The Polar Express”は3D-Imaxで上映することも発 表されているが、実はその発表の際に、監督のロバート・ゼ メキスは、このような作品を毎年公開したいとも発言してお り、今回の計画はそれにも合致したもののようだ。 なお、原作者のオギルヴィは、イギリスで製作されたリメ イク版の“The Saint”シリーズで主人公を演じた俳優で、 実はゼメキスが1992年に監督した『永遠に美しく…』にも出 演していた。そして俳優活動の傍ら執筆活動を始め、すでに 本シリーズ第2巻の“Measle and the Dragodon”は完成し ており、イギリスでは今秋、アメリカでも来春出版の予定に なっている。さらに第3巻の“Measle and the Mallockee” の執筆も進んでいるということだ。 ゼメキスとしては因縁浅からぬ作品ということになりそう だが、新技術を駆使した面白い作品を期待したいものだ。 * * もう一つ、トリロジー映画化の情報は続報で、2002年3月 1日付の第10回で紹介したフィリップ・プルマン原作“His Dark Materials”の映画化について、第1作の“The Golden Compass”の監督に、『アバウト・ア・ボーイ』のクリス・ ウェイツが有力になってきた。 因に前回は、『LOTR』の第1作が公開されて大成功を 納めた直後のニューライン・シネマが、この映画化権を獲得 したという報告だったが、その後同社では、『恋におちたシ ェイクスピア』のトム・ストッパードと契約して脚色を進め る一方、数多くの監督にこの計画を紹介してその選考を進め ていたものだ。 その中でウェイツは、このトリロジーを映画化するに当っ ての彼自身の考え方をまとめたかなり長文の論文を提出し、 それがプルマン、ストッパードと、ニューライン側にも気に 入られて、今回の起用が有力になったということだ。とは言 うものの、今までコメディの実績しかない監督をこのファン タシー大作に起用するのはかなりの賭けだが、それをさせた 論文は相当のものだったのだろう。 またニューラインには、それまではあまり実績のなかった ピーター・ジャクスンに、『LOTR』を任せて大成功した という思いもある訳で、今回もウェイツの熱心さに賭けてみ ようという気分になったのかもしれない。なおウェイツは、 今までの作品は全て兄弟のポールとの共同監督だったが、す でにポールは単独の作品を手掛けているということで、今回 はクリス単独の監督作品になるようだ。 ということで、ウェイツの監督が決まりそうなのだが、実 は決定と言えないのにはいくつか問題が残っていて、その一 番目は、ウェイツはすでに完成しているストッパードの脚本 を使わずに、自ら脚色をし直すと言っているということだ。 しかし、まだその脚本は執筆されていない訳で、脚本の作り 直しとなるとかなりの時間が掛かることになる。 またこのシリーズでは、第3巻の“The Amber Spyglass” が、子供向けの作品では初めてイギリスの文学賞のホワイト ブリード賞を受賞して話題になったものだが、実はこの第3 巻は内容的に映画化がかなり困難なものということで、ニュ ーラインでは3作を再構成して2部作で映画化することも検 討していると言われている。しかしそうなると、ウェイツが またどう動くかも不明ということで、監督の契約が交わされ るまでには、まだ少し時間が掛かりそうだ。 * * トリロジーの次は、その10倍のすでに30巻に達することが 発表されている長大シリーズで、ピアズ・アンソニー原作の “Xanth”の映画化が本格的に動き始めた。 このシリーズの映画化に関しては、以前からワーナーが権 利を所有していたものだが、今回は、1977年に発表されたそ の第1作“A Sell for Chameleon”の映画化に、『トロイ』 が公開されたばかりのウルフガング・ペーターゼン監督と、 同作の脚本を手掛けたデイヴィット・ベニオフの参加が発表 された。 この原作は、日本でもすでに10数巻が翻訳されているが、 ザンスと呼ばれる魔法世界を舞台に、その世界に住む少年の 成長を描いたもの。僕自身は原作の読者でないので詳しくは 判らないが、参加の決まったベニオフは、一時は彼自身で映 画化権を獲得しようとしたこともあるほど原作が気に入って いるということで、彼は、「『LOTR』が完結し、続いて “The Lion, the Witch and the Wardrobe”が準備されてい る現在では、残された最後の大作」と評している。 同じ言葉は、最近別の作品でも聞いたような気がするが、 いずれにしても30巻も続いているということは、それだけの 読者が確保されているということだ。因に、このシリーズ、 本国アメリカでは今年第28巻が刊行され、来年第29巻、さら に第30巻が現在執筆中ということになっている。 そして、『トロイ』でチームを組んだベニオフとペーター ゼンの参加となった訳だが、実は、ベニオフ自身はすでに執 筆のスケジュールが一杯で、今回の脚色は直接執筆すること はできないようだ。しかし、ペーターゼンと共に有望な脚本 家を選抜して、その管理監督をするとしている。 一方、ペーターゼンの方も、本作を監督すれば、1984年の 『ネバーエンディング・ストーリー』以来のユース・ファン タシー作品となるものだが、彼には2002年6月15日付第17回 などで紹介したオースン・スコット・カード原作の冒険SF シリーズ“Ender's Game”の監督が決定しており、こちらも 別の監督が立てられることになりそうだ。 因に、“Ender's Game”の映画化については、先に『X− MEN2』を手掛けたマイクル・ドアティ、ダン・ハリスの 脚本家コンビの起用が発表されるなど、映画化の準備が急に なっているようで、一気に2つのシリーズの映画化が進み始 めている。 * * 後半は短いニュースをまとめておこう。 まずは、前回に続いてハリスン・フォードの新作情報で、 ジェームズ・キャメロン主宰のプロダクション=ライトスト ームが製作するSF作品への出演が発表されている。 この作品は、『The Eye』のハリウッドリメイクな ども担当しているライン・ダグラス・ピアスンのオリジナル 脚本によるもので、題名は“Godspeed”。現在建設中の国際 宇宙ステーションの完成後を舞台にした物語で、ステーショ ンの居住者全員の生命が脅かされるような危機を描いた作品 ということだ。そしてこの映画化では、キャメロンが『タイ タニックの秘密』の撮影のために開発した3Dカメラが全面 的に採用され、全編3Dによる長編作品が計画されている。 製作は今秋に開始され、フォードの出演シーンの撮影は来年 早々の予定になっている。 ただしフォードは、“Indy 4”の製作が開始されたときに は、ただちにそれに参加することを約束をしているというこ とで、そのスケジュールがどうなるかは不明だそうだ。 また今回の計画は、第56回で紹介したキャメロンの監督計 画とは別のもののようで、監督はこれから選考されるとして いる。そしてこの場合に、キャメロンの監督作品の配給につ いてはフォックスが優先権を持っているが、今回は別の監督 ということで、配給会社もこれから選考されるようだ。 * * 『ヒューマン・ネイチャー』などのミシェル・ゴンドリー 監督で、“Master of Space and Time”というSFスリラー の計画が進められている。 この作品は、“Software”などの電脳系の作品で知られる SF作家ルディー・ラッカーが1984年に発表した原作を映画 化するもので、内容は、2人の科学者が思念を実体化する装 置を発明したことから始まる騒動を描いたもの。そしてこの 主演に、『スクール・オブ・ロック』のジャック・ブラック を起用する計画も発表されている。 ただしこの計画、現在は、原作の映画化権をフランスのプ ロダクションが所有しており、そこから参加を要請されたゴ ンドリーがそれをドリームワークスに持ち込んで、同社がフ ランス側と交渉中とのことだ。従って、その交渉がまとまれ ばドリームワークスでの映画化が行われることになるものだ が、ブラックには“King Kong”などの予定も詰まっている ので、実現は少し先になりそうだ。 なお、この映画化権を所有しているフランスのプロダクシ ョンの名前が、Midi Minuitとなっていたが、『好きと言え るまでの恋愛猶予』の映画紹介でも触れた昔のSF映画専門 誌の流れを汲むものなのだろうか。 * * 最後に、アメリカでは記録的な大ヒットで幕を明けた『シ ュレック2』に関連して、第62回で紹介した“Shrek 3”と “Shrek 4”の計画がアメリカでも報道された。そしてその 報道によると、シュレックが故郷に帰るのは“4”でのお話 とされており、前の紹介はちょっと違っていたようだ。また そうなると、前に建てた予想も違ってきそうだ。 一方、すでに準備が開始されているという“3”について は、ヴォイスキャストとして主演3人の他に、今回長ぐつを はいたネコを演じたアントニオ・バンデラスの契約も結ばれ ているということで、ドンキーとネコの凸凹コンビの活躍が さらに続くことになるようだ。
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