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2012年07月05日(木) 大津の中2自殺  虐め報道の難しさと提言

大津の中2自殺:生前に自殺練習強要(毎日新聞 7月4日)

アンケートは男子生徒の自殺後にいじめについて実施し、約320人が回答した。
15人の生徒は「自殺の練習とか、トイレで殴られていたとか、
死んだスズメを口の中に入れろと言われていた」
「何回も自殺の練習をさせられていた。先生に相談したけど何もしてくれなかった」などと回答。
「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」
「がんの友達に自分の命をあげるなどと言っていたらしい」との回答もあった。

 また、13人が「友達なのにお金を恐喝されていた」
「脅して銀行の番号を聞き出し、その銀行からとったお金を使っていた」と回答、
15人が「万引きを強要されていた」と書いた。

 男子生徒は昨年10月11日朝、自宅マンション敷地内で倒れているのが発見され、
滋賀県警大津署が自殺と断定した。
学校側は当初「いじめは把握していない」としていたが、全校生徒へのアンケートでいじめの事実が判明した。

 これまでに明らかになったのは、ヘッドロックをかける▽トレーニングと称して押さえ込む
▽毎日のようにズボンをずらす▽蜂の死骸を食べさせようとする−−などで、
担任が目撃していたが、軽い注意にとどまっていた。


「自殺練習」いじめ放置 教諭「見て見ぬふり」「一緒に笑っていた」(産経新聞 7月5日)

大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が飛び降り自殺した問題で、
男子生徒へのいじめについて学校側が直後に在校生徒に実施したアンケートで、
教諭が「見て見ぬふり」「一緒になって笑っていた」などといじめを放置していたことを示す回答が
少なくとも14人分あったことが4日、関係者への取材でわかった。
アンケートには男子生徒が自殺の練習をさせられていたとの回答があったことがすでに判明。
市教委は「自殺の練習」と同様に、事実確認できないとして公表していなかった。

「先生も知っていたけど、こわくて言えなかった…」

 教諭の放置を示す回答は記名8人、無記名6人で、直接見聞きした内容が1人、伝聞が13人。
「先生も見て見ぬふり」や「一度、先生は注意したけれどその後は一緒になって笑っていた」と記されていた。
また「先生もいじめのことを知っていたけどこわくて言えなかったらしい」などとするものもあった。

 一方、男子生徒が先生にも泣きながら電話でいじめを訴えたが、
あまり対応してくれなかったらしい、と指摘する回答もあり、
教諭が男子生徒へのいじめを認識していながら、
適切な対応をとっていない可能性があることが明らかになった。


被害届、大津署が受理拒否 大津中2自殺(京都新聞 7月5日)

大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=がマンションから飛び降り自殺した問題で、
生徒が同級生から暴行を受けていた事実があるとして、
父親(46)が昨年末にかけ3回にわたり警察に被害届を提出しようとしたが、
大津署から受理を拒否されていたことが4日、関係者への取材で分かった。

 男子生徒への暴行については、自殺後の昨年10月中旬に学校が全校生徒に実施したアンケートで、
44人が記名の上、「体育大会で集団リンチに遭っていた」
「万引をさせられ、殴る蹴るの暴行を受けていた」などと具体的な証言を行っている。

 男子生徒の父親は、複数の同級生から独自に聞き取った暴行の証言と学校の調査結果を基に、
生徒が自殺した後の昨年10月に2回、同12月に1回、
大津署に出向き、暴行容疑の被害届を提出したいと申し出たという。
しかし、関係者によると、対応した署員は
「犯罪としての事実認定ができない」として受理を断ったという。

 父親は大津署の対応について「真相究明のために、死んだ息子に代わって被害届を出したかった。
どうして受理してくれないのか」と憤る。同署は「一切、答えられない」としている。


次々に陰惨な虐めの内容や教師などの怠慢が明るみになっていますが、

加害者の親に教育委員会関係者、警察関係者、

市議関係者のどれかが居るんじゃないかと勘繰りたくなるほど、

地域ぐるみで虐めを隠蔽していたかのようで、

地域ぐるみで殺されたと言っても言いすぎじゃないですし、

教師や学校や教育委員会側は自分達の保身が大事と思われても仕方がなく、

この対応は虐めに加担するのと同じようなものではないでしょうか。

セクショナリズムを発揮して自己保身に走る人間ほど醜いものはありませんし、

虐めの実態を報道で広められる遺族の心情はたまったものではなく、

精神的に追い詰める虐めはまだ続いているような状態です。

また、虐めた実態を明るみにすることや、

虐めた生徒や学校や教師や教育委員や警察は糾弾や社会的制裁を甘んじて受けるべきですが、

ただ、報道が加熱すると、

今、虐めを受けている子供の自殺連鎖が起こることを懸念します。

WHOは2000年に「自殺を防ぐために マスコミへの手引き

(PREVENTING SUICIDE A RESOURCE FOR MEDIA PROFESSIONALS)」と題された

群発自殺を防ぐための報道のガイドラインをまとめています。

ガイドラインでは、実際に起きた自殺についての新聞・テレビの報道が、

自殺の増加と十分に結びつくことを示唆する十分な証拠があるとしています。

WHOは自殺報道について次の原則を挙げています。

●写真や遺書を公表しない
●自殺の方法について詳細に報道しない
●原因を単純化して報じない
●自殺を美化したりセンセーショナルに報じない
●宗教的・文化的な固定観念を用いない
●自殺を責めない


この原則からすると今回もセンセーショナルに報道していると言えるでしょう。

虐めによる自殺について、どこまで伝えるかは報道の難しさではありますが、

報道はもっと慎重であってほしいと思います。

もしくは、このような虐め自殺を報道として扱う場合は、

「現在、虐めを受けている人が報道を見ているなら、思い込まず、
 親や学校関係者以外の第三者に相談して助けを求めてください。」

「虐めを受けている生徒は学校へ行かなくていいし、
 親も子供から相談を受けたら世間体を気にせず休ませてあげましょう。」

「子供にとって学校は世界に通じている場所ではありますが、
 今の時代、無理をして学校へ行くことが全てではありません。」

「身を守ることへの逃げは恥ずかしいことでも負けでもありません。」

このような感じのメッセージを必ず付け加えるというのも、

虐めによる精神的肉体的苦痛からの解放と、

自殺連鎖を防ぐ取り組みとして重要なのではないでしょうか。











名塚元哉 |←ホームページ