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2001年11月09日(金) メール3(ヤマトのリベンジ!)

放課後、掃除当番で遅くなったタケルは、パソコン室までの廊下を一気に駆け上がり、息せききったまま、ガラリとその扉を開けた。
「ごめーん・・・掃除当番忘れてて叱られてたら、遅くなっ・・・」
いつもの笑顔でそう言ったタケルの言葉が途中で途切れ、開けた扉の間で足がぴたっと歩を止めて、中にいる人の顔に釘付けになる。
「おっせーよ、おまえ! じゃあ揃ったことだし、みんな行くぜぇ!」
相変わらず脳天気な大輔は気づかないが、京とヒカリが少し妙だと言う顔をする。
いつもなら、ここでタケルの最高の笑顔が見られるシチュエーションなのに。
少し強張った顔で、思いもかけず部屋の中にいた兄を見上げている。
そのヤマトといえば、こちらもいつもの、あの弟を見るなりつい表情がゆるんでしまうという微笑みもなく、どちらかというと怒っているような顔でタケルを見下ろしている。
「ちょっと来い」
言うなり、立ち止まっていたタケルの腕を取り、そのままグイッ!とひっぱって廊下に出るヤマトに、タケルが驚いたようにその背中を見上げた。
大輔は出鼻をくじかれた形で呆然とし、ヒカリと京が何事ならんと顔を見合わせる。伊織は少し、心配そうな顔をした。
「お、お兄ちゃん・・・?」
明らかに怒っているらしい兄に、まさか“あんなコト”でそうまで怒らないと思っていたタケルは、ちょっとだけ自分の悪戯心を後悔した。
もしも、ヤマトが怒っているとするなら、それ以外原因は考えられないから。

・・けど・・! だって、こっちだって、充分恥ずかしい思いしたんだから!
  あれくらいのイタズラで、そんなに怒んなくったって・・・!

心の中ではそう思うけれど、あまりの剣幕に声が出ない。
そのまま、腕をひっぱられたまま、空き教室を見つけると押し込まれ、後ろ手にピシャリ!と扉を乱暴に閉められる。
そして、見上げるなり伸びてきた兄の手に、タケルはびく!と身を縮ませると思わず目をつぶった。
「・・・な、なんだよ」
明らかに、そのタケルの反応に戸惑っているらしい兄の声に、恐る恐る目を開ける。
「え・・・?」
「何をそんなに怖がってるんだよ・・俺が殴るとでも思ったのか・・?」
あきれたように言われて、ちょっと涙目になる。
「だって・・・怒ってるもん。お兄ちゃん」
「怒ってたって・・おまえを殴ったことなんかねえだろ」
「ないけど。でも・・」
「それより」
また表情を作って、ヤマトがギロリとタケルを睨む。
「さっきはよくもやってくれたな!」
言うなり手が伸びて、盛大にタケルの鼻をつまんでひっぱった。
「痛い!痛いってば!! やめてよ、何するの、お兄ちゃん! 痛い〜!」
思わず赤くなった鼻を押さえるタケルに、ヤマトが笑う。
「お兄ちゃんをからかった罰だよ」
腰に両手をあてて弟の顔を覗き込むヤマトに、まだ“痛い・・”と言いつつも、なんだか笑いが込み上げて来る。
「もう・・お兄ちゃんってば、子供みたい・・」
「うるせえよ」
笑いながら言うヤマトに、タケルもついつられて笑って、それからふと気づく。
「あれ、バンドの練習は?」
「これから行く」
「え? それ言うためだけに来たの?」
「そう。メールじゃ鼻はつまめねえからな!」
笑うヤマトに、けどなんだか嬉しい気がして(鼻は痛いけど)タケルが微笑む。
その唇にそっとキスして、ヤマトが扉を開けた。
「じゃあ行くから。頑張れよ」
「うん・・」
2人して部屋を出て、廊下で兄を見送ろうとした時、タケルのDターミナルがメールの着信を告げる音をたてた。
誰からだろう?と不思議そうな顔でそれを開いたタケルは、その内容を読むなり、ぷぷッと吹き出した。笑いを堪える顔で見上げてくるタケルに、不審そうな顔でヤマトが見下ろす。
「メール、太一さんから」
いやーな予感がするが、とりあえず、聞いてみる。
「で・・・アイツ、何だって?」
「お兄ちゃん、鼻血出したの?」
「〜〜〜〜〜〜〜あのヤロ、余計なコトを・・・」
くるりと踵を返して、今にも太一を殴りに行きそうな勢いのヤマトに、タケルが慌ててそれを追いかけて、腕にしがみつく。
「ちょ、ちょっと待ってよ、お兄ちゃん!」
そこへパソコン室から追いかけてきたらしい大輔が『おい早くしろよ、タケル!』と苛々したように声をかけた。
「あ、ゴメン。大輔君! 僕、今日はパスするから。お兄ちゃんが具合悪いっていうから、家でゆっくり休ませた方がいいかなって・・・」
「はぁ?」
「タケルっ!」
「ね、お兄ちゃん」
腕を絡ませたままヤマトを見上げるタケルに、大輔がなんとなく面白くなさそうな顔で『わぁったよ!』とつっけんどんに言う。
「ごめんね、待たせて」
「べっつにィ! ま、いいけど。だいたい、おまえも今日変だったしな! ゆっくり頭冷やした方がいいんじゃねえの。授業中にイキナリわけのわかんねーこと言うしよォ」
ブツブツ言って立ち去ろうとするその捨て台詞に、タケルがカッと真っ赤になる。
「だ、大輔君!!」
「いきなり、立ち上がったかと思ったら『キモチ良かったです!』とか何とか。大方、居眠りでもしてヤラシー夢でも見てたんだろーけどな!」
「ちちちちがうよ! 変なこと言わないでよ!!」
「だってよー」
「もう! みんな待ってるんだし、さっさと行ったら?! デジタルワールド!」
耳まで赤くなって喚くタケルの後ろで、こそっと呟くヤマトの声がした。
「フーン・・」
「え・・・?」
ギクリとして振り返ると、ヤマトがにっこりと笑っている。
「なあんだ。やっぱ、キモチよかったんじゃん」
「何なに!? 知らないよ! 何の事だよ、もう〜!!;;」
「だからナニのこと」
さわやかに言われて、思わずさらに真っ赤になって絶句する。
「〜〜〜〜〜〜」
「イヤダとか言ってたけど、そうでもなかったんだ?」
「そ、そ、それは・・・・」
何の話かさっぱりわからず固まって立ち尽くす大輔に、ヤマトは“じゃあ、そういうことで、俺たち帰るから。悪いな”と笑いかけ、タケルの腕をひっぱり廊下をズルズルと引き摺っていく。
「やややっぱり、僕もデジタルワールドに行く〜!!」
「まあまあ、いいじゃん。今日のとこは。色々確かめたいこともあるし」
「えええ??? ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!」

「大輔くうぅぅ〜ん;;」

廊下の向こうからタケルの声が響き渡り、大輔はぼけ〜っとそれを見送ると、脱力したように溜息をついた。
「わかってはいたけど・・・変な兄弟だよな・・・あいつら」
そして“さ、デジタルワールド行こっと・・”と誰に言うでもなく呟いて、タケルたちの反対の廊下をげっそり疲れたように歩き出した。







これで、リベンジなのか?
確かめたい事って何でしょうね???ニコニコv
日記で、一線越えると不穏もアリって書いたの誰? どこに不穏の影が???
忍び寄るのは、イヤラシげなヤマトの影ってとこでしょうか。
(痴漢じゃないんだから!)
なんだか、3に期待をして下さってた方に申し訳ない内容ですみませぬ(泣)











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