フリーランスのジャーナリストとして活躍し、最近はコメンテーターとしても、テレビでよく顔を拝見するようになった上杉 隆 氏の書いた『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)を読みました。この新書を読んでいて、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が、女性向けファッション雑誌『Domani』の2007年10月号のコラムで、「メディアから日々配信されるニュースを神経質に追うのは無駄です。」「お役所的なニュースには、本当に読者の視点にたった情報などあるわけがない。」 と述べていたのを思い出しました。メディア最大の談合組織「記者クラブ」の存在とその弊害はこれまでにも多く語られてきましたが、代表的なものでは、記者と政治家や官僚の癒着です。政治家や官僚から多くの情報を得るために、必然的になあなあの仲にならざるを得ませんし、また、今後も情報を得続けるためには、できる限りは政治家や官僚から反感を買わないように行動しなければいけません。そうなると、国民が本当に知りたい情報をメディアは全社揃って隠蔽するようになります。だから、ネットに繋げられるようになった今となっては、日本で起きた報道や外国での紛争に関して、日本と海外では内容が違っていたり、海外メディアを通して事実を知るということも多くなってきました。これはすなわち、日本の新聞やテレビは、報道の体をなしていないということの裏返しであり、非常に恥ずべきことだではないでしょうか。また、毎日行われる総理大臣へのぶら下がり会見や各省庁の大臣への記者会見も、事前に質問を質問対象者へ提示します。そこで、総理大臣や各大臣は、この質問はOK、この質問はNOと記者宛てに申し合わせ、それが会見として私たちの目に触れることになるのです。わたしたちが日々目にしている会見の多くは、言ってみれば“茶番”です。だからこそ、記者は国民の多くが知りたいであろうことを掘り下げるようにどんどん質問をせず、どうでもイイ質問を各社が続けたりするわけです。閉鎖的な日本の記者クラブ制度に対して、海外の多くのメディアが反発しているのは知っていましたが、EUが、閉鎖的な組織として「非難決議」を毎年のように採択しているなんてことは知りませんでした。まあ、各メディアの記者にとっては既得権益を手放したくないので、都合の悪いことは伏せておくのは当然なのかもしれませんが。この記者クラブ制度があるかぎり政治家や官僚にとっては、もっとも不都合な真実は新聞やテレビから発信されませんし、各メディアの記者も本当の競争に晒されず守られ続けるのでしょう。ほかにも、匿名で批判するのは日本の新聞だけ。政治家の推薦やコネによって新聞社に入社できた有能でない記者たち。担当政治家が出世すると自分も出世するシステム。社会部の政治スクープを政治部が徹底的に握りつぶす。誤報を認めない朝日新聞。ナベツネ会長の暴走を止められない読売新聞などなど、呆れるような日本の記者やメディアの話が多く書かれていますが、細かく書いていると長くなるので、興味のある方は本書を読んでみてください。ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書 う 2-1)上杉 隆おすすめ平均 マスコミ崩壊の元凶、記者クラブメディア業界の官民癒着を暴く日本のなんちゃってジャーナリズム豊富なエピソードが面白い新聞を読む前の必読書Amazonで詳しく見る by G-Tools「アイス食うかー?」