2004年05月25日(火) |
女には向かないスポーツ? |
5月23日女子ボクシング大会会場で テレビレポーターが入場者にインタビューしていた。
「女子が顔面を殴りあうことについてどう思いますか?」
私の答えは単純。
それがルールで許され、勝ちにつながるのなら顔面殴るのは当たり前。 選手がボクシングという格闘技を選んだ時点で顔面パンチは当然のはず。 観客もボクシング観戦を選んだ時点で当然のことと受け止めているはず。 柔道でもレスリングでもないんだから。 ボクシングってそういう競技なんじゃない?
ボクシング会場でするには何たる愚問だとは思ったけれど レポーターがそういう質問をしたのは実はよく理解できる。 世間的には「女子が顔を殴る競技なんてとんでもない」という 反応が圧倒的大多数だろうから。 では、ルールが許しているのにどうして女子が顔を殴ることには 抵抗があるのだろうか? インタビュアーの質問もそこらへんを聞きたかったのだろう。
女子が顔を殴りあうことを否定する理由を最も端的な表しているのは 「女だてらに」という言葉だろう。 つまり「女だてらに顔なんか殴り合って、顔が醜くなったら 嫁にもらってくれる男がいなくなるよ」ということ。
ちょっと前までは顔面パンチありのボクシングどころか 柔道だのレスリングだのの格闘技も「女だてら」競技だった。 女子柔道が五輪正式種目になったのなんてついこの間、 女子レスリングなんて21世紀に入ってからだもの。
でも、女たちは「女にも荒ぶる魂がある」ということを いろんな競技で次から次へと証明してきた。 顔面パンチありのボクシングに女子が参入するのは自然の流れ。
この日の大会パンフレットに 女子ボクシング・イベント・プロデューサーという肩書きの畑山隆則氏が あいさつを寄せていた。それがとてもいいので長くなるけど引用しよう。
「・・・前略・・・この大会のテーマはズバリ『KO決着』。 第1回大会では熱戦が繰り広げられたものの、KO決着が1試合もなかったことが 唯一の反省点だった。 ボクシングの醍醐味は、やはり激しい打ち合いにあり、何よりもその結果生まれる KO決着劇を観るためにお客様は会場に足を運ぶのだと思う。 そんな期待に応えて女子ファイター達は前回以上にアグレッシブなファイトを 展開してくれることと思う。 なお、女子ボクサーならではの「華麗さ」「美しさ」というものも忘れずに、 さらなる追求をしていきたい。 女子と男子ボクシングを比較した時最もアドバンテージがある点は 「華麗さ」であり、「美しさ」であると思う。 贅肉のかけらも無い鍛え抜かれた身体から、鮮やかなフォームで打ち放たれる パンチの攻防こそ女子ボクシングならではの彩りだと思う。・・・後略・・・」
さすがに元チャンプの畑山氏、ボクシングというスポーツに客が何を求めているかをきっちり認識している。(女子プロや総格はこの辺が混迷してる) しかも「女だから」という理由でそのルールを変えようなんて思って ないところがすばらしい。
・・・と威勢のいいことを書いてきたけど 正直なところを言えば、私は実の所、女子プロレス(*)やボクシングで 顔面を殴りあう場面があると「やめて〜」と心の半分は叫んでいるのだ。
選手たちも最初はかなりの抵抗があったのではないだろうか。 だが、勝つことが目的でそれが許されたルールであるなら 顔面パンチを躊躇することは即負けにつながる。 負けるために格闘技を始めたのではないはず。 選手も心の半分では自分を叱咤激励しながら 相手の顔面にパンチを叩き込んでいるのではないだろうか。 なまなかな精神力ではできないことだろう。
その精神の強さが伝わってくるから 私も「やめて〜〜!」という悲鳴を「がんばれ!」という声援に変え、 勝利の後には感動することができるのだろう。
蛇足ながら、女子格闘技の全てが顔面打撃OKルールを採用すべきだと 主張しているわけではない。 あくまでルールの問題。 (そのルールが「女の子だから」という前提で決められている風潮も あるというか、多いんだけど。ま、その問題はまたの機会に)
*(女子総格では顔面への打撃は禁止が多い。女子プロでは一応反則だけど レフェリーが反則をとることはめったにない)
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