ATFの戦争映画観戦記



【File037】Raise the WarBirds・・・戦う翼たちの戦後②

2002年04月14日(日)

唐突ですが、何時の間にやら4000HIT。日頃よりご来訪いただいてる〝観戦武官(当HPご贔屓筋の方々を勝手に呼称しております)〟の方々には厚く御礼申し上げます・・・です。さて私ATFが自前のHPに係わってから、実は満一年な訳なんですが〝エッ〟て思われる方もいらっしゃいますでしょう。この「ATFの戦争映画観戦記」は昨年の10月にオープンしたのですが、それ以前に酔った勢いで・・・いえプロバイダからドメインを拾得して以来ほったらかしていたのを、友人からHP製作ソフトを譲ってもらった機会に、勢いで一晩でHPを作り(まるで秀吉の一夜城・・・HPか。と言ってもトップページと観戦作品リストだけ)上げたのが、ちょうど昨年の4月の14日だった訳です。この「戦争映画観戦記」をスタートするに当たり、その初期HPのドメインは「資料室①」へと移行してしまいましたが・・・トップページのみは記念に残しています。カウンターもつけたままなのですが、現在約400HIT。たまに自分でアクセスしてカウンタの増え具合を眺めておりますが・・・非公開なのに、一体どうして・・・因みに皆様の中でご覧になった方っていらっしゃいますか?
さて満一周年記念のカキコミは前回に引き続き、戦争映画に登場した「戦う翼たち」の知られざる裏事情についての続編です。

【火消しになった戦う翼たち】
前記の如く二次戦後、航空機の推進システムが〝レシプロ〟から〝ジェット〟へと急変した事により、二次戦を戦った「戦う翼たち」の需要は激減しました。多くは二束三文な値段でスクラップ業者に買い取られ屑鉄としての運命を辿りますが、一部幸運?な機体は、二次戦後の民族主義の機運に乗じ独立したが、未だ政情不穏な旧植民地国家へ売却されたり、民間航空に払い下げ(主に爆撃機や飛行艇、輸送機等)て命脈を保ちます。しかしながら元来軍用機は民間機に比べ燃費が悪く経済性が低い・・・燃料をバカスカ喰ってしまうので、元爆撃機なんかを旅客や輸送に使うのは非効率的なため、特殊な用途以外はあまり使用されなくなります。その特殊な用途のひとつは、山火事専用の〝消防飛行機〟広大な森林地帯を有するアメリカでは、頻繁に山火事が起こり、毎年多くの被害が発生しています。一端燃え広がるとちょっとやそっとでは火勢は止まらず、消防ポンプで水をかけるくらいでは焼け石に水。そこで登場するのが〝消防飛行機〟上空から水や消火剤を広域に散布し延焼を防ぐ訳です。頑丈な機体の爆撃機や飛行艇は、この手の作業にはもって来いなのです。主にB25やB26、A-20、A-26の中型爆撃機・攻撃機やカタリナ飛行艇がこの任務に多用されます。低空で飛行したり、飛行場と頻繁に往復する任務のため、大型の爆撃機では使い勝手が悪かったのでしょう。この辺の事情はスピルバーグ監督の「オールウェイズ」(1989:主演リチャード・ドレイファス)を観ると良くわかります。確かA-26が〝消防飛行機〟として登場してませんでしたっけ?大女優ヘップバーンが天使役・・・そう言えばクレジットにデイル・ダイの名が・・・これって戦争映画界では有名な軍事アドバイザーと同一人物なんでしょうか?現存する米軍の中型爆撃機の多くは、この用途に使用されていた機体の生き残りが多いそうです。

【トレジャー・・・ウォーバード・ハンターたちの憂鬱・・・】
二次戦後、時を経るに連れ人々の悲惨な戦争体験も思い出の彼方へと過ぎ去って行きますが、思い出を忘れないように各地に記念碑や記念館が作られる様になるのですが、やっぱ目玉となる記念品・・・遺物がないと箔が付かないじゃん。軍艦は置けないし、戦車はちょっと泥臭い(戦車マニアの方すんません、お気を悪くなされないで)やっぱカッコイイ戦闘機や爆撃機が良いな~ッ。そんな訳で一部の人たちが気が付く訳です「あんなにあった二次戦の軍用機が全然残って無いじゃないか・・・」と。そうなると残った僅かな機体が争奪の対象となり高額な価格のコレクターズ・アイテムと化すのです。昔スクラップ屋の裏庭に屑鉄として積み上げられていた戦闘機や爆撃機が、今じゃ宝石よりも価値のある代物に・・・。そこで登場するのがトレジャー・・・ウォーバード・ハンターたち。僅かに残った二次戦の軍用機を探し出すプロフェッショナル。多くは自身がパイロットだったりするのですが、各地の軍や公共機関の倉庫で埃を被っていたり、コレクターがこっそり持ってる機体や部品を探し出して買い取り、必要としているトコへ持って行って売る・・・その差額で利益を得たり、或いは物々交換で別の機体を手に入れたり・・・嘗て「空軍大戦略」が製作された時、流石英国人は物持ちが良くスピットファイアーやホーカーハリケーンの飛行可能機が多数残存していたのですが、対する独軍機(ハインケル爆撃機やメッサーシュミット戦闘機)は皆無状態。この時、プロデューサーに依頼されたエージェント(まあ一種のウォーバード・ハンターだよな)が同機をライセンス生産(エンジンをメンテし易い空冷イスパノエンジンに換装)使用していたスペイン空軍から買い取ったのは有名な話(この時の売却利益でスペイン空軍はジェット戦闘機を購入し近代化を果たしたとか)です。その後、これらの機体は博物館やコレクターに売買されたそうですが・・・。でも元来数が少ない訳ですから、あっという間に需要に供給が追いつかなくなる。となると、作るしかないのか・・・しかし大規模生産を行うからこそネジや部品のコストを下げる事が可能、一個数セントの部品を手作業で作ったりすると数百ドルの経費が・・・一機分の部品となると想像を絶する経費が・・・って事になります。設計図通りに全く同じ機体を作ろうとすれば、基本的には設計図通りの部品が必要になるのは物事の道理。代用品を使うほど、完全なるレプリカから遠ざかる・・・価値が下がる・・・訳です。戦争映画には、実際に飛行できないレプリカの機体が登場します。大道具さんたちのご苦労により外見はよく出来ています。でも中身が無い・・・それでも、あの高倉健さん主演(ATFも劇場で泣いた)「ホタル」の回想シーンに登場した四式戦なんか数千万円の経費が掛かっているそうです。燃やしちゃうんですけどね・・・。もったいね~ッ。もはやレプリカもバカにはならない。本物であれば尚更です。例え機体の一部だけでも手に入るなら、幾らでも金を払うと言うお客は居るのに、市場には商品が無い・・・こんな儲け話が転がっているのに・・・ネ。

【最早残って無いのなら、墜落したヤツを探しだせ・・・】
作戦や戦闘、用務における損害についてのオペレーション・リサーチの仕組みが高度に発達した米軍においては、戦訓として後世に活かす為、細かな調査が行われています。そんな訳で戦時中、喪失した兵器の記録が結構細かに残っているのです。特に軍艦や航空機について何時、何処で、どのような原因で失われたか・・・が。撃墜・撃破され木っ端微塵になっちゃどうにもなりませんが、エンジン不調で不時着したりして、乗員は無事だが、機体の回収は不能で放棄された、なんて機体のなんと多いことか。特に極地に近い地域では、高温多湿の南太平洋の地域と異なり、比較的条件さえ良ければ機体が腐食せずに残っている可能性が高いのです。事実1947年グリーンランドに天候不良の為不時着した米軍のB29偵察型F13タイプの一機が、1995年の時点でほぼ飛行可能な強度を保持した機体の状態で残存していました(ウォーバード・ハンターたちの手により飛行寸前の状態だったが、些細なアクシデントの為に失敗・炎上喪失してしまいました・・・まったくもって残念な限り)。と言う訳で、トレジャーハンターたちの本当の意味での宝探しの物語が始まります・・・カナダやアラスカ、グリーンランド、北大西洋、北海、北極地域の湖沼、森林、氷河、海底、雪原の中に眠る〝戦う翼たち〟その幾つかは、莫大な費用と資材、人材が投入され、回収に成功し、掛かった回収経費以上の利益を生み出しています。完全な形でなくても良いのです。現在世界各地で行われている機体の復元に一部の部品を提供できるだけでも、莫大な利益が生まれます。それでも部品を再生するよりは手間も閑も、ましてや経費さえも安く尽くのですから・・・。それら部品によって、また一機飛行可能な〝戦う翼〟が甦り、戦争映画の画面狭しと活躍してくれる訳です。そう言えば以前、某巨大掲示板●chのミリタリー関連のカキコミで「裏山に墜落したグラマンがあるんですけど・・・」ってなスレッドが立って、ミリタリーマニアたちの物議を醸した事がありました。事実なら結構なお宝じゃん・・・と思ったら大間違い。米軍・・・ていうか米海軍なんですが、建国以来米国海軍に所属した艦船や航空機については、例え沈没・墜落して行方不明であっても、全てについて所有権を主張しています。うっかり発見して屑鉄として売っぱらったりしたら、もう大変。忽ち裁判沙汰・・・莫大な賠償を払わされる可能性大ですから、皆さんも例え墜落したグラマンやコルセアを発見しても黙って売っ払ったりせず、ちゃんと届け出ましょう(爆)米陸軍(及び空軍)は、そこまで五月蝿くないみたいなのでB29とかP51、P47なんかだったら見つけて回収する許可は出易いみたいですよ・・・ただ現地の政府とかがOKすればですけど・・・ミクロネシアのように、太平洋戦争の遺物の移動や破壊を法律で禁止して観光スポットにしている国もあるのでご注意を・・・。そう言えば、最近(って言っても結構以前だと思うが)連合艦隊司令長官山本五十六大将が最後に搭乗していた一式陸攻の翼かなんかの機体の一部が日本に還ってきてたなぁ・・・。期間限定で許可されたんだろうか・・・?

未だ世界各地に眠る〝戦う翼たち〟航空機や戦争映画ファンとしては、その雄姿を一機でも多く見たいのは山々ですが、反面、そのままの姿でソッとしといてあげたいって気持ちもありますな~。その場所にあること自体がメモリアルなんですから・・・。さて次回は生きた〝戦う翼たち〟の保存に尽力される方々のお話と、そのお陰で戦争映画に登場する珍しい〝戦う翼たち〟のお話をしようと思います。乞う御期待!今回の記事も、一部を文春文庫刊「幻の大戦機を探せ」K・ホフマン著 北澤和彦訳を基にしています。【本当の意味で続く】
【訂正】20020414一部不適切な表現を修正しました・・・。
    20020421「火消しになった戦う翼たち」を一部修正しました。

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