帰り道。
鳩が一羽、歩いて道を横切っていた。 私の車が近づいても、逃げようとせず一定速度で歩いてる。
このままじゃ轢いちゃうよ、と思いながらスピードを落とし でも鳩なんだから、危険だと思ったら飛んで逃げるでしょ、と思ったし 対向車が来てるから右の車線には避けられないし なにより面倒だし タイヤとタイヤの間で鳩をまたぐように通るつもりで通過した。
ルームミラーとサイドミラーで後ろを確認したら パァッと羽毛が散るのが見えて 動かない塊が道路上にぽつんと見えた。 鳩とぶつかったような感触は全くなかった。
轢いちゃった。 殺しちゃった。
へこんだ。
さっきの瞬間まで普通に生きてた鳩が、私のせいで死んじゃった。 確認してないから、実際死んじゃったかどうかはわからないけど でも怪我をしたには違いないから きっとこの先生きてはいられない。悪いことしたな。
と、考えながら帰ってきたんだけど。
たぶん私は、 もちろん鳩に対して可哀想なことをしたという気持ちもあるけど 「鳩を轢いてしまったこと」にへこんでるんだ。 つまり、もしその鳩が、私ではない誰かの車に轢かれたとしたら 私は鳩に対してほとんど感情を抱かないはず。 「私が鳩を殺した」ことが厭なんだ。
道を渡ってたのが犬や猫だったら たぶん私はそれが渡りきるのを、車を停めて待ったと思う。 犬や猫のほうが、轢いたときの自分の心のダメージが大きいから。 結局鳩の命は、自分にとってさほど重要じゃないんだ。
こんな奴です。結局私は。 自分がいちばんかわいいのです。
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