で、今日は買い物に行くんですかね?
「うーん。米は昨日アンタが買ってきたし」 「どうしても行かなきゃいけないわけじゃないけど、あ、鶏肉」
…。 あの、鶏肉?
「ああ、鶏肉買いに行ったほうがいいかもしれない」
なんですか、その曖昧な答えは。 まあ、鶏肉くらいなら自転車でちゃちゃっと行けるでしょう。 あなた、ここのところ、まともに外に出てないんだから、運動がてら行ってらっしゃいよ。
「うん…。風が」
…。 ものぐさが過ぎて、得意の舌も滑らかに回らなくなってきてるな。いや、頭かも?
風が強いから自転車で行くのはしんどいんですね。
「でも、車じゃ運動に」
なりませんよ。 しかも、アナタが運転するわけじゃないんだから。 あ、歩いたらどうです。たいした距離じゃないですけど、自転車よりは運動になりますよ。
「あっ、そういえばワ◯ールさんがくれた万歩計があった!」
急に元気になって、うれしそうにパッケージをびりびりと開けている。 ほんとに新しいものが好きだな。 飽きるのも早いけどな。 まあ、ともあれ、ワ◯ールさん、ありがとう。 妻が買い物に行く気になりました。 あ、そのパッケージ、ちゃんと捨ててくださいよ。
「ああ、うん。でも、肩…」
はい?
「肩が痛くて荷物が持てない」 「仕方ない供の者を募集しよう」
募集ってアナタ、子どもは宿題に追われて部屋にこもりっきり。
「あと何分?」
は?
「何分で支度できる?」
はいはい。 私ですね。 そうですよね。
まあ、私も運動するのはやぶさかでないですからね。 いいでしょう。 お供しましょう。
妻が買い物をしたのは、荷物もレジでつめてくれるちょっと高級なスーパー。 持参したエコバッグに荷物を入れてもらった妻を待ち受けて、中身を僕のバッグに移す。 えーと汚れなさそうなものは…。
「何してんの」 「そんなまどろっこしいことしなくていいよ」
エコバッグの口をくるっと丸めると、まるごと僕のバッグにぐぐっと押しこむ。 あっ。こら、そんなには入りませんよ。
ずぼっ。
「入ったね」
お、重い。
「あ、玉ねぎもらう?」
なんで玉ねぎピンポイント? もういいですよ、めんどくさい。
「ユ◯クロか本屋に寄る?」
いや、もう重いし…。 あ、でも、ユ◯クロに自転車にいいズボンがあるかな。
ちょろっとユ◯クロを流すと。
「私は本屋ね」
ってなぜ僕がユ◯クロにいる間に寄ってしまわないのだ。
結局2軒とも妻を見張りつつ流し。 やっと帰宅できました。
思い通りに散歩できてご機嫌な妻は、 夜、録画していたバラエティで、ある芸人さんの奥さんが、 「夫に点数をつけるなら、100点以上です」 などとコメントを寄せていたのを見て、
「うちの夫は200点以上です」
などと調子のいいことを言っている。
しかし、褒められるのは悪い気分ではないな。
でも、まあ、そんな。 僕なんて50点くらいですよ。
「え?じゃあ、あと150点は何してくれるの?」
ってお前、謙遜という言葉を知らんのか。馬鹿者。 あっ!しかも、さっき開けた万歩計のパッケージがそこに転がったままじゃないかっ。
「ああ、150点分?」
燃えるゴミと燃えないゴミに分別して、捨てておきました…。
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