金色の夢を、ずっと見てる

2010年07月16日(金) 『告白』見てきました。(ネタばれありかも)

久々に平日にのんびりしたくなって、有給を取る事にしました。ちょうど7〜9月の間に夏季休暇を取らなきゃいけないので、それを1日使おうかな〜と。

ユウを保育園に預けたらちょっと久しぶりに整体に行って、スッキリしたところで映画館へ。公開時から気になってた『告白』を見に行きました。


以下、若干ネタばれするかもしれないので、読みたくない人はここで引き返してくださいね(^^;









言わずと知れた、去年の本屋大賞が映画化された話題作です。原作も読んでて、あれをどう映像化するのかものすごく興味があったんですよね。結果から言うと


「松たか子ってすげぇ」


です。感情的になる場面はほとんどなく、押さえたトーンで淡々と話す事が多い役なのですが、その静かな表情の下で激しくうねる感情が背景に見えるような気がしました。




割と原作に忠実に、語り手を変えながら章立てして進んで行きます。原作と大きく違ったのは、『少年Bの姉から見た章』がなかったぐらいかな?大まかに、主人公である教師(松たか子)とクラス委員の少女の視点が中心になるのかな。ウェルテルが原作通りウザくて暑苦しかったです(笑)イメージカットみたいな、現実なのか登場人物の空想なのかよくわからないシーンが所々に描かれていて、それが語り手の心情をよりリアルに伝えてくれます。こういう時、映像の力ってすごいですね。




あと、生徒達があんまり有名な子役じゃなかったって点も良かったんじゃないかな。見た後に公式サイトも見たんですが、犯人役だった2人の少年も、その片方と絡んで語り手ともなるクラス委員の少女も、全然知らない子だったんです(公式サイトを見てこの女子生徒役の子が熊本出身だと知って驚いたぐらいで)。30人とかいる1クラスの中に2〜3人だけテレビでよく見る子役が紛れてると
「あぁ、この子が重要な役回りなんだな」
ってすぐわかっちゃうじゃないですか。そういう意味で、主演の松たか子に次いで重要な役であるはずの3人がそれほど有名じゃない子ばかりだったってのは、すごく効果的な演出だったなと。


でも、その割に(と言ったら失礼だけど)このメインとなる生徒達を演じた3人の子役が、3人ともすごく上手だったんですよ。少年Aの狡猾さと、その奥に潜む、自分を捨てて行った母親への子供ならではの狂おしいほどの思慕と渇望。少年Bの、自分に対する自信のなさからくる卑屈さと、それ故に湧き起こった被害者少女への残虐性と少年Aへの歪んだ憎しみと優越感。クラス委員の少女の、思春期にありがちな妄想癖と嗜虐性。

特に、精神的に追い詰められて、少しずつおかしくなっていく少年Bの狂気の演技が印象的でした。あとその少年の母親役だった木村佳乃もさすが。息子と2人きりの家で(夫は多忙で家庭を顧みず、娘は進学で家を出ている)息子だけを偏愛し、その息子が幼女を殺したと聞かされても
「この子は優しい子なんです。タチの悪い子に引きずられて利用されただけなんです。なんてかわいそうな子」
と、息子が殺した少女の母親の前で本気で言ってしまう母親。事実を知り、息子と心中しようとして逆に殺されてしまう母親。

なんだろう、木村佳乃ってこういう『思い込みが激しくて偏執的な女』の役がすごくうまい気がする(^^;




最終的に森口(松たか子)は、少年Aのもっとも弱い所を効果的に突いて復讐を果たした……かのように見せかけて
「ここが、あなたの本当の更生の始まりです」
と告げる。それは一見すると『子供を殺された親でありながら、最終的には悪人になりきれずに生徒の更生にかける健気な教育者』のようにも見えるんだけど、最後に付け加えられた
「……なーんてね」
という一言が観客を混乱させる。本当は、そういう『教育者』のフリをして、やっぱり少年Aを完膚なきまでに叩きのめしたかっただけなんじゃないか?子供のために復讐する。だけど自分は手を汚さず、相手が子供である事も一切意に介さず徹底的に追い詰めて弱点を突いて生涯消えないような傷を負わせて、それでも表面的に『結局は悪人になりきれない自分』を装うために
「更生の始まり」
という言葉を口にして見せただけなんじゃないか?





「……なーんてね」
というセリフは、映画版で付け加えられたセリフなんですね。原作にはない。でも私はこのセリフがあった事で、森口の『罪のない我が子をつまらない理由で殺された母親の狂気と、教育者としての葛藤』がより際立ったと思います。見終わった後に思わずニヤリと笑ってしまうというか、それが正しいのか間違ってるのかはともかく『復讐を果たした母親』に対して思わず喝采を叫びたくなるような、不思議な高揚感がありました。いや〜松たか子ってすごい。



帰ってから、原作をもう一度読み返しました。読み終わった後に
「なーんてね」
と心の中で呟いてみました。


 < 過去  INDEX  未来 >


咲良 [MAIL]

My追加