※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 第29回で報告した郵便の遅延は、未だ完全には復旧してい ない。それに、今期はキネ旬が決算号で休載でもある。とい うことで今回は、以前に報告し損ねたちょっと古い情報や、 年始に発表された統計などから紹介することにしよう。 * * まずは全米興行成績の統計で、2002年の年間成績で第1位 に輝いたのは、403,706,375ドルの『スパイダーマン』。2 位は310,306,606ドル『クローンの攻撃』。そして3位と4 位には、早くも『二つの塔』(268,606,211)と『秘密の部 屋』(253,040,825)が入っている。 この後、5位に一般映画の“My Big Fat Greek Wedding” を挟んで、6位の『サイン』(227,791,166)と7位の『ゴ ールドメンバー』(213,117,769)までが2億ドルを突破。 さらに8位『MIB2』(190,418,803)、9位『アイス・ エイジ』(176,387,405)、10位『ダイ・アナザー・デイ』 (154,666,799)というベスト10となった。 以下、11位に『スクービー・ドゥー』(153,294,164)、 12位『ビューティフル・マインド』(149,528,920)、13位 『リロ・アンド・スティッチ』(145,771,527)、14位『X XX』(141,204,016)、15位『サンタクローズ2』(138, 394,397)。そして16位に『マイノリティ・リポート』(132, 024,714)、17位『旅の仲間』(130,860,692)、18位『ザ・ リング』(127,310,732)と続く。なお『ビューティフル』 と『旅の仲間』は、いずれも前年の封切りなので、その分を 合わせると、それぞれ170,742,314ドルと313,364,114ドル となっている。 この後の19位と20位は一般映画だが、それにしてもベスト 20の内の17本がSF/ファンタシー系の作品というのは壮観 としか言いようがない。これらの作品はそれなりに製作費も 掛かってはいるのだろうが、この種の作品がアメリカ映画の 表看板であることは間違いないところだ。 そしてこの結果の歴代順位は、第1位の『タイタニック』 から2位『スター・ウォーズ』、3位『E.T.』、4位『フ ァントム・メナス』までは変わらなかったが、5位に『スパ イダーマン』が食い込み、6位の『ジュラシック・パーク』 と7位『フォレスト・ガンプ』を挟んで、8位『賢者の石』 と9位に『旅の仲間』が入っている。なお、『賢者の石』は 前年分を合わせて317,575,550ドルだった。 来年はこれに、『二つの塔』と『秘密の部屋』がどこまで 食い込んでこれるかだが、特に、『二つの塔』は前作以上に 好調なようなので、この夏の“Terminator 3: Rise of the Machines”と合わせて期待したいところだ。 この他、2002年の結果のめぼしいところでは、29位に『ス コーピオン・キング』、30位に『スパイキッズ2』、31位に 『ブレイド2』が並んでおり、飛んで43位に『スチュアート ・リトル2』。そして『タイムマシン』が45位、また『バイ オハザード』は68位だった。 因に、『千と千尋の神隠し』の全米興行成績は5,433,352 ドル。これは175位に位置するが、この公開は元々アート系 で行われたもので、興行成績が期待されたものではない。こ れを見て、したり顔で「日本で大ヒットの作品もアメリカで は…」などと書いていた日本のマスコミがあったが、元々そ んなヒットは期待されていなかったものだ。それよりこの作 品が、興行成績でベスト10や20に入っているハリウッドの作 品に伍して、すでにいくつかの賞を受賞し、アカデミー賞に もノミネートされるかもしれないということにこそ注目する べきだろう。 * * というところで続いては、アカデミー賞の予備候補の情報 を紹介しておこう。この予備候補については、前々回長編ア ニメーション作品賞部門の予備候補を紹介したが、今回は技 術部門の内で、視覚効果賞と音響編集賞の予備候補が発表さ れている。 まず、視覚効果賞の予備候補は、『秘密の部屋』『二つの 塔』『MIB2』『マイノリティ・リポート』『スパイダー マン』『クローンの攻撃』『XXX』の7作品。 また、音響編集賞の予備候補は、『秘密の部屋』『二つの 塔』『マイノリティ・リポート』『ロード・トゥ・パーディ ション』『スパイダーマン』『ワンス・アンド・フォーエバ ー』『XXX』の7作品。これらの中からそれぞれ3作品が 最終候補として選ばれるはずだ。 ここで両方の候補を比較してみると、音響編集賞では『M IB2』『クローンの攻撃』が抜けている訳だが、『スター ・ウォーズ』シリーズは、第1作と『帝国の逆襲』が受賞。 他の2作も最終候補に挙がっており、今回の予備候補からも 落選というのは意外だった。 音響関係ではもう一つ音響効果賞というのもあって、そち らは大丈夫だろうが。毎年の波状攻撃で迫る『ハリー・ポッ ター』『ロード・オブ・ザ・リング』に比べると、シリーズ 全体の勢いが陰っているような感じもする。 そしてその感じで言うと、視覚効果賞の方も、『秘密の部 屋』『二つの塔』『スパイダーマン』の3本が最終候補の呼 び声が高く、前作で最終候補に残りながら『マトリックス』 に受賞を許したのに続く屈辱になる可能性がある。ただし、 『秘密の部屋』が受賞すればILMの成果ということには成 るのだが…。 最終候補の発表は2月11日だ。 * * 以下は、製作情報を紹介しよう。 まずはちょっと古くなったが、昨年の11月中旬にコロムビ アから、『XXX』のロブ・コーエン監督で“Warrior”と いう計画が発表されている。 この作品は、コンピュータ制御の進められたジェット戦闘 機が、搭乗パイロットの操縦を無視して暴走を始めるという もので、『ワイルド・スピード』などで見せたメカフェチの コーエン監督の面目躍如という感じの物語。なお製作には、 『スパイダーマン』のローラ・ジフキンが当ることになって いる。 コンピュータ制御のジェット戦闘機というと、日本でも神 林長平原作『戦闘妖精・雪風』の映像化が進んでいるようだ が、恐らくは徹底的にドライに描くはずのコーエン作品との 比較も面白そうだ。脚本は、W・R・リッチャー。 なおコーエンとコロムビアの計画では、先にザ・ロック主 演による“KIng Kamehameha”が発表されていたが、今回の 発表では“Warrior”が次回作になるということだ。そして この作品の後には、ヴィン・ディーゼル主演による“XXX” の続編が予定されている。ということで、ザ・ロックの主演 作はちょっと先になりそうだ。 * * 続いては競作の話題で、前々回レオナルド・ディカプリオ の話題の中で触れた「アレキザンダー大王」の生涯を映画化 する計画が相次いで動き始めた。 この競作については第11回でも紹介したが、その後に計画 は再編成され、以前の記事でのディノ・デ・ラウレンティス 製作の計画“Alexander the Great”と、ディカプリオ主演 の計画が合体され、結局、テッド・タリーの脚本を、ディカ プリオの主演で、バズ・ラーマンが監督することになってい る。なおこの計画は、ドリームワークスとユニヴァーサルの 製作で実現されるもので、モロッコで1月の撮影開始が予定 されているようだ。 つまり、第11回の記事からは、クリストファー・マカリー の脚本とマーティン・スコセッシ及びリドリー・スコットの 監督がキャンセルされたということだ。ただし、当初の組み 合わせの中で、スコセッシとディカプリオは、これも前々回 に紹介したハワード・ヒューズの伝記“The Aviator”を、 5月から撮影することが発表されている。なお、前々回のと きの情報とは製作の順番が逆になっているようだ。 一方、第11回の記事では昨年10月に開始されるはずだった オリヴァ・ストーン監督の計画“Alexander”の方は、よう やく03年6月に撮影開始されることが発表された。同時に、 主演をコリン・ファレルが務めることも併せて発表されてい る。なお、前の発表ではヒース・レジャーの主演が予定され ていたが、その後に変更になったようだ。 因に、この計画はインターメディアの製作で進められてい るものだが、今回アメリカ配給をワーナーが担当することが 発表されている。なお、インターメディアとワーナーの関係 では、以前に紹介したようにインターメディアが製作したこ の夏の“Terminator 3: Rise of the Machines”のアメリ カ配給もワーナーが担当することになっており、また上に書 いた“The Aviator”はインターメディアの関連会社が製作、 ワーナーが配給するということだ。 またワーナーでは、この“Alexander”の位置づけを、ウ ォルフガング・ペーターゼン監督、ブラッド・ピット主演の “Troy”、エド・ズウィック監督、トム・クルーズ主演の “The Last Samurai”に続く、歴史大作路線の最終ポイント としているそうだ。 * * お次は続編の話題で、97年に公開されてジェニファー・ロ ペスやアイス・キューブのブレイクの切っ掛けになったとも 言われる巨大生物パニック『アナコンダ』の続編が計画され ている。 今回の計画は、前作も手掛けた製作者のヴァーナ・ハラー が進めているもので、コロムビア傘下のジャンル作品レーベ ル=スクリーン・ジェムズの配給で公開される予定。 監督は、テレビの『X−ファイル』の他、『フリー・ウィ リー2』や『ハロウィン4』、それに97年公開の『ホワイト ハウスの陰謀』などを手掛けているドワイト・リトル。脚本 は、『ロボコップ』のエド・ニューマイヤーと、マイク・マ イナーの素案からジョン・クラフリンとダン・ゼルマンがリ ライトしている。 前作は、ロペス、キューブをブレイクさせたが、他にも、 ジョン・ヴォイドやエリック・ストルツ、オーウェン・ウィ ルスンらも共演しており、かなり力の入った作品で、興行成 績も1億3600万ドルを稼ぎ出している。今回はこれらの顔ぶ れの出演は期待されていないようだが、また誰かがブレイク するような作品を期待したいものだ。 なお題名は、“Anaconda II”あるいは“Anacondas”と いう説もあるようだ。 * * 続けてレーベル絡みの話題で、『ゴーストシップ』が公開 中のジョール・シルヴァ、ロバート・ゼメキスのホラー作品 レーベル=ダーク・キャッスルの次回作に、ハル・ベリーと ペネロペ・クルスの共演が発表されている。 題名は“Gothika”。物語は、べリー扮する女性精神科医 が、ある日目覚めると自分が保護施設の収容者になっている ところから始まる。しかもその後に、自分が殺人事件の容疑 者になっていることが判明するというもの。ここから自分の 嫌疑を晴らすという展開になりそうだが、これに超自然的な 存在が絡んでくるようだ。一方、クルスが演じるのは、施設 の中のカリスマ的患者という役柄だそうだ。 セバスチャン・グティエレスという脚本家の作品で、監督 は未定だが、3月に撮影開始、秋の公開を目指すとされてい る。因に、トップ女優2人の共演ということで、製作費は、 99年の『TATARI』から『13ゴースト』『ゴーストシッ プ』と続いたダーク・キャッスルでの歴代最高額が予定され ているということだ。 なお、ダーク・キャッスルの次回作には、先にロバート・ ゼメキス監督による“Macabre”が発表されていたが、その 後この作品が動いた形跡はなく、今回の作品がこれに替わっ た可能性もある。となると、監督はゼメキスの線もありそう だが、ゼメキスは92年の『永遠に美しく…』でメリル・スト リープとゴーディ・ホーンを向こうに回した経験もあり、実 現すると面白くなりそうだ。 * * CGIアニメーションの話題で、ソニー・ピクチャーズ・ ディジタル傘下に設立されたアニメーション部門で、スティ ーヴ・ムーアという漫画家の“Open Season”という作品の CGIアニメーション化が発表されている。 この作品は、猟師が獲物になってしまうような、ちょっと 視点を変えた世界を描いた作品ということで、普通のアニメ ーションとはちょっと趣の違った作品になりそうだ。なお、 原作者のムーアは、“In the Bleachers”という作品が現 在全米200紙に掲載されているということだが、今回の計画 には自らタッチしているようだ。 また今回の計画には、ジョン・カールスという製作者が参 加しているが、彼は絵本作家のモーリス・センダクと共にセ ンダク作品のテレビ化を手掛けた他、トム・ハンクスが進め ているセンダク作品“Where the Wild Things Are”のアニ メーション化にも関っているそうだ。 なお今回の報道では、ソニー・アニメーションの計画とし て、先に『ワイルド・スピード』のグレイ・スコットの脚本 による“Shangri-La”が発表されているとあったが、他の題 名は挙がっていなかった。一方、手塚治虫原作“Astroboy” のテレビシリーズは4月に放送開始だそうだが、劇場版はど うなっているのだろう。 * * 最初に紹介した昨年の全米興行成績で、第68位にランクイ ンした『バイオハザード』のオリジナルのゲームの発売元カ プコンが手掛けるもう一つの人気ゲーム“Onimusha”(鬼武 者)を映画化する計画が発表された。 といってもこの話題はハリウッド発ではなく、日本の配給 会社ギャガが発表したものだが、製作者には『バイオハザー ド』を手掛けたサミュエル・サディダが名を連ねているもの だ。ただし、アメリカではスクリーン・ジェムズが配給した 『バイオハザード』の日本配給はアミューズが行っており、 今回のギャガの発表はその巻き返しを計ったものとも取られ ているようだ。 因に、ゲーム版の“Onimusha”は、全世界で460万本を売 り上げているそうだが、『バイオハザード』はゲーム自体の 背景が無国籍という感じだったが、“Onimusha”の舞台は明 らかに日本ということで、さてこの映画化はどのように進め られるのだろうか。 なお、ゲーム版のオープニングアニメーションは、『エコ エコアザラク』などの佐藤嗣麻子監督が手掛けて00年のSI GGRAPHで最優秀賞にも輝いているということで、その 辺も考えてもらえると嬉しいのだが。 * * 後半は、短いニュースをまとめておこう。 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が公開されたば かりのスティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスが再度 組むという噂が広がっている。題名は“Terminal”。ドリー ムワークスの製作で03年後半に撮影されるということだが、 ドリームワークスでは特に否定はしていないそうだ。 アメリカでは“American Pie”が大人気のショーン・ウィ リアム・スコットの主演で“Tiny Boyfriend”という作品が パラマウントで計画されている。この作品は、ジェニファー ・ヒースとマイクル・J・ウォルフという脚本家によるもの で、自分の失敗で身体を数インチに縮めてしまった若者の物 語。当然スコットがその若者の役を演じる。なお、スコット は01年の『エボリューション』に出演していた他、03年には “Helldorado”“Bulletproof Monk”“Old School”と、 人気シリーズの最新作“American Wedding”で再びスティ ーヴ・スティファー役を演じることになっている。 『裸足の1500マイル』のフィリップ・ノイスが次回作もオ ーストラリアで撮る計画が発表されている。題名は“Dirt Music”というもので、オーストラリアの作家ティム・ウィ ントンの原作を映画化するもの。内容は、西オーストラリア の漁村を舞台に不幸な結婚をした女性が情熱的な恋をすると いうことで、原作は文学賞の受賞作でもあるそうだ。 翻訳が出始めた“Abarat”の原作者クライヴ・バーカー関 連の情報で、彼とトッド・マクファーレインが開発したアク ション・フィギアの“Tortured Souls”を基にした映画の 計画がユニヴァーサルから発表されている。このフィギアは 6体の陰惨なキャラクターからなるもので、これらのキャラ クターにはそれぞれバーカーが執筆したキャラクターの出自 を描いた小説が添えられており、今回はその小説を映画化す るというものだ。なお映画化の脚本には、コミックスの映画 化のスペシャリストのハンス・ロディオノフの起用が発表さ れている。 * * 最後に飛び込んできたホットニュースで、ジョージ・クル ーニー製作、主演、スティーヴン・ソダーバーグ監督による 『オーシャンズ11』の続編で、“Ocean's Twelve”の計画 が発表された。この計画、ちょっと経緯が面白いので次回に 詳しく紹介することにしよう。
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