妻からメール。
「パソコン壊れた」
ぷ。それはお気の毒に。 インターネット中毒の妻のことだ。 きっと禁断症状で苦しんでいることだろう。
はっ。 いや,もしかしたら喜び勇んで僕のパソコンを開き,りんごのマークのところでぽちっとやっているかもしれないぞ。 これはいかん。 早速悪事を阻止するべく電話を入れる。
るるー,るるるー,るるるるー。
で,出ない。 もう手遅れだったか。
「もしもしぃ」
出た。
ああ,僕ですけどね,パソコンが壊れたそうで。
「そうなんだよー。立ち上げてフロッピー入れて,ワードの書類をクリックして,ちょっとパソコンの向きを変えたらさ」
「プチ!ひゅるるるるる〜って言ってさ」
「私はね,向きを変えただけで特に何もしてないんだよ」
「電源周りだと思うのよ。だから修理に出せばそんなにお金かからずに直ると思うんだけど」
「データも大丈夫だと思うんだけどねー」
「メールはね,WEBで確認できるから大丈夫だと思うんだけどね」
「ただ,フロッピー読めないから,学校の委員の仕事ができないのよ」
なんだか必死に説明してますね。 そんな矢継ぎ早に言われても。
あれ? そういえば,学校のそれはフロッピーに入ってるから,僕のパソコンでやるって言ってましたよね。 だから,僕のを使ってやればいいじゃないですか。 だいいち,あなたのパソコンではフロッピーは読めない…。
ん? あれ?? フロッピー入れて?
はっ。まさか!
「だからー,フロッピー入れてクリックしたら壊れたんだよ」 「あんたのパソコンが」
ええええええええ????
「じゃなきゃ,わざわざメールするわけがないじゃないの」
「特に大事なデータとか,入ってました?」
…。 はぁ。同窓会の名簿とか。
「やっぱり! その程度ねっ。よかったー」
「まあ,修理その他はお帰りになってからご相談ということで」
「あー,それにしても困ったな。フロッピー。読めないと仕事がたいへんなんだけど」
「なんだってこんなときに壊れるのかしらね。ったく」
「んじゃねー」
うわああああああああああああああ。
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