せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2001年12月07日(金) |
国会図書館 傑作劇場 ぺんぺん「明治一代女」 |
「犬神家の一族」のシナリオを探しに、国会図書館に行く。 ていうか、国会図書館のサイトで蔵書の検索をしたら、ちゃんとあったので、そのデータを手に、コピーをゲットしに行く。 丸の内線の国会議事堂前の駅を出て、てくてく歩く。 いちょうの並木がきれいに黄葉して、歩道にいっぱい散ってる。 商店街とちがって、このへんは落ち葉が散ったからって掃除する人もいないのねと思う。 でも、かえってきれいかもしれない。 幅の広い道路は車の通りもあまりなくて、広々としてる。 冬の晴れた空はとっても青々していて、ただ歩いてるだけでいい気持ちだ。 行ったことないけど、パリってこんなかんじなの?とか思って、気分は勝手に岸恵子(パリのおばさま)だった。 と、向こうで僕に向かって手を振る人がいる。 誰だろうと思ったらば、このあたりで仕事をしてるホンダさんだった。 お昼休みで買い物に行くところなんだって。 「買い物って、このへんってお店あるの?」と聞いたらば「ちょっと地下鉄に乗ってね」との答え。大変ね。 それにしても、こんなふうにばったり会うなんて、びっくり。 しばらく一緒に歩いて、おしゃべりして、バイバイ。 国会図書館は、久し振りだ。 大体、いつも、台本を探しに来てる。 矢代静一の「宮城野」とかノエル・カワードの「陽気な幽霊」とかね。 データをプリントアウトして持ってきたので、検索の手間がいらなくてラクチンだ。 さくっと持ってきてもらって、複写をお願いして、30分ほどで終了。 続いて、上野の傑作劇場にタックさんが出てる映画を見に行く。 今日まで……ということだったのでね。 その映画「浮気な僕ら」は、今泉くんが脚本を書いてる。 彼は、この映画の出来が気に入らなくて、自分でビデオを取り直してる最中。 うちのヨシオが出演もしてる。 で、元々はどんな映画なのか、タックさんはどんな芝居をしてるのかしらと興味津々でやってきた。 同時上映の「ビースト・シャドウ」には、仲良しのヒラリンこと平倫太郎さんが出演。 これも見逃せないでしょってかんじ。
で、最初は「ビースト・シャドウ」から。 奥多摩のバンガローに遊びに行ってる仲良し三人組(?)が、次々と襲われる。 その怪人(?)は、シーツのようなものにくるまっていて、三人はがんがんファックされてしまう。 いったい何者?ってことになるんだけど、同じようなシーツを着た「女」が登場して謎は判明。 女は例の男の「双子の姉」で、子供の頃に父親から受けた虐待から、私たち姉弟はシーツにくるまって逃げていたのだと。 そして、弟は、成長して、父親より腕力が優った時、父親を犯してしまい、それ以来彼は「普通でなくなった」のだと。 そんな中、三人のうち最後まで無事だった一人が風呂場で犯されてしまう。 で、姉は弟と会って話すんだよね。 父親に虐待されてた私たちには物語が必要だったんだと。 その物語を作り出してきおかげで私たちは生きてこれたのだと。 でも、弟が父親を犯したというのは、新しく作った「物語」で、実際には、犯すことはできなかったのだと。 その話を聞いた弟は、外へ出ていく。 犯されてしまった三人は、「畜生!」とか言いながら、川遊びをしている。 ふと、「俺たち、何だか楽しんでないか」と言ってみる。 その時、川の中に不思議な白いもやもや(!)が……。 場面が変わると、川の上流では、あの弟が川に向かってオナニーをしていた。 で、「オナニーするとき、僕は風と結婚する」という文字が出て、おしまい。
ファックシーンがいっぱいあって、さすがに「薔薇族映画」ってかんじなんだけど、僕は「これって『怪獣映画』みたいだな」と思って見てました。 ほら、昔のウルトラマンとかに出てくる怪獣って、何か悲しいものを背負ってて、最後に消えていくのも、どこか物悲しかったりして。 このお話の弟も、なんだかそんな「怪獣」みたいだなと思ったんでした。 最初びっくりしたもの。 森の中でシーツかぶった怪しいヤツにいきなりファックされちゃって。 白いシーツに血が「ピューッ」とか飛んじゃって。 いくら激しくやったって、あんなには飛ばないでしょ?ってかんじ。 gaku−GAY−kaiやパレードで「怪獣」ぶりを見せてくれてるヒラリンさんが出演してるっていうのも、「怪獣映画感」を増してたかもしれない。 何だか不思議な映画でした。 こういう映画ができてしまうのって、やっぱりおもしろいと思う。「薔薇族映画」って。 セックス描写なんて、ほんと言い訳みたいなもんだもん。 ていうか、そうじゃないところのおもしろさがいいよね。
で、もう一本、今泉くんの脚本により「浮気なぼくら」 これもまたセックス描写が最初と最後にしかなくって、「ほんとにこれでだいじょぶなの?」ってかんじの映画だった。 お話はこんな。
主人公の男の子が、彼氏の誕生日を祝おうと彼の部屋で待ってる。 その頃、その彼は、浮気相手の部屋でエッチの真っ最中。 部屋に戻って、浮気の報告をする。 「何でそうなわけ?」と切れた主人公は、「僕も浮気してやる!」と宣言して、新宿へ出ていく。 浮気な彼は、さっきの浮気相手の部屋に戻って、相談する。 主人公の「浮気の相手になってくれないか?」って。 浮気相手の彼は(ややこしくてごめんね)「相談する相手間違えてるんじゃない? 出てって」と突き放す。 主人公の彼は部屋を出て行くんだけど、浮気相手の彼も、やっぱり後を追って出ていく。 一方、新宿に出た主人公は、バーで飲むことにする。 その店は典型的な「くっつけバー」でマスター(この役がタックさんね)が主人公と隣に座ったさえない中年男をくっつけてしまう。 仕方なく外に出ると、突然、空から「バケツ」が! 中年男は気を失う。 「人殺し!」と誰かが叫んだので、主人公は慌てて逃げ出す。 そのバケツを投げたのは、実は、主人公の恋人=浮気な彼だった。 彼は、主人公の後をずっとつけていく。自転車に乗ってね。 と、主人公は怪しい外人に道を尋ねられる。親切に答えていると、暗い道で怪しい外人たちに取り囲まれる。そしてゴージャスなドラァグクィーンのマーガレットさんが登場! 彼らは、ぼったくりバーの呼び込み(?)だったのだ? 逃げようとする主人公。でも、そうはいかない。 すったもんだしていると、空から空き缶が飛んできて、外人の頭に激突! その隙に逃げ出す主人公。 缶を投げたのは、またしても浮気な彼の仕業だった。 逃げる主人公は、途中で親切な車に拾われる。 その車で最寄りの駅まで送っていってもらう。 その車を運転してたのは、浮気な彼の浮気相手。 「何してんだか?」と呟く、彼。 ぷらぷら歩く主人公。ふと公園にたどりつく。 ブランコで、「そういえばここで彼とおしゃべりしたなあ」なんて楽しい思い出をなつかしんでる。 と、「一人?」って声をかけてくる、優しい男の人が。 親密なムードの二人。 またしても追いついて、影から見てた浮気な彼は、スニーカーを脱いで、またもや投げる! でも、今度は主人公にうまくよけられてしまう。 主人公と男の人は、歩き出す。 男の行きつけの閉店後のバーでしゃべる。 男は、つきあわないかとさそうんだけど、主人公は断る。 で、二人でボーリングに行くことにする。 そして、夜明け間近な新宿。 西口の地下道のタクシー乗り場で主人公と男は、別れる。 主人公は、部屋に来ないか?っていう誘いを断って、携帯の番号だけをもらってね。 で、一人で歩いて、南口までたどりつく。 と、そこへ、自転車を押して、浮気な彼がやってくる。 何となく、仲直りして、二人で自転車に乗って、帰っていく。 朝の人気のない明治通りを走っていく自転車。 主人公は、携帯の番号が書いてあるメモを丸めて捨てる。 部屋に戻った二人は、仲良く抱き合うのでした。
っていうお話(かなりアバウトだけれども)。 この映画も、不思議な映画だった。 途中ずっと「純愛路線」が続くので、見てる人達、おそらく「ハッテン」目的な人達も、なんだかノリが違くなっててね、まじめにじっと画面を見てた。 新宿の街での夜から朝までっていうお話は、フライングステージでは「Love Song」っていう芝居でやったんだけど、芝居と映画ってやっぱり違うんだなあと思えておもしろかった。 街と時間が醸し出す空気感っていうのは、やっぱり映像にはかなわないよね。 もっとも、それを承知で作り出した舞台だっていうのは、もちろんあるんだけど。 今泉くんが撮り直したいと思うのも、よくわかるような「ノンケから見たゲイ」像がてんこもり。 それでも、今泉くんがやりたいことっていうのは、よくわかる気がしたなあ。
で、上野から新宿へ。 タイニイアリスで劇団ぺんぺんの「明治一代女」を見る。 その前に、ラピスに寄って、「gaku−GAY−kai」フライヤーを預けてくる。 8時開演で、終演は何時?と聞いたらば10時30分との答えが! 覚悟して見たんだけど、10時10分には終演してました。 お話は、「橋の上団十一郎一座」が上演する新派の名作「明治一代女」のお話。 以前見た、「瞼の母」では、旅の一座の内紛と劇中劇の「瞼の母」が交錯してたんだけど、今回は、間に劇団員紹介の口上をはさんで、シンプルに「明治一代女」を上演する形。 座長の橋の上団十一郎を演じる弘さんは、芝居がほんとに大好きなんだなあと思った。 主役のお梅をやってるんだけど、芸がこまかくてね。 大好きな太夫(歌舞伎役者)の襲名披露のためのお金をつくるため、自分に惚れてる箱屋のみの吉の言うことを聞いてしまうそのつらさとか、一度は別れようと思った太夫と、もう一度一緒になれると知ったときの嬉しさとか、とってもていねいな芝居をしてた。 本当なら幕のないタイニイアリスに定式幕を吊ってたんだけど、途中でその幕がレールにつっかかってしまってね。どんどん外れてきてしまった、大変そうだった。 フィナーレは、恒例のミュージカル「コーラスライン」のナンバー「ワン」に合わせて総踊り。賑やかな打ち出しでした。
終わって、タックスノットへ。タックスノットへ置いてもらうフライヤーを届けに。 ウスイさんとコタくん、そして、金曜日のマサルくんたちと、わいわいとおしゃべり。 終電近くやってきたコタくんと結局ラピスでオール。 ひさしぶりに「ほんとに眠かった」。 それでも、電車を乗り過ごすこともなく、無事に帰宅。 即、ダウン。
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