Scrap novel
INDEX|past|will
2001年12月24日(月) |
スクランブル☆パーティ |
クリスマスイブの午後。 ちょっと皆より到着の遅れたタケルがパタモンを抱いて、太一宅を訪ねた時 には、既にクリスマスパーティは大変な盛り上がりようになっていた。 「あら、タケルくん。いらっしゃい。遅かったのね」 「田舎から宅急便が届くから受け取っておいてって、母に頼まれてたんです けど。午前中に届くはずがなかなか来なくって」 「ああ、そうだったの。とにかく上がって。みんなお揃いよ」 太一の母に通されて部屋に入ると、そこは耳を覆いたくなるほどの賑やかさ で、タケルは思わず苦笑いを浮かべてしまった。 「おう、遅かったじゃねえか、タケル!」 「ごめん、太一さん。宅急便が・・・」 太一に言われて、午前中に受け取るはずの宅急便がなかなか着かなかった ことを告げて、タケルがとりあえず奥の開いている所に坐りこむ。 「何やってたんだぁ、タケルー! おっせーなあ」 「だから、田舎から届く宅急便待ってたんだってば。今言ってたじゃない。 大輔くんてば、もう!」 「ああ? 怒ることねえだろー! なんかもううるさくて聞こえねえって」 太一たちの部屋では狭いので、少し広めの父の部屋を借りてはいるが、とに かく新旧入り混じった「選ばれし子供たち」総勢12名とそのデジモン達が 一同に会しているので、その賑々しさといえばただごとではない。 マンションなので上下左右の部屋の迷惑も大変なものだろうが、そこはクリ スマスということでなんとか大目に見て欲しい。と、太一の母は思っている に違いない。 カラオケでは丈と太一が歌い、デジモンたちはそれに合わせて適当に楽器を 持ってはしゃぎ、キッチンで太一の母を手伝う空とヒカリ以外は、円になっ て坐り、ゲームで盛り上がっている。思わず呆然としていると、ちょうど真 向かいに坐っていたヤマトと目が合った。 ここのとこ何かと忙しくて、電話だけは毎日していたものの、会うのはゆう に10日ぶりだ。 それも皆がいっしょだし何だか妙に気恥ずかしくて、タケルは思わず少し頬 を染めると目を反らした。 「あ、何か飲む?」 隣にいた賢がペットボトルを手に聞いてくれ、タケルは思わずにこりと微笑 んだ。 「ありがと。じゃあ、オレンジジュース」 「はい、どうぞ」 手渡されて、お互い困ったように笑い合う。 「すごいね、なんだか」 「本当にね。みんな出来上がってる」 「圧倒されてるでしょ? 一乗寺くん」 「君こそ、大丈夫? 顔赤いよ?」 言われて“これは・・”と弁解し掛けた所で、ドアを開いて入ってきた空が ヤマトを呼んだ。 「ヤマト、ちょっと・・」 「ああ?」 手招きされて立ち上がる兄を見ないようにしていると、空が゛生クリームが うまくいかなくて”と言っているのが聞こえるでもなく耳に入ってくる。 そのまま出て行ってしまったヤマトに、タケルは小さくため息をついた。 「ここにも女のコがいるっていうのに、どーしてヤマトさんに頼むかなー 空さん。ねえ、京ちゃん?」 「ですよねえ、ミミお姉さま。あったしだってえ、ケーキの1つや2つ!」 「そりゃあねえー・・・ 伊織くん?」 「はい、ここはヤマトさんに頼まれるのが妥当だと思います」 顔を見合わせる光子郎と伊織に、“なによお、なんか文句ある?!”と女の 子ペアが詰め寄っていく。 大輔はいつのまにか、ゲームはそっちのけでカラオケの方に加わって、頭に ガンガン響く声で歌っている。 「おおい! 賢もタケルも歌えよお!」 指名されて賢と顔を見合わせると、思わず笑いがこみあげてくる。 「いや、お酒も入ってないのに、テンション高いよねえ」 「まあ、いつもハイテンションではあるけどね、大輔は」 「なにごそごそ言ってんだよ!おまえら! さっさと来いって!」 困った顔で立ち上がる賢を“頑張って”と笑いながら見上げると“高石くん も”と誘われて、仕方なしに立ち上がろうとした時、ミミと京の“ところで さ。ヤマトさんと空さんって・・・”と話す声がふいに耳に飛び込んできて、 タケルは咄嗟に置こうとしていたジュースのグラスをこぼしそうになって、 慌ててバランスを崩してしまった。ちょうどドアを開けて入ってきたヤマト が、つんのめるようにして倒れ込んできたタケルを思わず腕に抱きとめる。 「おっと・・」 「あ、ごめ・・・・」 皆の輪のど真中でしっかりと抱き合う形になって、それよりも久しぶりに ヤマトの胸に抱き締められたことに驚いて、タケルが耳までパアっと赤く なる。 回りに皆がいるのも忘れて、抱き締めあって見つめ合って赤くなる兄弟に 一瞬水をうったようにシン・となってしまった部屋に呆れたような太一の 声が響いた。 「オイオイ、おまえら・・・ いつまで抱き合ってんだよ?」 「タケルー! 兄弟で見つめ合って赤くなるなって!」 “こっちの方が恥ずかしくなるからよー!”と大輔が叫んで、皆がどっと 笑い出す。思わずばっと兄から離れて、タケルは慌てて自分の坐っていた 場所に戻った。ヤマトが少し困った顔で、笑いながら太一の横に行く。 ブラコンだなんだとひやかされて、照れ隠しにその頭をこづく姿に、京と ミミがこそこそと囁きあって微笑み合う。 「ちょっと、今の美味しかったですよねー ミミお姉さま!」 「うん、いけてるいけてる!ビジュアル的には空さんよりタケルくんかな ー!」 盛り上がるミミと京に、光子郎が゛何言ってんですか・・”と隣でこちら も何気に赤くなって、呆れたようにまた伊織と顔を見合わせた。
太一の家に来てから数時間。 外はすっかり暗くなり、食事を真中に宴もたけなわ。 なのはいいが、どうも気分が悪いな・・・と感じながらも言い出せずに、 タケルはとりあえず笑ってジュースばかりを飲んでいる。 あんまりの賑やかさと、人いきれにどうも酔ってしまったらしい。 よくあることなので、できるだけ気にせずに、お開きになるまで我慢しよ うと心に決めて無理に笑顔をつくっていると、ふいに目の前に手が差し出 された。 見上げると心配そうなヤマトの顔がある。 「外、出るか?」 言われて、差し出された手に掴まると、立たせてくれてそっと肩を促され る。なんだかタケルは、その一瞬にひどくほっとしている自分を感じた。 「どうした?ヤマト?」 「ああ、大丈夫だ。こいつ、人酔いするから」 言って、タケルの腕をとったまま部屋の端を通って、ベランダに出る。 外は既に気温が低く寒かったけれど、人の熱気に酔ったタケルには、その ひんやりした空気がひどく心地よかった。 「大丈夫か?」 心配そうに言われて、頬を染めて「うん」と微笑む。 「でも、誰にも気づかれてないと思ったのに」 「俺の目まで誤魔化せると思うなよ?」 少しおどけた口調で言う兄に、笑いながらそっとその腕に甘える。 大きな手が伸びてきて、タケルの頭を胸にそっと抱き寄せた。 いつもはこんな我慢もとことん通すのに、今日はお兄ちゃんがいてくれる から、そんなことしなくてよかったんだ・・と、その胸で安心したように 目を閉じる。 「寒くないか?」 「うん、平気」 「おまえ・・・さっきから、俺を避けてたろ?」 「避けてないよ。でも、久しぶりだったから、なんだか顔見るの恥ずかし くって・・」 「・・バーカ・・・何、言ってんだよ・・」 タケルの言葉に、照れたように呟くヤマトに、タケルがその胸から兄を見 上げる。 「照れてる?」 「照れてねえよ・・」 「嘘ばっかり」 「・・・こいつ」 額をこつんとぶつけて笑い、それからふいに部屋の中からこちらを伺って いる大輔をチラリと見る。ヤマトは二ヤリとすると、タケルの顎を指先で 上げさせ、少しだけ触れるだけのキスをその唇に落とす。 部屋の中では大輔が真っ赤になって“うわあ”と叫ぶのが聞こえた。 隣にいる賢が不思議そうな顔をしている。 タケルはそれに気づくと、こちらも真っ赤になってヤマトを睨みつけた。 「ああ!大輔くん見てるの知ってて、わざとキスしたなあ、お兄ちゃん!」 「悪いか?」 「悪いかって! 悪いに決まってるでしょ、もう! これでまた当分から かわれるじゃない!!」 「何て?」 「ブラコンとか、実のお兄ちゃんと出来上がってるとか・・」 「本当のことじゃん」 「・・・・そうだけど・・・」 抗議の目を向けたまま、上目使いに兄を見ると、ヤマトがさすがに悪かった と笑って謝る。笑っているあたり、反省の色はないが、後で適当に誤魔化し てくれる気ぐらいはあるんだろう。大輔もさすがに人前で指摘する気はない ようで。それでも、あれは後からネチネチと言ってくるなという予感はする が、一応今はできるだけ平然とトランプにいそしんでくれている。 タケルはほっとしたような顔になると、できるだけ中から見えない隅まで兄 をひっぱると、もう一度その胸に甘えるように頬を寄せた。 ヤマトが“なんだよ・・”と笑いながら抱きしめる。 「会いたかったんだ・・・」 「俺もだよ・・・」 「今日、来なかったらどうしようかって思ってた」 「おまえに会えるのに、来ないわけねえだろ?」 「ん・・」 「おまえさ・・今日は、このままウチ来いよ。せっかくのイブだし」 「・・・・・イブだしね」 「・・・・フケるか」 「いいの?」 「おまえ、気分悪いんだろ?」 「あ、僕のせいにする気?」 「いいだろ」 「いいけど」 見つめ合って、ふふっと笑う。今度は誰にも見られないようにキスをした。
それから、兄弟は、タケルが具合が悪いからとかなんとか理由をつけて、 そこから早退することに成功した。 皆一様に、タケルの具合を心配してくれたけど、ただ一人大輔だけは複雑 な面持ちでそれを見送っていた。 そんなわけで来年も大いに波乱が巻き起こりそうだけれど、まあそれもいい だろう。 とにかく今は、タケルはヤマトの腕に甘えながら恋人でにぎわう街を歩いて、 ひたすら幸せだったのだし。
「あ、そうだ。新年会もまた、あのメンバーでやるってさ」 「ええー???」
ああ、もう。原稿中のせっぱつまった所なのに、何やってるのでしょう? 私は。 けど、年に一度のクリスマス。これを逃すとまた一年、クリスマスネタが 書けないのかと思うとついつい・・・。 久しぶりに書いたので、なんだか文章が変ですが。まあ、いつものことか ・・ということで、ご勘弁を。 みんな出てくると騒然としちゃって、なかなかキャラ全部書ききれないの が残念ですが、それでもすっごく楽しかったです。みんな可愛いからなあ。 デジモンたちにももっとおしゃべりしてほしかったけど、果てしなく長く なるので省略。また機会があったら書きたいですねー。 しかし、パタモン、太一のうちに置いて帰りましたね? タケル・・・。 まあ、テイルモンとイブを過ごすからいいのかな?ということで。はい。
|