「大丈夫?」 貴女が訊いた。 その時私は、少し傷付いていたから、慌てた。 「え? な、何が?」 貴女が訊いてきた言葉は、いつもの私の台詞じゃあないか。 私は余程、そんな顔をしていたのだろうか? それとも、期待するなら、そこまで貴女が私の心配をそしてくれたのだろうか? 何を、大丈夫?、と訊いたの? 「とりあえず、大丈夫?」 何を、とは言ってくれないのか。 それもいつもの私じゃあないか。 今日は、目の前にいるのは、私だと言う幻覚に襲われる。 ――けれど、目の前にいるのは、どう考えたって恵母さんであって、私じゃない。 どうして…今日は――。
どうして、今日貴女はそんな物言いをするの? いつもの私のように。 そんなにまで私は傷付いた顔をしていた? でも――私が傷付いた原因と言うのも…。 貴女に在ると言ったら――。 ――皮肉なものよね…。
ソコまで想って思い至る。 別に心中を察して、先刻の言葉を発したのではないのではないか。 他にも心配する理由はある。 先刻までの私は、お腹が痛かったし、今はもう遅い時間である。 だから、今の体調や、早く帰らないでいいのか、と言うことを心配したのかもしれない。 遥かにそちらの方が筋道が通るように想われる。
だったら…。 私の喜びは、ただの糠喜び、か…。 ――愚かしい。 けれど…。 けれど、期待したって罰はあたらないでしょう。
何を、とは言わなかった。 だから、私は勝手に解釈する。 そっちの方が嬉しいから。 だから、貴女が心配したのは、私の心中を察したから、と言う風に解釈させて。 それは愚かしい願望だけど。 それくらいのものは赦してね。 だから笑顔で言うよ。 貴女に心配をかけぬよう。
「大丈夫だよ」 私がそう言うと、彼女は哀しく微笑んだ。
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