まつや清の日記

2007年01月02日(火) 映画『硫黄島からの手紙』を観る

 映画公開が始まって既に180万人が観たといいますから、確かにスゴイ映画でした。2部作前編『父親たちの星条旗』は観ていませんが、戦争の本当の姿を描こうとしたクリント・イーストウッド監督の視点のすばらしさなんだと思います。

 帝国日本軍隊に栗林忠道中将のような合理主義的思考を持つ指導者がいたという驚きにつきる映画でした。敗北が運命付けられていた硫黄島決戦、一人でも闘い抜いて本土攻撃を遅らせる戦略目標達成の為の地下塹壕持久戦を貫徹した兵士たち。

 未だ戦死した2万1千人のうち1万3千人の慰霊が確認されていない「終わっていない戦争」の姿が、残虐で過酷な極限状態を通して、一人一人の兵士たちの人間ドラマとして展開されます。映画のタッチは『ミスティック・リバー」に似ています。

 始まりのシーンが「終わっていない戦争」を象徴するように塹壕の中に埋められていた手紙が掘り出される所からはじまり、最後のシーンが、敵に見つからぬように埋められた栗林中将の死体が掘り起こされるシーンと重なり、胸を衝かれます。

 「家族のために闘い、家族のために死ねない」迷いある人間・栗林中将と「2度あることは3度ある」とその栗林によって生きのびるパン職人・西郷のような一兵士の祖国に残した家族への想いが織りこまれる糸のように展開します。

 この映画の持久戦法にベトナム戦争、そしてイラク戦争の指導者の姿が重なり、「米」「日」双方に正義の戦争は存在しなかった、しかし歴史はこうした戦争によって、多大な犠牲者の血で作られているという重い現実に直面します。

 私たちの父や母の生きてきた歴史そのものがこの映画であり、今、世界でこの映画と全く同じ事が起きています。生き延びている私たちが、世界の人々と、父母の世代と対等に格闘する人間としてどのように向き合えるのか、そして若い世代と。

 多くの方にこの映画を観ていただきたいと思います。ひょとして、この映画が日本の政治を変えていく一つのきっかけになるかも、などどと淡い夢を見てしまいました。初夢は現実にしたいものです。


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K.matsuya

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