Scrap novel
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2002年01月28日(月) |
スクランブル☆パーティ2−2 |
<スクランブルパーティ2−1から続き> 「はあ? 3つの質問。真面目に本気で答えること。パスはなし」 「ということで、前にきて。じゃあ、タケルくんにしつもーん!」 「はい!」 「ミミくん」 「一番最近で、一番恥ずかしかったことは何ですかー!」 「え・・・・えと。恥ずかしかったこと・・・。えっと、島根から帰ってくる新幹線の中で・・・・」 言いながら、ちらと上目使いに兄を見る。あきらかにぎょっとした顔をしているのが内心おかしい。 ・・・・言うわけないでしょ、そんなこと。 「名古屋から乗ってきた金髪のお姉さんに、いきなり抱きつかれてキスされたことです・・・」 「ええええええーーーーー!!!!」 タケルぅ、うらやましいー!と男子からの声の中、ヒカリと京と伊織からは悲鳴に似た叫びが・・。 なぜに伊織くん?と思いつつ、まあ事実だし、しかもその人、胸はあったけど、実は男の人だったってあとからお兄ちゃんに教えてもらったし。 ・・とそんなことは言うまい。とタケルが思っていると、間髪を入れずに伊織が手を上げた。 「タケルさん、好きな人いますかー!」 突然の質問に、皆の円の中央にちょこんと正座していたタケルの肩がびく!と震える。 好きな人って・・・。そんないきなり。 胸が急にドキドキしてきて、頬が熱くなってくる。 「正直に答えてね。タケルくん?」 どうしよう・・・。ええい、ままよ。 丈の言葉に、消え入りそうに小さく答える。 「・・・・・・います」 おお・・!とデジモンたちまでもが一緒にどよめいて、タケルが思わず下を向く。 「じゃあ、じゃあ・・・。その人が誰か教えてくださいー!」 「み、京さん!」 「いいじゃない、ヒカリちゃん、こんなチャンス滅多にないよお」 「だ、だって・・・・」 意気上がる京と、それを慌てて止めようとするヒカリと、固唾の飲むようにして見守る伊織に見つめられ、その上みんなの視線を一身に浴びて、タケルが真っ赤になってうつむいて瞳を見開く。 そして、きちんと正座した膝の上で、ぎゅっと両の拳を握りしめた。 (言えないよ・・・・そんなの・・・・だって・・・・) 少しだけ視線を上げて、その先にいるヤマトを見る。 その横にいる空も一緒に視界に入ると、タケルはあわてて再び目線を下ろした。 切ない想いが胸を溢れる。 (だって、誰の目から見てもお似合いだもん・・・僕があの隣にいるよりもずっと・・・でも・・・・どうしよう・・・? それでも、それでも・・・) 僕は、おにいちゃんが・・・・。 「お・・・・」 小さく言いかけたところでそれを遮るかのように、大輔が言った。 「ああ、もういいじゃねえか! くだらねえ! タケルの好きなやつ聞いたって、何の得にもなんねえだろ!」 「ええ?だってさー。あ、そうか。もしもタケルくんの好きな人がヒカリちゃんだったりしたら、この場で即失恋決定だもんねー!大輔。それでムキになってんだー?」 「だだだ、誰もムキになんかなってねーっつーの!」 京と大輔のやりとりと、黙ったまま俯いているタケルに困って、丈が思わず助け船を出す。 「まあ、じゃあ、ここは大輔くんの失恋回避ってことで大目に見ようか?」 「じょ、丈さんまでー!」 「タケルくん? もういいよ。席もどって?」 「ぼ・・・・・僕は・・・・」 丈の言葉に動こうともせず、まだうつむいてじっとしているタケルをいぶかしげに皆が見つめる。 〈動けない・・・・どうしよう・・・) 今少しでも動いたら、目の奥でとまっている涙が、そこからはずみで溢れてしまいそうで・・・。切ない想いと一緒に。 じっとしたまま動けないタケルのその頭に、ポンとやさしい手が置かれた。 見上げるタケルの瞳に、ヤマトが微笑んで映る。 「タケル」 「え・・っ?」 「好きな人って別に“お母さん”でも“おにいちゃん”でもいいんだぜ? 俺はガキの頃からずっと、おまえが好きだったけど。・・・おまえは?」 ヤマトの言葉に、タケルが驚いたように兄を見つめ、大きく瞳を見開いた。 「おにいちゃんを好きだって、言ってもいいの?」と問う瞳に、兄の瞳が「いいよ、もちろん」とやさしく言う。 それをじっと見つめて、それからゆっくりと、ゆっくりと目を細めて微笑んだ。 「うん。僕もおにいちゃんが、好きだよ」 タケルの言葉に、ヤマトがくしゃっとその髪を撫でた。 照れくさそうに笑う兄に、タケルが少し肩をすくめた。じっと見つめ合う。 「あ、あのなあー! だから、兄弟で見つめあって赤くなるなってんだよ、おまえらはー!!」 太一が呆れたように喚くと、クリスマス会の時と同じ流れに、皆が一斉にどっと笑い出した。
「楽しかったねえ、百人一首」 「そうですね、空さん。今度は対戦でやりましょう」 「あら、負っけないわよー、光子郎くん!」 「空くんは、勝負ごとになると怖いからなあ」 「ひどい、丈先輩」 「じゃあな、ヤマト。ごちそーさん」 「ああ、太一。また明日な」 「おう。帰るぞ、ヒカリ」 「はい。じゃあ、おやすみなさい」 「ありがとうございました」 「おう、一乗寺もまた来いよ」 「んじゃ、ヤマトさん。俺たちもこれで」 「ああ、大輔もまたな。・・・と、おい!おまえは帰るな」 「え?」 皆を玄関に送りだしていたヤマトが、同じように靴を履いて出ようとするタケルの首ねっこを後ろから掴まえる。 「後片付け、手伝えよ」 「あ・・はい」 「あ、あたし、手伝おうか?」 戻ってきた空に言われて、ヤマトが笑って答える。 「いや、大丈夫だって。こいつに手伝わせるから。今日は早くきてくれて助かったよ。サンキューな、空」 「どういたしまして。早めに押しかけてきてよかったわ。すっごーーっく汚かったもん」 「はいはい、恩に着るよ。じゃあな」 「うん。またね」 手をあげて太一たちと廊下を行く空と入れ替わりに、京がタケルのもとに駆け寄ってくる。 「あ、あ、あのタケルくん。さっきはごめんね。あの、私、別にタケルくんを困らせようとかそういうんじゃなくて・・」 しどろもどろになる京に、にっこりとタケルが微笑む。 「やだなあ。気にしないでよ、京さん。僕の方こそ、なんか、ウケるジョークでも言わなくちゃって固まっちゃってて・・」 「え?そうだったの?」 「そうだよ? でも、なんか結局パニくっちゃって訳わかんなくなっちゃって・・だから、気にしないでね?」 「そっか、よかったぁ・・・だったら。じゃあ、また。ヤマトさん、ありがとうございましたー!」 ぺこと頭を下げて京が駆けだしていく。 それを見送ってヤマトとタケルは、少し疲れたように顔を見合わせた。
「ねえ、さっきさ・・」 大輔の家で夕食を食べていくことになった賢が、一緒に歩く大輔をチラリと見て、呟くように言う。 「僕、真後ろにいたからよくわかったけど。震えてたよね? タケルくん」 「・・・そっかー?」 「冗談で適当にかわしちゃえばいいのに、それもできないくらい、震えるくらい、その人のことが好きなんだな・・・って、そう思った」 「・・・・ああ」 「大輔、カッコよかったじゃない。君が言わなければ僕が、言おうと思ってた。京さんに悪気がないのはわかってるけどね」 「別にィ! 俺はタケルをかばったわけじゃないぜ。ただ、なんとなく、ちょっとムカついたっていうか・・・」 悪びれるように言う大輔に、賢が少し肩をすくめる。 と、後ろから走って追いかけてきた人影に、ふいに立ち止まって振り返った。 「大輔くーーーん!」 「タケル?」 「大輔くん!」 はあはあと息をきらして駆けてきたタケルに、「なんだあ?」と大輔が素っ頓狂な声を上げる。 「さっき、ありがとう。それだけ、言いたくて」 「え?」 「明日、言っても、君、なんのことだ?とかトボけちゃうでしょ?だから」 「あのなあ!俺は別におまえをかばってわけじゃなくて・・・!」 「ああ、やっぱり、かばってくれたんだ・・! ありがと、じゃあね」 「え?え? おいこら、待て! だから、かばったわけじゃなくて!! 本当にそれだけかよ、タケルー!」 言うだけ言って、めいっぱいの笑顔を残して、踵を返して来た道を駆け戻っていくタケルを、大輔は狐にでもつままれたような顔をして、呆然と見送った。 「・・たく、なんだよ、アイツ・・」 「・・・・大輔。顔、赤いよ・・・」 「・・・・・うるせえっ」
「ただいまー」 ばたばたと玄関で靴を脱ぐなり、そのまま廊下を走って、キッチンに皿を運ぼうと何枚も抱えているエプロン姿の兄の背中に、タケルが飛びつくようにしがみつく。 「おいおい」 「おにいちゃん」 「皿が落ちるよ、おいって」 「おにいちゃん!」 「ん?」 「・・・・・・嬉しかった・・・・」 「・・・・・・ん」 「ありがとう」 「礼を言うようなことかよ?」 「うん・・」 そのまま、ぎゅっと兄のエプロンにしがみついて、ちょっと、くすんと鼻を鳴らす。その手に自分の手を重ねて、ヤマトがやさしい声で言った。 「おまえ、寝てていいぜ? 後は俺がやっとくから」 「え?」 「昨日の今日で疲れたろ? 後で飯つくってやるから、それまで寝てろよ」 「おにいちゃん・・・」 「空がさ、気きかして早めにきてくれたんで助かったよ。おまえ、来ねえから、マジでどうしようかと思ったぜ」 「あ、ゴメン。寝てて、メール気がつかなくて・・・・」 「いいよ」 「ゴメン」 「だから、いいって」 皿を流しに置いて、ヤマトがくるりとタケルを振り返る。 その腰に両手を回して指を組み、少し上気した目元にキスをする。 「空のことは好きだけどな、友達としてだからな。・・・・おまえの心配するようなことは、何もねえから」 「おにいちゃん・・」 「だから、泣くなって・・・」 切ない想いに見上げていると、ヤマトが笑ってそっと口づけをくれた。 その口づけに答えようと、かかとを少し上げて、自分からその首に腕を回して、もう一度唇を重ねる。 ヤマトの腕がそっと、彼のいじらしい弟の身体を抱き寄せた。
そんなわけで。 今年も、大波乱が待っているであろう一年が始まった。 デジタルワールドもリアルワールドもひっくるめて、何が起こるかわからない未来が待っているのに違いはないが、 それでもきっと、信じていれば、何もかもがうまくいく。 互いの身体を抱きしめ合っていると、そんな自信さえわいてくるから不思議だ。 第一、よくよく後から冷静に考えてみれば、新年早々、みんなの前で、互いが好きだと大告白をしてしまったのである。 もっとも、誰も本気にしていないというか、この兄弟ならそれくらいのことは言って当然と思われているのか、反応としてはいまいちだったのが気にならないでもないけれど。 その中で唯一。ただ一人。本宮大輔だけはこの一件で、知らなくてもよかったはずの自分の気持ちを知る羽目になってしまい、苦悩の日々を送ることになるのだが・・・。 まあ、それはまた、後の話ということで。それも良しということで。
END
というわけで、長いよ! あきらめきれなかった新年会をついにアップしてしまいました。 えと、罰ゲームのこの3つの質問てやつは、実は元ネタがありまして。もう、ずいぶん昔の有名な少女マンガのワンシーンなのですが、震えるほど好きというのがそそられて、ついにパクってしまいました。えへへ。 それにしても、登場人物が多くて、台詞がどれが誰なのかおわかりになるでしょうか? だいたい話し方の特徴でわかるかと説明はつけてませんので、わかりにくいとこは適当に予想で読んでやってください〈笑) えと、この話は、ヤマタケはもちろん両想い。賢ちゃんは大輔。大輔はどうやらタケル。空はやっぱりヤマト。ヒカリは太一?タケル? しかもこの伊織はどうよ? ということで微妙に「彼と彼とー」の設定とは違うのですが、なんか自分でもややこしいです・・。 「彼と彼と僕らの事情」はじわじわと結構「続きを!」とリクエストいただいて嬉しい限りでございますv しかもヤマト本命としつつも、一番人気はなんと賢ちゃんでございますよ! なんかはりきって書かねば!という気になるなあ。またそのうち書きます。 見てやってくださいませね。〈風太)
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