落ちたら死ぬ、ってほどじゃない、 高さ3メートル幅30センチないぐらいの塀の上にたたされて、 後ろからじわじわって壁が迫ってきて、 とりあえず一生懸命前に逃げるんだけど、 塀には終わりがあってその手前で止まらざるを得なくて、 それでもゆっくり壁は迫ってきて、 私の背中にとんっと当たったところで壁の動きは止まって、
うわ、やばい、どうしよう、落ちる、
と思ってバランスを崩し、 でもなんとかかろうじてまだ塀の上、 …その瞬間に受身を取るべきなのか、 塀に手をかけようと頑張るべきなのか、 壁にしがみついてみようか、 やれる限りのことを考え、 ひょっとしたら羽が生えないだろうかとか、 私、3メートルぐらいジャンプして下りても大丈夫じゃない?とか、 案外高く見えるけどそうじゃなかったりして、 なんて楽観的なことも考えたり、 でも落ちたら確実に骨は折れるだろうなとか、 きっと痛いだろうなとか、 折れるのは肩からだろうかとか、 この場合入院保険は使えるんだったっけとか、 どうせ折れるのならあまり使わないところをとか、 最悪のケースも考えて、 それでもバランスを保とうと一生懸命になる瞬間の気持ち悪さ、
それを精一杯味わったところで、 後ろの壁がまた動き出し、 あぁもう知るか!!! と目をつぶり、ジャンプで飛び出した。
私はちゃんと着地していた。 足はちょっとしびれたけど、 外傷も何もないキレイなもので、 安心したけど怖くなった。
塀の上に立たされた理由も、 壁が迫ってきた理由も、全部知っているからだ。
終わっても気持ち悪い感じが残る。 知らなかった。これが 。
|