井口健二のOn the Production
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2001年10月22日(月) 第1回+スポット、ジェヴォーダンの獣、6週間、ハートブレイカー、うつくしい人生、カラー・オブ・ペイン

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 記念の第1回は、一番旬な俳優の話題から紹介しよう。
 『ワイルド・スピード』(The Fast and the Furious)で
人気がブレイクしたヴィン・ディーゼルの情報で、彼がその
前に主演した『ピッチ・ブラック』(Pitch Black)の続編
が決定した。続編の題名は“The Chronicles of Riddick ”
で、前作でディーゼルが演じた夜目の利く殺人犯リディック
の冒険を描くというもの。報道では続編となっているが、前
作で護送中だった主人公の前日譚という情報もある。
 脚本は、前作のデヴィッド・トゥーヒーに代ってデヴィッ
ド・ハイターが担当。ハイターはフォックスで計画中の“X-
Men ”の続編も手掛けている。また監督も、前作を手掛けた
トゥーヒーは参加せず、これから新監督を選考して、02年の
春以降に撮影開始。配給のユニヴァーサルでは03年夏公開の
中心作品を目指すとしている。製作期間に1年以上費やすと
いうことは、かなりの作品が期待できそうだ。
 なお製作は、前作と同じレーダープロダクションが担当す
るが、今回はこれにディーゼル自身のワン・レースプロが加
わることになっている。このためディーゼルの出演契約金は
1100万ドルに跳ね上がったということだ。また配給は、前作
はポリグラム(アメリカ配給はユニヴァーサル)が担当した
が、その後ポリグラム社がユニヴァーサルに吸収されたため
に、続編はユニヴァーサルが行うことになっている。
 なおディーゼルにはもう1本、来年撮影予定で、フォック
ス製作の“Daredevil ”というマーヴェルコミックス原作の
スーパーヒーロー作品の主演も交渉されていたが、この交渉
は“The Chronicles of Riddick ”が決まったためにキャン
セルになった。しかしこの計画には、その後ベン・アフレッ
クの参加が発表され、アフレック主演のスーパーヒーローが
誕生することになったようだ。因にこの主人公は、盲目の弁
護士でありながらマーシャルアートの使い手で、放射能事故
の影響でレーダーのような視覚を得てスーパーヒーローに変
身するということだ。
 この他にディーゼルの情報では、上記の作品の前に11月撮
影開始、来年7月26日の公開予定で、“XXX (トリプルXと
読む)”という計画が発表されている。
 この作品は『ワイルド・スピード』でディーゼルを抜擢し
たロブ・コーエンが監督するもので、原作はダーク・ホース
コミックスのアクション作品。主人公はスポーツ選手を隠蓑
にした潜入捜査官で、映画化される物語ではロシアの犯罪組
織を壊滅に導くというものだそうだ。ディーゼルは前作とは
立場が逆になりそうだが、因に『ワイルド・スピード』のオ
リジナルの題名は“Racer X”だったとか。また今回はオー
トバイでビルを駆け登るといったアクションが行われるそう
だ。製作はレヴォルーション、配給はコロムビア。
 ところでこの“XXX ”には、主人公を訓練する政府の担当
官の役でサミュエル・L・ジャクスンの共演も発表されてい
るが、彼は同じコロムビア配給でジェニファ・ロペス主演の
“Tick-Tock ”の製作が、同時多発テロ事件の影響で延期に
なったためにこの出演が可能になったということだ。
 一方、ユニヴァーサル製作の『ワイルド・スピード』の続
編の計画も進み始めている。この計画では当初からディーゼ
ルには複数本の契約が結ばれていたようだが、今度は潜入捜
査官ブライアン役のポール・ウォーカーとの契約が結ばれた
もので、2人が揃って再び改造車の爆走が始まると共に、前
回の事件の真相が明らかにされることになりそうだ。
         *       *
 続いても続編の情報で、97年の第1作に続いて99年の第2
作も大ヒットしたマイク・マイヤーズ脚本主演の人気シリー
ズの第3作で、多分これが完結編となる“Austin Powers 3:
Goldmember ”の計画が発表されている。
 この題名については、『007/ゴールドフィンガー』の
パロディであることは言うまでもないが、実は昨年の6月頃
から噂にはなっていた。そして今年の2月には、マイヤーズ
とニューライン・シネマとの間で、実現したら2500万ド
ルまたは配給収入の21%という契約が結ばれたことも報告さ
れたが、この時点でも、実現の可能性は全てマイヤーズとマ
イクル・マクーラーによる脚本の出来次第とされていた。
 その脚本がこのほど完成し、製作のニューラインが正式に
ゴーサインを出したもので、マイヤーズと前2作も担当した
監督のジェイ・ローチは、他で進行中だった計画を全て中断
して、本作の撮影を11月中旬に開始、来年7月26日の全米公
開を目指すとしている。
 物語は別段発表されてはいないが、マイヤーズは前2作と
同様、主人公のパワーズと、敵役のドクター・エヴィル、フ
ァット・バスタード、さらに今回のタイトルロールのゴール
ドメンバーも演じるということだ。また、ミニミー役のヴァ
ーン・トロイヤー、ドクター・エヴィルの息子役のセス・グ
リーン、それにナンバー2役のロバート・ワグナーとロブ・
ローの再登場もほぼ決定されている。
 さらにエリザベス・ハーレー、ヘザー・グラハムに続くパ
ワーズの第3の恋人役には、ポップグループ=ディスティニ
ー・チャイルドのビヨンス・ノーウェルの出演が発表されて
いる。前の2人はそこそこ実績のある女優だったが、今回歌
手を抜擢したのはどういう目論見があるのだろうか。なお、
前作のグラハムは、第2作のハーレーと同様にカメオで出演
するということだ。
 また共演者には、マイクル・ケインの登場も発表されてい
る。ケインは2度のオスカー受賞者でもあるが、元々は65年
の『国際情報局』(The Ipcress File:監督シドニー・J・
フューリー)、66年の『パーマーの危機脱出』(Funeral in
Berlin:監督ガイ・ハミルトン)、67年の『10億ドルの頭
脳』(Billion Dollar Brain:監督ケン・ラッセル、監督の
豪華さを見よ)と続いたレン・デイトン原作のスパイシリー
ズで、主人公のハリー・パーマー役を3作に亙って務めた実
績がある。今回は英国海軍のスペシャリストという役柄のよ
うだが、一時期パワーズの父親役として交渉されていたショ
ーン・コネリーの代役の可能性もありそうだ。この他に、現
ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナンにも出演交渉が
進められているという情報もあるようだ。
 いずれにしてもマイヤーズとローチは、この作品を完結編
として、目一杯の力を注ぐと意気込みを表明している。
         *       *
 後半は短いニュースをまとめておこう。
 まずはリメイクの情報で、ロアルド・ダールの原作による
『チョコレート工場の秘密』(Charlie and the Chocolate
Factory)を映画化した“Willy Wonka and the Chocolate
Factory”(71年製作:未公開)をワーナーでリメイクする
計画に、『スチュアート・リトル』のロブ・ミンコフ監督の
参加が発表され、一気に実現に動き出す可能性が出てきた。
 オリジナルはジーン・ワイルダー主演、アンソニー・ニュ
ーリー作曲の‘Candy Man’が挿入されるなどのミュージカ
ル仕立ての作品で、『スパイ・キッズ』のロベルト・ロドリ
ゲスが手本にしたというお子様向けのファンタシー作品。以
前にヴィデオで見たことがあるが、ダールが脚色も担当して
いて、原作同様の奇想天外な空間が映像化される共に、ダー
ル特有の皮肉たっぷりの物語が展開していた。これをミンコ
フがどのようにリメイクするか楽しみだ。
 お次はテレビの新シリーズも始まった“Star Trek”の劇
場版で、第10作となる“Star Trek: Nemesis”のVFXを、
『アポロ13』などのディジタル・ドメインが担当することが
発表された。このシリーズのVFXでは第1作をダグラス・
トランブルが手掛けて以降、第2作からはILMが担当。し
かし前作の『叛乱』はブルー・スカイというところが担当し
ていた。その続きをディジタル・ドメインが担当するという
ことで、大手f/x工房の参加は、今回はVFXにも相当力
の入った作品が期待できそうだ。
 出演は“The Next Generation”のメムバーだが、実は彼
らとの出演契約は前作までで切れていたということで、今回
は全員の参加は望めそうにない。しかしすでに艦長ジャン=
リュック・ピカード役のパトリック・スチュアートと、アン
ドロイド=データ役のブレント・スパイナー、それにカウン
セラー=トロイ役のマリナ・サーティスの出演は発表されて
いるようだ。ジョン・ローガンの脚本をスチュアート・ベア
ードが監督。11月10日の撮影開始で、公開は来年の秋〜クリ
スマスの予定になっている。製作はパラマウント。
 一方、ユニヴァーサルから03年春の公開が予定されている
“The Hulk”(題名からIncredibleが取れた)のVFXは、
ILMが担当することが発表された。この計画では、当初は
リック・ベーカーがスペシャルメイクを担当することになっ
ていたが、その後ハルクに変身してからのシーンは全てCG
Iで作られることが決定し、全面的にILMが担当すること
になった模様だ。監督や出演者は未定だが、ILMは一時期
ジョナサン・ヘインスレイの監督が予定されていたときにテ
スト撮影に協力した実績があったようだ。また主演には、エ
リック・ベイナという俳優が抜擢されたという情報もある。
         *       *
 最後に目前の情報で、アメリカでは11月16日公開されるワ
ーナー作品『ハリー・ポッターと賢者の石』(Harry Potter
and the Philosopher's Stone:公式ホームページでも英米
のタイトルが異なっているが最終的にどうするのだろう?)
で、初号が完成しその試写が行われたが、何と上映時間が2
時間23分もあったそうだ。子供向きの映画でこれはいくらな
んでも長すぎるので、封切りまでに再編集が行われるが、試
写を見た全員がもっと長く見ていたかったという感想だっと
いうことで、これは本当に面白い作品になっているようだ。
ヴィデオでもいいからオリジナルが見てみたい。


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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『スポット』“See Spot Run”
麻薬捜査や犯人逮捕に活躍するFBIの捜査犬(エージェン
ト11号)を巡るお子様向けアクション(?)コメディ。
麻薬取り引き現場でのマフィアのボスの逮捕に活躍した11号
は殺し屋に命を狙われ、異例の目撃者保護対象として匿われ
ることになる。しかしマフィアの策略で保護を外され、逃亡
の末、郵便配達の主人公に拾われるが、そこには殺し屋の影
が忍び寄っていた。
『キャッツ&ドックス』の時はVFXのオンパレードがちょ
っとやり過ぎの感じもしたが、低予算の本作ではその辺がマ
イルドでかえって良い感じになっている。それでもカートゥ
ーンギャグ的なものも随所にあって、子供にも大人にも充分
に楽しめる作品といえる。
特に11号役のブルマスチフ犬の演技が見事で、中でも小犬の
頃からエージェント犬として遊びを禁止されて訓練を続けて
きたために、ボールを投げられても遊び方が判らずきょとん
としている姿などは、僕自身がペット犬の飼い主として感じ
るところがあった。
お話は、主人公がフライトアテンダントでシングルマザーの
女性に思いを寄せていて、彼女が家を空ける一晩だけその幼
い息子を預かるのだが、その主人公が父親の自覚に目覚めて
行く様子や、一方、荒天で戻り便が無くなり陸路家を目指す
母親の悪戦苦闘。
さらにマフィアの殺し屋とボスの動きや、FBIの様子など
が縦横に描かれ、これらが子供にも判るように実に上手く整
理されていて、最後に一気に大団円を迎えるところはお見事
という感じがした。ハリウッド映画はこういう作品にも決し
て手を抜かないところが素晴らしい。
なお日本語吹き替えはないが、字幕は小学校3年生が読める
ように配慮されている。しかし大人が読んでも別に違和感は
なかった。因に『ポケモン』関係の台詞は、アメリカの配給
が同じワーナーなので原語もその通りになっている。

『ジェヴォーダンの獣』“Le Pacte des Loups”
1764年〜67年に、革命前のフランスを震撼させた謎の事件を
描いた異色サスペンス。
フランス中南部の辺境地ジェヴォーダンで100人以上が殺
戮される事件が起きる。国王ルイ15世はその調査のために若
い自然科学者を送り込む。しかし殺戮は収まらず、ついに国
王の命を受けた兵士たちによる野獣退治が行われたが…。
物語は実話に基づくそうだが、実話では謎のままとなった野
獣の正体がこの映画では明かされている。その正体自体はジ
ム・ヘンソン・クリーチャー・ショップが手掛けていて、見
た目はあれあれという感じもするが、その背景にちょっと捻
りがあって面白かった。
登場人物の一人がインディアンだったりして物語の膨らみが
面白い。東洋的な要素を取り入れた格闘アクションの出来も
なかなかで、これが長編第2作のクリストフ・ガンズ監督は
今後も楽しみになりそうだ。
それから出演者の中では、娼婦役のモニカ・ベルッチが『マ
レーナ』とは違った信念を内に秘めた女性の役柄で、カメラ
映えもし素晴らしかった。

『6週間』
アイドルタレントの新山千春の主演で、俳優の塩谷俊が初監
督した青春映画。新山は今年の『ゴジラ』の主演でもあるの
で、その興味もあって見に行った。
物語は、ハリウッド映画のオーディションが6週間に亙って
行われるという設定で、そこに集まった若者たちの青春群像
が描かれる。そのオーディションのやり方がかなりユニーク
だが、塩谷は俳優養成所も主宰していて、そこでの経験を元
に映画化したものだそうだ。
まあ、取り立ててどうこうと言うような作品ではないが、出
演者も含めてそれなりに熱心に作られている点は好感が持て
た。
ただし、この作品はヴィデオで撮影されているが、機材は通
常のディジタルカメラ(DVCPRO)が使われていて画質はかな
り荒い。製作はビクターエンターテインメントということだ
が、すでにHD 24pの実績が評価されているこの時期に、これ
はちょっと情けない感じがした。

『ハートブレイカー』“Heart Breakers”
シガニー・ウィーヴァーとジェニファー・ラヴ・ヒューイッ
トが母子の結婚詐欺師を演じるコメディ。
母親は男性の不倫にかこつけた慰謝料詐欺を続けてきたが、
娘は若さを武器にした結婚詐欺で独立しようとしている。そ
して2人は最後の共同作戦を、ジーン・ハックマン扮するヘ
ヴィスモーカーの大金持ちの老人相手に仕掛けるが…。
これにレイ・リオッタやアン・バンクロフトが絡むという豪
華版だ。
まあ細かいことはいろいろあると思うけれど、取り敢えず見
ている間は面白くて楽しい。そういう映画ということでよろ
しいのではないでしょうか。
それからラヴ・ヒューイットは、どことなく榎本加奈子に似
た風貌で、それが榎本と同じような演技をするところが可笑
しかった。

『うつくしい人生』“C'est Quoi la Vie?”
主人公はフランスの田園地帯で酪農を営む一家の一人息子。
狂牛病騒動の煽りで牛乳の出荷が滞り、一家は財政困難に陥
っている。そして遂に1頭が狂牛病に認定され、飼っていた
全牛に対する処分の命令書が届いた日、父親が自殺する。
ちょうど日本でもその騒動の最中にこういう映画を見ている
と、どうしてもそっちに目が行ってしまうが、物語はそんな
最悪の事態の中から若者が立ち直って行く姿を描いている。
といっても後半は話が上手く行き過ぎて、ちょっと甘い感じ
もするが、まあ一種のメルヘンということで、心暖まる映画
というところだろう。こういう作品に年に1、2本出会える
と、いつも殺伐とした映画を見ている身には心地よい。
それにしても、命令書1枚でほぼ全財産を失ってしまった父
親の気持ちはよく判る訳で、感染牛の処分を全て税金で、し
かも市場価格より高く買い取ったどこかの国の農政とは、厳
しさがずいぶん違う感じがした。

『カラー・オブ・ペイン』“野狼”
95年の『ストリートファイター』に登場して注目された日本
人俳優、澤田謙也主演の香港製アクション映画。
日本人スナイパーの主人公は、香港に逃亡した暴力団組長の
暗殺に成功するが、予期せぬ敵の反撃を受けて脳内に残った
銃弾は彼の視力から色彩を奪い、いつ死んでもおかしくない
身体にしてしまう。
しかし主人公は偶然遭遇した強盗事件で、その刺激が一時的
に色彩を取り戻すことを発見し、刺激を得るために自らその
強盗団の仲間に加わって行く。全ては刺激を得るためだけの
目的で…。
澤田も歳を重ねて渋味が出てきたが、若い香港スターたちを
相手に回してそれをリードして行く雰囲気なのは頼もしい。
銃撃戦からストリートファイト、カーチェイスまで盛り沢山
で、サービス精神は満点という感じ。
もう少し物語に捻りがあってもいいような気もするが、まあ
こんなところだろう。


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井口健二