コンビニエンスラブ

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2010年01月21日(木) 哀悼
ネットの知人が死んだ。
自業自得だ。
そう嘯いても悲しみが和らぐことはない。
だからここに書き殴っておく。

彼女とは一度も会ったことがない。

高校生の頃、彼女は新宿でスカウトにナンパされ、
ヤリ部屋に連れ込まれて、
セックスをしたそうだ。
かっこ良かったし、気持ちよかったから、
セックスを終え、彼女はとても満足したことを覚えているという。
その頃付き合っていた同学年の彼氏の稚拙なセックスと比べ、
とんでもなく凄かった、という感想を僕に語ってくれた。
ところが、数日後、彼女の携帯が鳴る。
例のスカウトマンだった。

あ、M?ちょっと話あるんだけど。

ちょうど友達と新宿で遊んでいたので
彼女はその足で男のマンションに向かった。

そしてそのヤリ部屋が実は盗撮部屋であったことをしる。

男はテレビを付け、再生ボタンを押し、
画面にこの前のセックスの様子を映し出した。

でさ、一本これでいい?
手のひらを彼女に向けて言った。

5マン?
冗談じゃないわよ。
彼女はごねた。
じゃあ、両手で。

10マンか。
ならいいや。
その時の彼女は気軽に考えていたという。
再生されたビデオはベッドとカメラの距離が離れているため、
そんなに簡単に顔バレしないと思ったそうだ。
しかも10マンもらえるならいっかと。

そして男は封筒を二つベッドの上に投げた。
彼女は一つ手に取った。
分厚い。
封筒には現金の束が詰め込まれていた。

ちょうど100マンある。これでこのビデオの権利はもらったからな。

こいつ、何を言ってるんだろう。
100マン?
すげぇ。大金持ちじゃん、わたし。

そんな風に思ったそうだ。

今日暇なの?
男が聞く。

うん。と彼女はうなずいた。

じゃあ、エッチしようよ。

彼女は大金を手にし浮かれていたのかもしれない。
そのままシャワーを浴びて、男に抱かれた。

なあ、AVとか興味ある?
ベッドでたばこを吸いながら男は言った。

もっと金もらえるかもよ。

やだよ。そんなの。

その日、彼女は100マンという大金を手にし、
何事もなかったように家に帰った。
もちろん両親に会ったらなんかバレるかもしれないと
すぐ部屋に籠もり、その日は体調が悪いといって、
結局次の日まで部屋を出なかったという。

一万円ずつ、彼女は部屋のあらゆる場所に隠したという。
そして毎日一万円使うことを決め、豪遊したそうだ。
ブランドもののバッグも欲しかったが、
親バレして追求されたらまずいと思い買わなかった。
しかし小さいものなら大丈夫だと思い、
小さなダイヤのネックレスと指輪を買ったという。
学校には堂々とそれをつけていったが
当たり前のように誰にもばれなかった。
まさか高校生が本物を持っているとは思わない。
そして彼女も、偽物だよ、と友達に話していたそうだ。

そんなことをしているうちに
100マン円はあっという間になくなってしまった。
そして彼女は例のスカウトマンに連絡を取った。

数日後、
ヤリ部屋=盗撮部屋に彼女はいた。

一本30だけどいい?

え?100じゃないの?

あれは契約金みたいなもんだ。それと、いまおれが100マン返せっていったら
おまえは返す義務がある。
不当利益ってやつだ。
黙って100マン持って行ったんだからな。

彼女は専門的なことは何一つしらなかった。
ただお金を返さないととんでもないことになると思ったそうだ。
とうぜん、30マンで出演することに了承した。

彼女は当時からセックスが好きだった。
だからいい男なら別に減るもんじゃないし、とすら思っていたという。

じゃあ、いまちょうだいよ。
ここでやればいいんでしょ?

相手は俺じゃない。
そう言って男は電話をかけた。
そして30分後、別の男が現れた。
かっこよくなかった。

じゃ、俺は仕事あるから。
そう言って男は部屋を出て行った。

彼女は残された男と二人きりになった。

そしてその男は演技指導を始めた。
ナンパされて部屋に連れてこられたけど
別にセックスするつもりはない。
でもしてもいいかなと思ってるので、
抵抗は少しだけにしてくれたらあとは俺にまかせてくれたらいいと言われ、
指示に従った。

部屋に入るところから撮るという。
そしてカメラの位置を教えられた。
カメラは絶対にみないこと。
気づかないふりをしないと、フェイクだってばれるから。

そんな説明が加わり、彼女は彼氏の部屋に遊びに来た女子高生を演じた。

セックスを終えて30マンを手にした彼女は満足していた。
自分が堕ちていくことに、まだ気づいていなかった。

その男たちのAVというのは
一般的に流通されるものではなく、
全国の小さなビデオショップに卸して販売されるものということを教えられた。
じゃあ、TSUTAYAにはないの?
素朴に彼女は聞くと、そんな大手に流れたらまずいだろ。

その部屋で三回、彼女はカメラを気にしないようにして
セックスをした。

四回目はラブホテルだった。
男は毎回違った。

五回目は夜景のきれいな横浜のホテルだった。
ギャラはすこしずつ上がっていった。

もう使い切れないくらいお金が貯まっていた。
銀行にお金を預けるなと言われていたので
隠し場所には困っていたが両親にばれることはなかったという。

そして
彼女は次第にその男たちが経営する会社の裏側をしるようになった。
彼女自身が女の子をスカウトするようにまでなったという。

彼女はどっぷりとその世界に入り込んでしまっていた。
もう抜け道はない。

自らが出演することはほとんどなくなったが、
アルバイトをしながら、その男たちの仕事も手伝い続けていた。
バイトの10倍以上の給料があるのだから
やめられるわけがない。

そして時は過ぎ、
一番やっかいな病の発症という悪夢を迎える。

もう生きていけない。
そう思った彼女は一度家出をする。
そして、一番信頼しているいとこのもとへ身を寄せ、
真実を全て語ることになる。
いとこは彼女の両親に全てを話し、
彼女は許された。

しかし、身体の中に時限爆弾を抱えている状況は変わらなかった。

僕が彼女を知ったのは、
もう末期の頃だったのかもしれない。

僕は自分のセックス経験と女性遍歴をネットに流していた。
そんな僕にメールを送ってきたのだ。

やめたほうがいいですよ、と。

でも僕は僕なりの論理で彼女を論破していった。
もちろん彼女が病に冒されていることは当時知らされていなかったから、
俺とセックスしたら、天国イケるよ、
なんてメールも送ったことがある。

すでに地獄への扉を開いていた彼女にとって
それは皮肉にもならなかったかもしれない。

僕がHPを更新するたび、
彼女は感想を送ってくれた。
チャットしたり、スカイプで話すこともあった。

絶対におとしてやろう。
そう思って彼女と付き合っていた。
しかし彼女の住んでいるところはあまりにも遠かった。

そんな時、僕は彼女の住む県への出向が決まった。
当然、会いたい、という話になった。

するとしばらく返事はなかった。

僕がその地に向かう前夜、
ついに返事がきた。

全て告白された。
上のような内容のメールを送ってきたのだ。

僕は彼女との連絡を絶った。

だって何を話せばいいというのだ。
重すぎる。
そんな思いで月日は過ぎていった。

そして彼女の家族と名乗る人からメールが届いたのだ。

本日、Mは永眠いたしました。

その後長々とした文章がつづられていたが、
僕はショックで読み進めることができなかった。

後悔しているかというとそうではない。
ただ、スカウトした男、彼女をそんな世界に引き込んだ人間への
憎悪だけがわきおこった。

お願いです。
スカウトなんかに引っかかって人生を棒にふらないように生きてください。
目の前に大金を積まれても、断る勇気が必要です。
あなたにはそれ以上の価値がある存在なのだから。

そんなメッセージを彼女がから受けたような気がします。
これを記すことで、道を踏み外す女性が増えないよう、
願っています。

ちょっと重いので、後で消します。


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