2003年01月02日(木) |
アカルイミライ、ボウリング・フォー・コロンバイン、曖昧な未来 黒沢清 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※ ※いますので、併せてご覧ください。 ※ ※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『アカルイミライ』 ハリウッドリメイクが契約されている『回路』の黒沢清監督 の、同作が2000年に発表されて以来の最新作。 黒沢清監督の作品では、『回路』はあまり感心しなかったの だが、1997年の『CURE−キュア−』(別ページに書いた ようにこちらもハリウッドリメイクが契約されている)は、 『リング』よりも恐かった記憶があり、気に入っている作品 だ。 初期の作品では『スィートホーム』は見た記憶があり、その 後もどちらかというとホラー主体の監督と思っていた。しか し1998年の『ニンゲン合格』はホラーではなく、これが僕に 言わせれば何とも消化不良の作品で、ちょっとがっかりさせ られたものだ。 本作もホラーではないということで、実はちょっと及び腰で 見に行ったのだが、何と言うか妙なところで共感しまった。 1955年生まれの監督は、僕より6歳若い訳で、今までは若手 という感じがあったが、本作では見事に中年の感覚に共感し てしまったのだ。 物語の主人公は25歳。周囲とのコミュニケーションが上手く 取れず、いつも浮いてしまっている最近の若者にありがちの 男。彼には、同じ職場で共にアルバイトとして働くただ一人 の理解者がいたが、その男は彼にペットのクラゲを預けて退 職、失踪してしまう。 そんな出来事にいらだった主人公は、会社の社長の家に鉄パ イプを持って押しかけるが、社長はすでに殺されていた。 犯人は彼の理解者だった男、そして男は、面会に来る主人公 にクラゲを淡水に馴れさせる飼い方を指示し、その目処が立 ったところで自殺してしまう。その葬儀の日、主人公は男の 父親と出会い、廃品を回収してリサイクルするその父親と共 に働くようになる。 一方、淡水化したクラゲは川に逃げ出し、そこで大繁殖を遂 げる。そして猛毒のクラゲは被害を出し、駆除が始まるのだ が…。 それで何に共感したかというと、主人公の若者に向ける目か な。実は持て余し気味だし、若者の生態自体には不愉快なと ころも多いのだが、それでも自分自身もそうだったのじゃな いの?と思い出させてくれるような、そんな暖かい監督の目 に共感してしまった。 『ボウリング・フォー・コロンバイン』 “Bowling for Columbine” GMの工場閉鎖問題を扱った89年の『ロジャー&ミー』、ナ イキによる搾取問題を扱った97年の『ザ・ビッグ・ワン』で 勇名を馳せたドキュメンタリー作家マイクル・ムーアが、 1999年4月20日にコロラド州コロンバイン高校で発生した銃 乱射事件をきっかけに銃社会アメリカを描いたドキュメンタ リー作品。 カンヌ映画祭ではこの作品のために特別賞が創設されて受賞 している。 何年度の統計か不明だが、アメリカでは年間11万人を超える 人が銃によって殺されているという。これは先進国の中では 2位ドイツの381人、3位フランスの255人に比べても、文字 通り桁違い、ダントツの第1位だ。 しかしなぜアメリカだけがこんなに多いのか、映画の前半は この問題をいろいろな方向から検証する。そして中間に乱射 事件の監視カメラ映像を挟んで、後半は、問題の中心を全米 ライフル協会に絞り、会長チャールトン・ヘストンヘの突撃 インタビューで締め括られる。 その一方で、事件に対するメディアの取り上げ方の問題にも 迫り、アメリカの病巣を手際よく描き出す。中では、Kマー トが狩猟用以外の銃器の販売中止を決定するシーンなどもあ って、メディアの影響力も描かれる。 さすがに受賞作だけのことはあって、構成が上手いし、2時 間の上映時間だが最後まで飽きさせない。銃社会の問題は、 アメリカ独自の問題かもしれないが、メディアの描き方の問 題は、日本でも同じような状況になってきている感じで、暗 澹とした。 『曖昧な未来・黒沢清』 先に紹介した『アカルイミライ』の撮影を記録したドキュメ ンタリー。 監督や出演者、プロデューサー、美術、衣装スタッフなどへ のインタビューを通して、黒沢清監督の映画への姿勢が描き 出される。 本編『アカルイミライ』の紹介で、僕は黒沢監督をホラージ ャンルの人と書いたが、このドキュメンタリーの中では本人 がジャンルへの拘わりみたいなものも語っていて、ちょっと 納得した。 ただし監督自身が、本編作品ではもっと感情を排した映画を 目指したが、そうならなかったと語る辺りは、感情の表現が 上手いと思った僕としてはちょっと意外だった。 その他にも、俳優たちの役作りや、それを衣装が助けるとい った、この本編作品の独自性みたいなものもよく描かれてい た。 本編作品を見るには格好の手引きという感じのドキュメンタ リーで、面白かった。
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